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さばみりんのオーブン焼き ガメイ嫌いな王様のピノ・ノワール

自宅で魚の干物のオーブン焼きにワインを合わせる。干しカレイと一緒にさばみりんも焼く。

干しカレイの穏やかで上品な脂と旨味を楽しんだ後に、鯖のワイルドな脂に箸を進める。

お酒も料理もそうだが、味の軽いものから重いものへ進めていくことが大切だ。先に重いものを味わってしまうと、軽い方の味をどうしても感じにくくなる。

料理に合わせたワインは、イタリア サルディーニャ島のヴェルメンティーノ品種のものを2つ、ロンバルティア州のフランチャコルタ(シャルドネ、ピノ・ビアンコ、ピノ・ネロ)、シチリア島のカリカンテ品種、そしてフランス ブルゴーニュ赤の計5種類。潮の香るヴェルメンティーノ2種との相性は安心の安定感。最も印象に残ったのはブルゴーニュ赤で、みりんの甘みをまとった熟成した鯖の脂に素晴らしい調和を見せた。

シャトー・フィリップ・ル・アルディ, ブルゴーニュ, オート・コート・ド・ボーヌ
Château Philippe le Hardi, Bourgogne Hautes Cotes de Beaune, France, 2020, 14.5%

シャトーの起源はブルゴーニュ公国初代公王フィリップ・ル・アルディに由来。この公王は1395年にはブルゴーニュの畑からガメイを引き抜き、より高貴なピノ・ノワールを植えるよう奨励した。ブルゴーニュ南部に押しやられたガメイがボジョレーで銘酒を生み出したことはありがたいが(新酒ばかりが話題になるがそれ以外に魅力的なワインが多い)、ガメイにとっては散々な言われようだ。現在は仏系金融グループのクレディ・アグリコールの傘下。
香りには梅のエキス、フランボワーズ、ラズベリーの快活でチャーミングな果実香にドライローズのフラワリーな香り、樹皮などの落ち着いたニュアンスもほのかに、完熟した茎によるものか心地よいスパイス香、アルコールの厚みも香りから伝わる。
風味に含まれるチャーミングな果実味は滋味や旨味を備えていて、しっとりとタンニンが舌に残り余韻も非常に長い。ややパワフルな果実味は分かりやすくアピーリング。余韻には鼻腔をバラのフラワリーで上品な香りが抜ける。
みりんさばのオーブン焼きにワインを合わせる。みりんの甘みをまとった熟成した鯖のやや落ち着いた脂(それでも鯖の脂は力強い)、そしてどこか樹木を思わせるような風味(鰹節とまではいかないが熟成により発展した風味)が、ワインのチャーミングな果実味と、ワインにも含まれる樹皮のニュアンスに調和。四つ星手前の三つ星。相性: ★★★☆☆

レ・マルケジーネ, フランチャコルタ, ブリュット, ニテンス, イタリア, NV, 2,970円
Le Marchesine, Nittens Brut, Franciacorta, Italy, 12.5%

イタリア・ロンバルディア州でネゴシアンを家業としていたピアッタ家が1985年に設立したワイナリー。ステンレスタンクで発酵させたワインを24ヶ月超、瓶内二次発酵(+熟成)。ブドウはシャルドネ、ピノ・ビアンコ、ピノ・ネロを使用。
香りにはフレッシュなグレープフルーツ、レモンなど快活な柑橘香、柑橘果皮のビターなフレーバー、ほんの微かに酵母の香り、ほしわらや海藻などのヨードのニュアンスも。
風味のなかの果実味の主張は控えめでほろ苦さ、切れ味のあるシャープな酸味、ミネラルのニュアンスに富む。果実味豊かなタイプとは一線を画し一貫してドライ。
さばみりんのオーブン焼きに。ワインのフレッシュな果実味は鯖の生臭みを立ち上げるスイッチを押してしまった。相性: ★☆☆☆☆

ルナエ, エチケッタ グリージャ, コッリ・ディ・ルーニ, ヴェルメンティーノ, イタリア, 2021, 2,492円
LVNAE, Colli Di Luni, DOC, Vermentino, Italy, 2021, 12.5%

トスカーナ州とリグーリア州の境にワイナリーと畑をもつ。コッリ・ディ・ルーニは両州にまたがる産地の呼称だ。ワイナリー名のルナエの由来はラテン語の「Lunae(月)」。古代ローマ時代、ワイナリーの土地の近くに「Luna(イタリア語で月)」という名の町があり、高品質なワインを造っていた町でもあったことにあやかった。
香りには青リンゴ、メロン、スイカズラ、ほのかにグァバ、白桃の果実香に白い花のフラワリーなフレーバーが豊かに。穏やかに混じる潮の香りがワインのフレーバーを完成させる。
風味にはみずみずしいピュアな青リンゴジュースを思わせる清々しくハリのある果実味、酸味は中庸からやや穏やか。余韻にほのかに舌にフェノリックなタッチとほろ苦さが心地よい。
さばみりんのオーブン焼きに。鯖の力強い脂に、ワインの潮の香りがよく寄り添い、ハリのある果実味が薬味のように口内をフレッシュに。相性: ★★★☆☆

ピエロ・マンチーニ, プリモ, ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ 2021, 2,049円
Piero Mancini, Primo, Vermentino di Gallura, DOCG, Italy, 2021, 14%

サルディーニャ島で唯一のDOCG格付けのヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ。
香りにはリンゴのリキュール、林檎酒、ピンクグレープフルーツ、グァバにグレープフルーツの果皮、レモングラスなどのハーバルな香り。ほんのりと樽香、白胡椒のスパイスのタッチ。海岸を歩いているような潮の香りも。
風味は豊満でジューシーな完熟した果実味、塩味がワインにメリハリを与える。清々しい酸味、余韻にはまったりとした乳酸飲料のようなタッチ。鼻腔を樽香が力強く抜ける、ほろ苦さを伴う充実したリッチな余韻。
さばみりんのオーブン焼きに。ワインの潮の香りと完熟果実味がみりんのほのかな甘さが広がる鯖の脂に寄り添い、またワインの樽香はグリルした焦げ目とシンクロ。相性: ★★★☆☆

クズマーノ, アルタモーラ, エトナ ビアンコ, カリカンテ イタリア, 2020, 2,464円
Cusumano, Alta Mora, Etna Bianco DOC, Sicilia, Italy

2000年創業の比較的新しいワイナリーで、その品質とコストパフォーマンスの高さで人気。創業以前はバルクワインを生産していたが元詰めに参入。いきなり創業年のヴィンテージのフラグシップワイン(ノア)でトレビッキエーリ(著名ワイン評論誌ガンベロ・ロッソで満点の三つ星グラス)を獲得し注目される。このワインはヨーロッパ最大の活火山であるエトナ山の北斜面の畑で栽培されたブドウから造られる。
香りには潮のニュアンスをたっぷり。グレープフルーツ、ライム、スウィーティーの果実香。青い果皮の柑橘香がピンポイント海藻、ヨードが支配的、微かにスモーキー。セルフィーユの軽快なハーブ、アカシアの黄色いフラワリーな香りも。
風味にはみずみずしくフレッシュでハリのある活力のある果実味、シャープな酸味、中盤から余韻にかけてほろ苦さがゆるゆると残る。ミネラルのニュアンスに富む魅力的なワイン。
さばみりんのオーブン焼きに。ワインの潮やミネラルのニュアンスは鯖の脂との相性良いが、やや穏やかでグリーンなニュアンスを含む果実味が鯖の生臭みを少々立ち上げてしまった。相性: ★★☆☆☆

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