見出し画像

「建築表現」と「ウェブ表現」を一致させることで作品の良さが伝わる

ベルギーを拠点として世界的に注目を集める建築家、オフィス・KGDVS(ケルステン・ゲールス&ダヴィッド・ファン・セーヴェレン)のウェブサイトの構成が、とても興味深かったので、久々にブログを更新しようと思います。

(彼らはエルクロッキーでも特集号が組まれている)

彼らのサイトを久々に閲覧してみようと思ったのは、最新プロジェクトである、スペインの住宅が完成して、写真や図面が発表されていたからでした。

詳細はこちらで見られます。
http://www.designboom.com/architecture/office-kgdvs-solo-houses-matarrana-spain-05-10-2017/

圧倒的な物質感というか、素材の使い方が柔軟でユニーク。既成概念にとらわれない感じ。と同時に、図面を見るとわかるそこに存在する厳格な幾何学。
この住宅では、正円の外形の中に、正円の中庭をくりぬき、そのドーナツ状平面の端部4つに居住スペースをつくるというプランニングです。

その極限まで図式に拘った平面と、立ち上がった建築の素材使いの豊かさの対比的な感じが興味深くて、アーキテクチャーフォトでは
「幾何学的に厳格なプランニングと、様々な素材が使用され寛容な印象の実空間の対比が興味深いプロジェクト」
と珍しく、個人的な感想のようなものも書いてしまいました。(それくらい感銘を受けたプロジェクトでした。)

そういえば、長谷川豪さんの『カンバセーションズ』という書籍に彼らのインタビューが掲載されていたなと思って再読。

現代建築家ながら、古典に敬意をもった思想をもっていることが確認できたり、長谷川豪さんも彼らの建築を「強い形式とマテリアリティが同居している」と評していましたので、やはり同じことを作品から感じているのだなと思いました。

その後に、彼らのウェブサイトを訪問してみたのですが、その過去のプロジェクトの見せ方が、僕や長谷川さんが、彼らの建築に感じたであろうことを、非常に上手く表現している構成となっていたので、これは、面白い!と改めて感じたのです。

下記にプロジェクトページを引用します。
(引用:http://www.officekgdvs.com/)

この画像をみればわかる通り、左側にプロジェクトのイメージ、右側に図面等のドローイングが、フラットに併記される形で表現がされているのです。(文章はtextという文字リンクをクリックすることで表示)

私も建築家の皆さんのサイトを多数見ていますが、基本的に写真・画像を先行に表示させて、その下に図面を掲載(もしくは掲載しない)ことがほとんどだと思っています。

それと比較しても、新しいウェブでの表現を模索している感覚を受けましたが、

なにより凄いのは、先に書いた、彼らのつくる建築の特徴(幾何学的に厳格なプランニングと、様々な素材が使用され寛容な印象の実空間の対比)が、サイトの構成を工夫することで上手くこちらに伝わってくるということです。

写真と、図面は独立していて、それぞれをクリックすることで、異なる写真・図面を見ることができるつくりです。しかし、写真だけ図面だけになることはないのです。
常に写真と図面が併記されている状態をつくることで、
「様々な素材が使用され寛容な印象の実空間」と「幾何学的に厳格なプランニング」という彼らの建築の特徴を、閲覧者に伝えるものになっているのです。

「建築表現」と「ウェブ表現」が一致させることは、間違いなく、その建築の特質や良さを伝えることに貢献すると考えています。

ここで、注意したいのは、ケルステン・ゲールス&ダヴィッド・ファン・セーヴェレンの作品だからこそ、このウェブ表現が適切であるという点です。
作品の特質が変われば、そこでのウェブ表現は変わります。つまり、建築家ごとにその特質が違う以上、全てのサイトは、その建築家の為にカスタムされるべきだと思います。

ウェブが、広く普及し建築家の皆さんが、ほぼすべてサイトを持っている時代だからこそ、これからは、自身の活動や作品の特質を見極め、それをウェブサイトにも反映させるべきです。

長々と失礼いたしました!
何らかの参考になりましたでしょうか??

******

実は、建築家のウェブ発信に関する書籍を執筆しているのですが、その書籍では、私がサイト運営で培った考え方やノウハウを多数紹介する予定でいます。是非、ご期待ください!

******

それでは、今後ともどうぞ宜しくお願いいたします!

#デザイン #建築



皆様に、有益な情報をご紹介できるよう活用します!