マガジンのカバー画像

作家ごっこ

24
超短編
運営しているクリエイター

2022年12月の記事一覧

12月24日

12月24日

サンタクロースは赤い服なんて着ていない。

八歳の夜、サンタの姿を見てみたくて、寝たふりをして待っていた。扉が開いたからそっと目を開けてみると、お父さんだった。目が合うと少しびっくりして、「早く寝ないとサンタさん来ないよ?」と言って部屋を出ていった。
いつもは頭を撫でてくれるのに、あの日は撫でてくれなかった。

二十四歳の夜、大好きな彼女をデートに誘った。
いつもは行かないオシャレなレストラン。

もっとみる
「緑茶好きの父」

「緑茶好きの父」

―十二月某日。一人の男が殺害された。
被害者は、ある大企業の会長。
容疑者は、会長の息子である三兄弟。

容疑者一人目、長男。
長男ということもあり、会長からは特別可愛がられていたようだ。もうじき社長に就任するという噂も流れている。彼はいつも赤い靴下を履いていた。

容疑者二人目、次男。
次男は、いつも緑のシャツを着ている。自ら会社を立ち上げ社長を務めている、行動力溢れるパワフルな男だ。自分の会社

もっとみる
What is love?

What is love?

「なんだありゃ……愛についての授業?」

キーンコーンカーンコーン…ガラガラガラ

「はい、皆さん。席について!授業を始めます」
徐々に静かになる教室。

黒板にでかでかと書かれた文字は「愛」

「皆さんにとって愛とはなんですか?」
生徒から次々に声が上がる。
「大切に思うこと!」
「伝えるべきもの!」
「うちに秘めるもの」
「何があっても許すこと!」

一通り言い終わると、生徒たちは答えを求める

もっとみる
気取った男の説明書

気取った男の説明書

男には、決して譲れない自分だけの美学がある。
次元大介然り、立川談志然り、美学を貫く男ほど格好良い男はいない。

幼い頃から、取り憑かれたように戦隊ヒーローやバトル漫画にハマり、仮面ライダーの変身ポーズを真似するのは、それがほとんどの男にとって「格好良い」の原体験だからだ。

そんな男に、「カッコつけすぎ」なんて台詞は野暮だ。男は須らく皆美学を追い、無意識に気取ってしまうものなのだ。

「もう別れ

もっとみる