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中国の社会情勢

 今回は、現代の中国社会を紐解いていきたい。共産党のトップ習近平の目指すところはどこか。将来の日中関係、中ロ関係を考察したい。
 習近平の動向は世界各国が兼ねてから注目してきたが、現在では特に台湾や香港への高圧的な姿勢や、原発処理水の排出に対して異様なまでの反発心を見せるなど、とどまることを知らない。今こそもう一度目を向けるべき時ではないか。
 習近平は何を目指しているのか。それは、中国を再び大国へのし上げることだ。清朝時代、中国は広大な土地を有しており、当時世界一のGDPを誇っていた。しかし、イギリスとのアヘン戦争を境に半植民地化の道をたどる。また末期には太平天国の乱の大乱があり、国力を衰退させ、19世紀後半からは資本主義列強の侵略を受け、たびたびの改革にも失敗した。だからこそ習近平は欧米列強、特にアメリカを敵視し、踏みにじられた権威を取り返すべく、時に大胆とも言える行動を見せるのだ。
 中国世界の再建にあたり、切り離せないのが台湾と香港である。どちらも中国大陸と深い関わりがあり、中国語話者も多い。しかし、日本に統治されるあるいはイギリスに統治されるという過去を持つ両地は独自の社会と文化を形成してきた。それゆえ共産党の意向に背く者も多く、習近平にとってそれは勢力拡大の上で脅威となり得る。だからこそ、香港には香港国家安全維持法を施行したり、台湾に対して圧力をかけたりしているのだ。特に注目すべきは台湾であろう。
 香港に関して言えば、イギリスから中国へ返還された過去を持つ。ゆえに、やり方はさておき、香港が中国政府の意向に従わないのであれば、罰すると主張することは筋が通っている。しかし、台湾はそうではない。台湾が日本によって統治される際、当時の清王朝はそれに対して異を唱えなかった。それが時を経るにつれ、徐々に台湾は自分の持ち分だと主張するようになった。そもそも、台湾の起源はフィリピンなどの太平洋諸国に由来し、中国文化が根付いているのは、オランダが統治の際に、対岸から多くの漢民族を移住させたからである。そもそも中国領ではなかった。にもかかわらず、国共合作が終わるや否や、国民党政府が台湾へ押しかけ、非道の限りを尽くした。それに続いて、台湾有事と続く訳だが、これがいかに不合理なものかは言うまでもない。
 ロシアによるウクライナ侵攻が習近平に多大な影響を与えたことは間違いない。プーチンと習近平は、良好な関係にあると言えるだろう。社会主義国家であること、欧米諸国をライバル視していること、そして当時の権威を復活させることを目的としている点で、両者はかなり似ている。土地の大部分が接し合っているのも大きなポイントだ。習近平にとって、ロシアは敵を同じくするいわば同志であり、地理的にも近いことから、ロシアとの関係は維持したい。そこに来てのウクライナ侵攻。関係を維持するには、ロシアを支援するべきだろうが、そうなれば自国も欧米からの制裁を受ける。かと言って、ロシアを見放してしまえば、欧米に対抗する後ろ盾を失い、国際的孤立を深めてしまう。また、今回の侵攻で、ロシアが多大な制裁を各国から与えられたことは、当然習近平の目にも入っている。ここでロシアに続き、台湾に侵攻することで各国から数々の制裁が与えられることは明らかなことだ。習近平はジレンマに苛まれていること間違いない。
 習近平は日本をどう思っているのか。おそらく、好印象は抱いていないだろう。それは今回の処理水排出に対して異様なまでに反感を見せたことでも見て取れる。しかし、中国の立場上、日本との関係をこれ以上に悪化させるべきではないと考えるのが妥当であるはずだ。習近平が一番にライバル視するのはアメリカであり、それに対抗するには、日本を出来る限り自身の方へ引き付ける必要がある。にもかかわらず、日本の海産物の輸入全面禁止は、これに矛盾する姿勢である。
 習近平は、アメリカ、日本、ロシアとこれからどう向き合っていくのが正解なのか、今頃頭を悩ませていることだろう。

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