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さっぱりシシャモのエスカベージュに甲州ワインのたおやかな果実味

三寒四温、寒さと温かさを繰り返す日が続くが、春めいてくるとさっぱりとしたおつまみに、白ワインを合わせたくなる。
シシャモのエスカベージュが食卓に上がった。季節の変わり目の酒飲み (私) の心理を心得ている妻に感謝したい。
ワインと合わせるにあたり、シシャモはなかなかクセモノだ。
磯の香りや特有の風味が強く、また子持ちシシャモはワインにはタブーとされる魚卵を抱えている (魚卵といえども味付け、合わせ方次第で十分にワインのお伴になる) 。
セラーから取り出したのは海のワインと呼ばれる、スペインの西側沿岸、ポルトガルの北に位置するリアス・バイシャスの白ワインだ。アルバリーニョと呼ばれる固有品種で造られ、地元では魚介と楽しまれるワインだ。
魚介とワインを合わせる際に困ったら、海のワインと決めている。それがゆえに、セラーから常に切らさないようにしている。

アデガス バルミニョール M-100 アルバリーニョ 
Adegas Valminor, O Rosal, M-100, Rias Baixas, Spain, 2015, 13.5%, 3,630円
ゴールドがかった明るくはっきりした色調。
よく熟したリンゴ、蜂蜜漬けの花梨が豊かに広がる、果実香とともに黄色い花のフラワリーな香りも明瞭に、まったりとしたバニラ香、微かに白胡椒のスパイス。
厚みのある果実味のアタックながらみずみずしさも兼ね備えていて滑らか、穏やかな酸味、余韻にヨード系のニュアンスを思わせるビターなタッチが微かに、果実味の余韻は中程度だがその後も鼻腔を抜ける樽香もありゆったりとワインの余韻を楽しめる。

さて、シシャモのエスカベージュに合わせてみる。

シシャモ特有の力強い磯の風味と魚卵に、ワインのパワフルな果実味とまったりとした樽香が猛烈に反発。魚の磯臭さと魚卵には、海のワインと呼ばれるスペインはリアス・バイシャスのアルバリーニョも用いたワインも、慎重を期す必要あり。

そもそもこれは私のセレクションミスだったが、このワインは2015年ヴィンテージにて程よく熟成の入り口に差し掛かり果実味が快活さが落ち着き、円熟な風味を呈し始めており、また樽が強めにかかっていることで複雑さも備えている。

ワイン単体のクオリティは素晴らしいが、クセの強い魚介には、円熟・複雑ワインは選択肢として感心できないなと反省。

諦めずにセラーから取り出したのが、山梨県で甲州品種を用いて造られるワイン。

98Wines, Nogi, 山梨県甲州市塩山, 2020, 11%, 3,630円
ほんのりと濁りを感じるナチュラルな色調、甲州品種としてはややはっきりとした色合い。
大ぶりの梨、カボスなどのおしとやかでおおらかな果実香に、トマトの葉やセルフィーユのほんのりとヴェジェタルなタッチ、微かに白い花のフラワリーなニュアンスも。
みずみずしく派手さはないが素朴で芯のある果実味、穏やかな酸味、中盤から余韻にかけて穏やかにビターなニュアンスが広がりドライなフィニッシュ。

シシャモのエスカベージュに合わせる。

シシャモ特有の力強い磯の風味と魚卵に、甲州品種が丁寧に醸されたときに香る上質な吟醸香に似た香りと、出過ぎず弱すぎず、芯のあるたおやかな果実味が絶妙に寄り添った。

魚の磯の香りや魚卵などの、一見ワインに合わせ辛い食材には、王道の甲州がセラーに控えていると安心だ。

以前、シシャモのエスカベージュにギリシャのスパークリングワインを合わせたが、こちらもなかなかの相性だったのでぜひ、機会があれば試して頂きたい。


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