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生シラス唐辛子漬けの辛味の中に妖艶な甘み イタリア南部プーリアの陽気で快活な果実味

シーフードとワインを求めてレストランを探していると、気分にぴったりの場所を見つけた。
台東区上野のチロンボ・マリーナ。
カラブリア州の美味しい魚介とワインの楽園、漁師の船着場にある魚介専門のトラットリア。シーフード好きをくすぐる謳い文句が心に刺さる。

イタリアンレストランは子供たちもピザやパスタを食べることができるので家族連れも安心だ。

先ずは前菜編。

右側のパリパリに載せて食べる

お通しにはサルデッラ(350円/人)。生シラス唐辛子漬けでロザマリーナともいう。
イタリア南部・カラブリアの伝統食だ。
唐辛子のピリッと効いたペペロンチーノのスパゲティはカラブリア州周辺のイタリア中南部が発祥とされる。郷土料理にも唐辛子が愛用されている。
先日のカラブリアのワイン、リブランディの手掛けるグラヴェッロはキムチを使ったカルチジョリム(太刀魚のピリ辛煮)との相性もばっちりだった。

このレストランにもキムチに合うワインで日本でも知名度が上がったこのリブランディの空き箱が見えた(神の雫は韓国語版もあり韓国でもこのワインは大人気に)。
さぞ、唐辛子と一緒にお客さんの舌を楽しませていることだろう。

加えて、鮪タルタルとマグロカラスミのクロスティーニ(380円。二つオーダー)。

メンチにされたマグロがブルスケッタのように硬めのパンの上に載っている。その上にカラスミ少々。

カルパッチョ全種盛りはミズダコ、真鯛、スズキ、マグロ、カンパチの5種(1,680円)。

ワインはボトルメニューも充実していて、イタリアを幅広くカバーしつつ、フランスからも的確なセレクション。
シチリア島あたりの潮風香るワインをボトルで頼もうかなどと悩んだ末に、5種のグラスワインのうちの一つを注文。イタリア プーリア州のピノ・グリージョ品種。

ところで、レストランでのワインの注文に多少の気を揉む方もいらっしゃるかもしれない。
ボトルを頼むと余ってしまうが、グラスワインの種類が少なくて好みのものがない場合にはどうしよう(今回訪問のレストランでは好みのグラスワインがあって良かった)。
そんなとき私はボトルで頼んで、余ったものは再度、栓をしてしまい持ち帰らせてもらう。
出来ればワインはテーブルで抜栓して欲しいが、そうしないで開栓されたものがテーブルに運ばれることもあるので、最初から全部飲み切らないことが明らかな場合には、『余ったら持ち帰らせてもらっていいですか?』、『OKでしたら、コルクは取っておいてもらえると助かります』、と伝える。これで断られたことはない。
とはいえ、レストランでは人件費、家賃を含む管理費等のコストを加味して小売価格の2倍以上でワインが売られることが一般的なので、たくさん残してしまうのはもったいない。

前菜、スープ、魚料理、肉料理と通す場合はワインをどうしよう。
グラスワインが充実しているレストランならば、一品一品に合いそうなものを注文するのが楽しいし(そういうお店はペアリングコースを用意していたりもするし、ソムリエさんがアドバイスをくれる。ソムリエについ遠慮してしまうなら一杯グビリとやって勢いを付けよう)、なかなかそういう店も少ないので、最大公約数のスパークリングワイン(シャンパン含む)或いはロゼワインを頼むのがおススメだ。
スパークリングワインの心地よい刺激と快活な果実味と酸味は、たいていの料理をカバーする。
素晴らしい相性とまでならないことはあってもケンカすることはほとんどない。

ロゼワインは白と赤ワインの中間のように中途半端に思われるかもしれないが(甘そうとのイメージからビギナー向けと先入観を持ってしまいがちだが、今や輸入されているロゼワインはほとんどが辛口)、白ワインの快活な果実味と、赤ワインの豊潤の果実味を兼ね備えていて、魚にも肉にも合わせられる。黒ブドウ由来の軽快なタンニン(渋味)も感じられ、肉の脂を心地よくリフレッシュしてくれる。こんな万能ワインの魅力に気付いてかフランスでは近年、ロゼワインの消費量が白ワインのそれを抜いた。

あまり多くはないがBYO、すなわちBring Your Ownということでワインの持ち込みOKのお店もあるので、この料理にはこのワインを合わせたいというこだわりがあれば利用したい。店にもよるが抜栓料1,000円、2,000円といったところが多いか。
飲み放題付きコース料理を提供しているお店であれば、それを頼むことを伝えて持ち込み可否を聞くと、追加料金なしでOKしてくれるところもある(とはいえ無理なお願いはしないようにしましょう)。

また、レストランの味をそのまま再現することは難しいが、料理を自宅で真似してみて、ネットで買った好きなワインに合わせるというのも私はたまにやる。

さて、料理にグラスワインを合わせていく。
エピクロ ピノ・グリージョ, 800円(レストランのグラスワイン)
Epicuro Pinot Grigio IGP

しっかりと冷やされた状態での提供だったこともあり、最初は香りのボリュームは穏やか。透明感の高い青リンゴ、フラワリーなニュアンスに富む。
風味には果実味は中庸ながらピュアでクリーン、低めの提供温度も手伝って涼やかな酸味を帯び、いかにも温暖なイタリア南部プーリアのワインとは(良い意味で)想像がつかない。
サルデッラとワインを合わせる。唐辛子の鮮烈な辛味の奥にふわりと立ち上がるシラスの磯の香りとどこか妖艶なねっとりとした甘みに、ワインの涼やかな果実味が寄り添う。相性: ★★★★☆

鮪タルタルとマグロカラスミのクロスティーニ。鮪のタルタルは刺身で提供するものよりは熟成が進んでいるような印象で(もちろんそれが好みの方も多いでしょう)、ワインのフレッシュな果実味に合わさると生臭みが少々目立ってしまった。カラスミの存在感は確かめづらかった。相性: ★★☆☆☆

ミズダコのカルパッチョに。ディルとオリーブオイルと塩、レモンでシンプルに仕上げられている。ディルが多めで爽やかさアップ。鮮度抜群でプリプリでみずみずしい食感の奥に柔らかいタコの甘みと磯の香り。ワインのピュアで軽やかな果実味と涼やかな酸味がミズダコのリズムにちょうど良い。ワインの提供温度は低めで大正解。相性: ★★★★☆

真鯛のカルパッチョに。ディルの爽快な香りで引き立つ鯛の甘い脂、コリコリの歯ごたえの奥の、特に皮に近い部分の複雑なフレーバーに、ワインの透明感の高い果実味が同調しつつ口内をリフレッシュ。相性: ★★★★☆

スズキのカルパッチョに。スズキのやや力のある脂の強さに、ワインの穏やかでピュアな果実味が寄り添うもやや圧される印象。相性: ★★★☆☆

カンパチのカルパッチョに。赤身の部分の強いフレーバーにややワインが押されるも、白身の部分の充実の風味と脂にワインの陽気で快活な果実味が同調。相性: ★★★☆☆

マグロのカルパッチョに。赤身の複雑で力強いフレーバー、豊潤な脂に、ワインの快活な果実味はやや圧されるがケンカはない。相性: ★★★☆☆

前菜を終え、後半のメバルのオイル煮、赤海老とピスタチオ~カバタッピ~(パスタ)、マルゲリータとベルドゥーラに続く。

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