クリーミー蒸し焼き牡蠣 居酒屋で一杯600円のシャルドネ
山陰の居酒屋でモサエビの刺身、刺身の盛り合わせ、ハタハタと鯛のカルパッチョと箸を進め、続いて蒸し焼き牡蠣に。
蒸し牡蠣でも焼き牡蠣でもなく、蒸し焼きというのがポイントだ。焼きほどには水分が飛ばずしっとりとした質感で、それでいて加熱されて身が引き締まりハリがある。
噛むと歯に柔らかい抵抗を感じる。水分が程よく飛んで旨味が凝縮されている。牡蠣特有の磯臭さや苦みもかなり穏やかだ。牡蠣のそれが好きな人には物足りないかもしれないが、牡蠣が苦手な人には特におススメしたい食べ方だ。私は牡蠣は好きだが生牡蠣を延々と食べ続けたいと思うほどの愛好家ではない。しかし、この蒸し焼きの牡蠣は何個でもいけそうだ。
レモンを絞ってみる。牡蠣のクリーミーな風味に、その対極の柑橘の酸味が合わさり、口内が素晴らしいハーモニーで満たされる。
ワインは一杯600円のグラスワインを続ける。ちなみにこのワインは、IGP ヴァン・ド・ペイ・ド・ラトランティックというカテゴリーに属する。IGP ヴァン・ド・ペイは地酒のカテゴリーだ。ラトランティックはボルドー、コニャックを含むエリアを指す。気軽なワインで小売価格では一本1,000円前後だ。ちなみにIGPの一つ上のカテゴリーにはAOCという原産地呼称保護されているものがあり(ボルドーなど)、一つ下にはVin de Table、すなわちテーブルワインのカテゴリーがある。
ジネステ セレクション シャルドネ, 605円 (グラスワイン)
Ginestet, Chardonnay, France, IGP
おおらかで陽気さを感じるリンゴなどの果実香、ほのかにフラワリーなタッチも、ボリュームは中程度。
風味にもゆったりとした陽気な果実味を感じる、カジュアルながら醸造は的確で隙はなく、ピュアな果実味をストレートに伝えている。
蒸し焼き牡蠣とそこに絞ったレモンで口内が素晴らしいハーモニーで満たされた余韻に、追いかけるように白ワインをひと口。
蒸し焼きにされて凝縮されたクリーミーな牡蠣の旨味に、レモンの強い酸、さらにワインの明るい果実味が合わさり、口内のハーモニーはオーケストラへと発展した。
ボルドーは海沿いの都市で、現地では牡蠣が好んで食べられる。そんなボルドーで造られた白ワインが牡蠣に合わないことはきっとなかろうと想像しながら食べたが、想像を遥かに上回る相性の良さだ。ボルドーの白ワインといえばソーヴィニョン・ブラン、セミヨン品種でよく知られるが、珍しいボルドー産シャルドネもまた可能性を感じさせてくれた。ちなみに格付け5級のシャトー・デュ・テルトルはシャルドネ主体の白ワインを造っているとのことだ。気候変動の影響もあり、2021年1月にボルドーではアルバリーニョなど新たに6品種の栽培が許可された。地酒カテゴリー (IGP) では認められるシャルドネが、AOCボルドーで認められる日もそう遠くないのかもしれない。そうなるとブルゴーニュのシャルドネとボルドーのシャルドネの飲み比べなんてことも。楽しげなような気もするが気候変動の副産物となると気持ちは複雑だ。
相性: ★★★★☆
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