見出し画像

カルチジョリム(太刀魚のピリ辛煮) 噂のキムチに合う赤ワイン

鮮魚コーナーでひときわ輝く魚が気になっていた。文字通り刀のような太刀魚だ。

太刀魚のレシピを探していると「カルチジョリム(太刀魚のピリ辛煮)」にヒットした。カルチ(タチウオ)と大根を辛く煮た韓国の素朴な家庭料理。韓国で太刀魚は南西部、済州島(チェジュド)の名物として知られ、地元の人がランチに、あるいはお酒の肴に楽しむ料理とのこと。海外の家庭料理にワインを合わせるのも楽しそうだ。
尚、太刀魚の産卵期は6〜11月で、旬の時期もそれと重なる7月〜11月とされる。とはいえ、1年を通して脂ののり方がほぼ変わらないのでいつでも美味しく食べられる。
 
カルチジョリムに合わせたワインはイタリア カラブリア州でリブランディが地場品種ガリオッポに国際品種カベルネ・ソーヴィニョンをブレンドして造るグラヴェッロだ。ワイン漫画、神の雫に登場し、キムチにマリアージュする赤ワインとして紹介された。韓国でも神の雫は読まれていて、人気の韓流俳優が買い付けたといった情報も手伝って、このワインが売り切れ続出となったようだ。キムチを使った韓国の郷土料理にもきっと合うはずだ。
 
鮮魚コーナーの太刀魚はとてつもなく長く、竜田揚げ、塩焼き、そしてカルチジョリム風にといろいろ造ろうと想像していたが、その場で下処理してもらって出てきたのは7~8センチほどの切り身が5つほどとコンパクトになった。2品にして塩焼きとカルチジョリムにしよう。竜田揚げはまたの機会に試したい。

塩焼きには日本のスパークリングワインとイタリア トスカーナのヴェルメンティーノ品種のワインを。

 シャトー・メルシャン, 日本のあわ, Brut,11%, 1,979円

甲州、シャルドネ品種のブレンド。ブドウは山梨県、長野県、福島県で栽培されたもの。適材適地のブドウのブレンドもまた日本ワインの自由な表現だ。ステンレスタンクおよびオーク樽にて18~20度で約14日間発酵。
香りには和柑橘、和梨、微かにグレープフルーツ、酸の強いりんご、ほのかに青いトマトのニュアンス。
風味にはみずみずしい果実味、泡の刺激はかなり強め、酸味がキリッと効いて、中盤からほろ苦さがゆるやかに広がる。シャルドネの果実味に緩和されつつもフィニッシュにはやはり甲州らしいほろ苦いグリップも。
太刀魚の塩焼きの前に味噌汁をひと口。白菜、人参を茹で鯖缶を投入した汁。

甲州のほろ苦さに鯖の旨味が調和、シャルドネによる適度な果実味は味噌の風味とまずまずの相性。★★★☆☆
続いて太刀魚の塩焼きに合わせる。甲州のほろ苦さが太刀魚の柔らかい磯の香りとこうばしく焼きの目のついた皮の部分に調和。ただ、淡白で繊細な太刀魚の風味をワインの果実味がやや圧倒してしまうか。相性: ★★★☆☆
 
ルナエ, エチケッタ グリージャ, コッリ・ディ・ルーニ, ヴェルメンティーノ, イタリア, 2021, 2,492円
LVNAE, Colli Di Luni, DOC, Vermentino, Italy, 2021, 12.5%

トスカーナ州とリグーリア州の境にワイナリーと畑をもつ。まさにコッリ・ディ・ルーニは両州にまたがる産地の呼称だ。ワイナリー名のルナエの由来はラテン語の「Lunae(月)」。古代ローマ時代、ワイナリーの土地の近くに「Luna(イタリア語で月)」という名の町があり、高品質なワインを造っていた町でもあったことにあやかった。
香りには青リンゴ、メロン、スイカズラ、ほのかにグァバ、白桃の果実香に白い花のフラワリーなフレーバーが豊かに、穏やかに混じる潮の香りがワインのフレーバーを完成させる。
風味にはみずみずしいピュアな青リンゴジュースを思わせる清々しくハリのある果実味、酸味は中庸からやや穏やか、余韻にほのかに舌にフェノリックなタッチとほろ苦さが心地よい。
太刀魚の塩焼きに。上品な磯の香りに太刀魚の繊細な風味が程よい。焦げの入ったこうばしさにはワインの滑らかな果実味の質感ではやや負けてしまうか。相性: ★★★☆☆

続いてカルチジョリムにワインを合わせる。たっぷりとニラを投入した。

ピエロパン アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ, イタリア, 2015, 6,699円
Pieropan, Amarone della Valpolicella, DOCG, Italy, 2015, 16.5%

創業1890年の白ワイン、ソアーヴェの名手。今回は濃縮された味わいのアマローネを。収穫したブドウを3~4か月間陰干しし、干しブドウにしてから発酵する。
濃い色調ながら明るいルビーレッドがのぞく。
ドライフルーツ、カシスリキュール、チェリーリキュールなどの濃密な充実の果実香にチョコレートとバニラの甘美な香りとドライローズが華やかに絡む、華が乾くようなメントール、さらには樹皮や皮革もほのかに絡み複雑で重層的。
非常にパワフルな果実味、甘美な甘やかさ、じっとりと舌に残るタンニン、塩気もありワインに心地よい輪郭、非常に長いいつまでも続くかのような余韻。
カルチジョリムに合わせる。濃密で甘美なアマローネの香りがキムチの唐辛子にバランス。ただ、太刀魚の穏やかな風味がやや圧倒されてしまうか。キムチ単品にはアマローネを合わせるのも面白い。相性: ★★★★☆
 
続いて噂のキムチに合うワインに。
リブランディ, グラヴェッロ, ヴァル・ディ・ネート・ロッソ 2018, 3,614円
Librandi, Gravello, Val di Neto Ross

リブランディはティレニア海とイオニア海に挟まれたイタリア半島のつま先部分に位置するカラブリア州を代表するワイナリー。ワインに使われるガリオッポはイタリアで最も古いブドウのひとつ。その語源はギリシャ語で「美しい足」を意味する言葉に由来。古代ギリシャにて、オリンピックの勝者に賞品として与えていたワイン「クリミサ」は、ガリオッポから造られていたという説もある。ガリオッポに国際品種カベルネ・ソーヴィニョンをブレンドしたワイン。
コアには力強い黒み、エッジはほのかにレンガがかり落ち着いた印象。
香りにはカシスリキュール、チェリーリキュール、プラムジャムなどの完熟した力強い果実香。爽快なメントール香、鼻が乾くように感じるほのかに潮風のようなニュアンスや貝殻のフレーバーを含む力強いフレーバー、ブラックペッパー、ダークチョコレートに明瞭にバニラも絡む。
風味にはパワフルな果実味ながらやや落ち着きはじめか香りから想像されるほど攻撃的ではない、ミネラルや塩味を強く感じ舌が乾くよう。パワフルな酸味、しっかりと存在感はあるがカベルネほど強くなくタンニンのバランスが素晴らしい、鼻腔をほのかに磯の香りが抜けていく、余韻にはややビターなタッチが舌に残る、アルコールボリュームを感じる力強いボディ。
カルチジョリムに合わせる。ワインの力強い風味、タンニン、塩気にキムチがバランスしつつ、ワインに含まれる潮風の香りは太刀魚の淡白で上品な風味と微かな磯の香りをしっかりと立ち上がらせる。相性: ★★★★★
 
カルチジョリムにティレニア海とイオニア海の潮風をたっぷりと浴びたブドウで造られた赤ワインが絶妙に調和した。カベルネ・ソーヴィニョン品種がブレンドされたワインだったが、次回は地場品種のガリオッポ100%のものでキムチを用いた料理に合わせてみたい。
ソウルの南大門市場にはカルチジョリム専門店が並ぶカルチジョリム通りがあるそうだ。リブランディのワインを持って訪問したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?