パトリック・バウアーという男
サハラマラソンについて語るとき、このパトリック・バウアーというフランス人を抜きにして語ることはできない。
残念ながら、Wikipedia(日本語版)では彼の名前は出てこない。
パトリック・バウアー、現在60歳。かつてシャンパーニュ地方の首都として栄えたトロワで生まれ育ち、現在はバルセロナで暮らしている。
今から遡ること34年前、1984年にこのパトリック・バウアーという男がサハラ砂漠を一人で12日間、350kmを踏破した。衣食住の全てを詰め込んだバックパック35kgを背負い、手にはストックと3リットルの水を持ち、毎日自分で決めた距離をひたすら歩いた。
この様子を同行した弟が8mmビデオカメラで撮影し、フランス帰国後に編集し、町役場(だったと思うが)に集まった約200人の前で上映会を行なったそうだ。サハラ砂漠を歩くなんて狂っているという人もいれば、これは面白いんじゃないか?と反応は様々だった。このサハラ砂漠での体験をどうにかしてみんなと共有できないか?と若きパトリックは考えた。
パトリックがサハラ砂漠を12日間、350km踏破したその2年後、、、。
1986年に第1回サハラマラソンが開催された。その時、スタートラインに立ったのは23名だった。そのスタートラインに立った選手達が走り出すのを見送った1人のモロッコ人の少年がいた。いつか彼らのようになりたいと夢見た少年は後に、、、(いつか彼については語りましょう。)
たった23人のランナーで始まったサハラマラソンは、今年の4月で33回を数える。そして、出場するランナーの数も1,000人を超えた。
衣食住の関わる全てを背負い、1週間で約250kmを走る。今では世界中のあちこちで開催されているこのステージレースの原型はこのパトリック・バウアーによって生まれたのである。
ホスピタリティ精神と情熱に溢れ、心の底からモロッコ、そしてサハラ砂漠を愛する男。彼が創り出すサハラマラソンの世界に熱狂的にハマるランナーが世界中に存在し、私もその一人である。
パトリック・バウアーがいないサハラマラソン(Marathon Des Sables)は、サハラマラソンではないと言い切る人達も沢山いる。
サハラマラソンという世界一過酷と言われるレースは、このパトリック・バウアーという男が、ある日の晩、サハラ砂漠を歩く夢を見たことから始まったのだ。
参考URL : 34年前サハラ砂漠踏破時の映像 https://www.facebook.com/olivier.sepulchre/videos/10205170981366486/
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