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恵比須様の共感力

子育てで正しいとされることって、その時代その時代でトレンドのようなものがあるんだろうという気がしているのだけど、いまの子育て世代にとってはこれ、「共感による自己肯定感の醸成」。イヤイヤ期の子供にはとにかく共感一択。まずは否定せず、子供のフラストレーションを受け止めてあげてください。それが自己肯定感の醸成につながり、ひいては幸福度の高い人生につながります。というのが大正解。それはよくわかりました。が。

「1分前は食べたかったけど目の前にご飯出てきたら気分変わってスプーンなげちゃったんだよね~」
「さっきあげたアップルソース残してるけど横に新しい全く同じアップルソース見つけてどうしてもそっち食べたくなっちゃったんだよね~」
「ぼけーっとしてる弟見てたらむしゃくしゃしてぶっ叩いてみたんだよね~」
「転がってる弟がちょうどいい踏み台に見えてつい乗ってみたんだよね~」
「公園の滑り台は上から滑るものじゃなくて下から上るものだから上で待ってるおまえらはさっさ私の道を開けなさい。って思ってるんだよね~そうだよね~」

・・・ってこと?

娘の奇行は理屈っぽい世界に生きる私には極めて理解が難しい。理屈の通らない行動というのは、理屈を無視する自己中心的な性質によるものか、理屈を通すだけの能力に欠けているか、我々の理屈とは別世界で生きる生き物か、のどれかに分類されいくような気がしてて、娘が2歳にもなっていないことは当然の前提として、私はよく娘にこう思う。
「"我"つよ・・・」
「アホなのー?」
「え、サイコパスなの・・?」

ニコニコとお座りしている弟の頭をつついてボーリングのピンみたいに転がしてゲラゲラ笑っていたかと思えば次の瞬間弟に抱き着いて熱烈なキスとかしてる。それDVの典型的なパターンじゃない?!だいじょうぶ?

ママに注意されてもしれ~っと聞こえないふり。目が合うとえへっと笑って切り抜ける。弟が泣くと急いで自分も泣きまね。我が家の中心の座は絶対に譲らないという強い気概を感じる娘の成長は、面白さと可愛さに悶絶する数だけ、頭を抱えることも多い。(笑)

そんな娘と我が夫・恵比須様は人間の根っこを同じくする生き物だと私は思っている。なぜなら夫は意図せず、意識すらせず、娘の行動に日々共感し続けているからだ。

先日娘がオムツ変えてくれーとリビングにいる私のそばにやってきて寝っ転がった。替えのオムツがなかったので私は子供部屋にとりに行き、こっちで変えてあげるからおいで―と娘を呼んだ。しばらくすると、リビングで寝っ転がった体勢のまま、仰向けのまま、娘はずりずりと床を滑って子供部屋までやってきた。想像の斜め上をいく行動に思わず吹き出す私に、夫は通りすがりに一言、「起き上がるのめんどくさかったんだよな。わかる」

娘は「ありがとう」とまだうまく言えなくて「あちょう」と言う。先日夫と娘が遊んでいるとき、娘が夫のもとに走ってきては「あちょう」と言ってまた去っていく、を繰り返していた。「何かあげてるのー?」と聞く私に夫は「ううん、ただ適当な掛け声が見つからないからあちょーって言ってるだけ」

出がけにパンケーキを見つけてしまい欲しがりブチ切れる娘。お出かけしてピザ食べようよーとか諭して火に油を注ぐ私に、夫は娘をつれて別の部屋に行くからその間にパンケーキを別の場所に移動させろと言う。言われたとおりにした後、返ってきた娘はパンケーキが戸棚にないとわかり即鎮静化。アホなの・・・?!夫はニコニコして「目に入らないものは忘れるんだよ~」

毎朝出がけには、靴を履いたり脱いだりしたい娘を相手に、shoes! no more shoes? shoes! no more shoes??? を永遠に繰り返している。結構仕事忙しい人なんだけどな。よくその心の余裕があるもんだと感心する。

この人はレベルが高いのか低いのか。いずれにしても娘のハンドリングにかけては右にでる者なしだ。というわけで私は娘の癇癪が収まらないときは夫に丸投げする。すると何か秘策があるわけでもないのに比較的早期にすぐ収まるのだ。摩訶不思議。一方息子はママ一択。基本手のかからない、とにかく空気読めて良い子なんだけど、父親と姉の豪快さ、身勝手さにいつもドン引きしている様子が見て取れる。そして珍しくそんな彼が必死の抵抗で声を振り絞って泣くと、夫はキョトンとして言うのである。
「おまえ何で泣いてんの?」

えーーーーーうそやん
何その娘との差!人間とは生まれながらにして不公平と共存しなければならない。それを実感させられる光景だ。
母はそんな彼を守ってあげなければならないのである。

最近息子とのツーショットを携帯の待受画面にした私に、画面を指差してアタシがいなーいとでも言いたげに恨めしそうに見る娘。そしてその横に同じ顔して見つめる夫。
ママはあなたたちのことも死ぬほど愛してるよ!ただ、ママは知っている。君たちは5分後には待受のことなんて一切忘れてゲラゲラ笑っているのだ。




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