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#建築 まとめマガジン

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2018年11月の記事一覧

「選択可能性」の重要性─『新建築』2018年6月号月評

「月評」は『新建築』の掲載プロジェクト・論文(時には編集のあり方)をさまざまな評者がさまざまな視点から批評する名物企画です.「月評出張版」では,本誌記事をnoteをご覧の皆様にお届けします! (本記事の写真は特記なき場合は「新建築社写真部」によるものです) 評者:連勇太朗×松島潤平 目次 ●「選択可能性」の重要性 ●「説明可能性」を担保した児童施設 ●未来に対して,何を価値として投影するのか 「選択可能性」の重要性連  6月号の特集対談では,保育施設に求められる役割が社

土地の文脈から設計者の意図を想像する――すみだ北斎美術館

皆さんは建築を見るとき、どんな見方をしていますか? 建築を学んできた、あるいは仕事として関わっているという方は、歴史的な視点やご自身の専門との関係などそれぞれの見方があるでしょう。 詳しく知っているわけではないけれど好きだという方は、居心地の良い空間が好きだったり、ある特定の建築家のデザインが好きだったりするのでしょうか。 いろんな建築の見方があるなかで、今回はその建築が建つ場所との関係について、考えてみたいと思います。 こんにちは、ロンロ・ボナペティです。 東京都墨田区に

5章 ナラティブと建築家とSYSN<完>

ストーリーではなくナラティブワイはペリカン建築家やけど、ついに最後の5章までたどりついたで。 予定よりも、ずいぶん時間がかかってしもうたで、堪忍やで。 ✴︎✴︎✴︎✴︎ 『ストーリーではなくてナラティブ』 ワイはここに、これからの建築家像のヒントがあると考えてんで。 中央集権から分散型へ、国や会社や大学、家族、それぞれが集団の活動体としての固まりから、個々の固まりの集合体に変化しているで。 ブロックチェーンの技術が、中央管理者をおかないスタイル、分散型の世界観を端的にあ

生命の讃歌 建築家 梵寿綱+羽深隆雄【美術出版社】

梵寿綱 羽深隆雄 著 A4変型判/260頁/5,800円+税 早稲田大学そばにある奇怪な建物「和世陀」を1983年に設計した建築家・梵寿綱(ぼん・じゅこう)と、旅館「仙寿庵」、鮨屋「銀座久兵衛・別館」などを手がけた建築家・羽深隆雄の2名を紹介する異色の建築作品集。 「和世陀」(『住宅特集』1987年6月号掲載)などの作品で知られ,経済性に支配されない表現的な建築を模索する梵寿綱と,「仙寿庵」(『新建築』1997年8月号掲載)など,多くの和モダン建築を手がける羽深隆雄の

コンパクトシティとまちなか居住 _集合住宅は都市の主役に返り咲けるのか_

1.コンパクトシティとまちなか居住  コンパクトシティについてはご存知の方も多いと思いますが、簡単にご説明します。人口縮小と高齢化が進む中で、地方都市では、インフラなどの公共サービスを効率化し行政コストを適正化すること、また、高齢者などの交通弱者が住みやすい街を作ることが課題とされます。それを解決する形の一つがコンパクトシティであり、コンパクトシティを実現させるために行政が行っているのが、コンパクトシティ政策です。私の住んでいる富山市はコンパクトシティ政策で有名ですが、具体的

時間のデザイン,その必要性─『新建築』2018年4月号月評

「月評」は『新建築』の掲載プロジェクト・論文(時には編集のあり方)をさまざまな評者がさまざまな視点から批評する名物企画です.「月評出張版」では,本誌記事をnoteをご覧の皆様にお届けします!(本記事の写真は特記なき場合は「新建築社写真部」によるものです) 評者:連勇太朗×石榑督和 目次 ●建築とは記憶の装置である ●「歴史的にも建築的にも価値がない」とされる建物が積み重ねてきた時間 ●時間のデザインと,その教育の必要性 建築とは「記憶の装置」である連  4月号の特集:ア

ワイらに音楽と建築愛を。なぜ?今、建築に音楽が必要か?創造系ペリカンナイト開催決定

ワイはペリカン建築家やけど、建築ラッパーこと、ナカミはんとコラボが決まったときに、考えたことがあるで。 なぜワイはコラボしたいと思ったのか、ワイはペリカンやから、ビートルズも、ストーンズもようわからんし、ましてやラップなんかしたことないで。せやけど不安よりも先にラップに可能性を感じたで、それは何でやろか? なぜラップに、音楽に可能性があるか。 そこについてナカミはんと、本気でディスカッションしたで。 そして、終電近くになって、結論がでたで、SYSN。 音楽は、みんなが興

モクチンメソッド|危機を好機に転換する現代版「計画的小集団開発」

木賃アパート。ハウジングの戦後史を辿るとき必ず出てくるこの言葉。たしかに老朽化して空室も目立った状態であちこちに見かけるよなぁ~。これは社会問題にもなっていくよな~。などなど他人事に思っていたのですが、ある本を読んで「あ、そうか!いま自分が住んでるアパートも木賃アパートだ!」って、にわかに自分事になってオドロキました。 そんなキッカケとなった「ある本」とは、『モクチンメソッド:都市を変える木賃アパート改修戦略』(連勇太朗・川瀨英嗣、学芸出版社、2017)。 オレンジ色の表

ユートピア都市の書法 クロード=ニコラ・ルドゥの建築思想【法政大学出版局】

小澤京子 著 A5判/286頁/4,000円+税 ルドゥの建築と都市をめぐる構想は、「文字」と「言語」、「語り」についての方法論の模索でもあった。 幻視的や奇矯といった形容とともに《呪われた建築家》とされてきた従来の像を刷新し、その特異性の本質を明らかにする。建築の起源としての幾何学性志向、都市構想と性愛、性的建築と身体管理、書物の構造が出来させる仮構的な都市空間──。 新たな言語創造者による「都市の書法」の追究とともに、時代の認識と欲望のあり方を炙り出す。 フランス

木造建築の語られ方|昭和期日本の精神史 はじめに&目次

noteのマガジン「木造建築の語られ方」ほかに書き散らしていた文章たちを再編成して目次化してみました。佐野利器にはじまり三澤千代治におわる木造建築のお話しを書くという目標に向かってスケッチしてみた架空書籍の目次とその前書きになります。 はじめに 木造・昭和・語られ方たとえば、十数年ほどの前の住宅雑誌のページを開いてみると、今と比べて茶色や緑色の割合があまりに少ないことに驚きます。かつては無彩色でまとめられがちだった建築も、今では木質感にあふれています。それこそ、『住宅特集』

ウォークス 歩くことの精神史【左右社】

レベッカ・ソルニット 著 東辻賢治郎 訳 四六判/520頁/4,500円+税 歴史上の出来事に、科学や文学などの文化に、なによりもわたしたち自身の自己認識に、歩くことがどのように影を落しているのか、自在な語り口でソルニットは語る。人類学、宗教、哲学、文学、芸術、政治、社会、レジャー、エコロジー、フェミニズム、アメリカ、都市へ。歩くことがもたらしたものを語った歴史的傑作。 歩くこと,それは呼吸をすることと同じくらい人間にとって当たり前のこと. だからこそ,歩くことは人間

海外から京大建築へ 留学生インタビュー第1回

”京大建築式” β式は、2018年11月オープン予定「京大建築式(仮)」のプレサイトです。学生の視点から京都大学建築学科・建築学専攻の活動を紹介。デザインから構造実験まで幅広い建築学の魅力を伝えます。 京都大学はアジアの中でもランキング上位の大学の1つであり、また日本の文化にじかに触れられる京都という地にあります。この大学に憧れる学生は日本人だけではありません。近年海外からの留学生が増え、京都大学に一歩踏み入れると、国際色豊かなキャンパスを目にすることでしょう。では留学生は

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少しでもベターな場所を,ベターなやり方で─『新建築』2018年10月号月評

「月評」は『新建築』の掲載プロジェクト・論文(時には編集のあり方)をさまざまな評者がさまざまな視点から批評する名物企画です.「月評出張版」では,本誌記事をnoteをご覧の皆様にお届けします!(本記事の写真は特記なき場合は「新建築社写真部」によるものです) 評者:饗庭伸 目次 ●建築をつくり出す制度とそれを制限する法 ●ハレ(殊)とケ(常) ●「上がってる」感 ●「多くの制度とごくわずかの法を持つ政体」 ●少しでもベターな場所を,ベターなやり方で 木造って,気分が上がりま

既存空間をリスペクトした新設の天井が、全てを解決するーームトカ建築事務所による「天井の楕円」

青木淳建築計画事務所出身の村山徹さんと、山本理顕設計工場出身の加藤亜矢子さんが共同主宰する設計事務所「ムトカ建築事務所」が、改修を手掛けた東京の住宅「天井の楕円」を見学させてもらいましたので、その様子をレポートしたいと思います。 *** まずこの改修作品の前提条件から説明していきましょう。 もともとの建物は、建築家の葛西潔さんが設計を手掛け1997年に完成した「銀の木箱」と名付けられた作品です。(こちらで竣工当時の写真が閲覧できます。) (引用:http://www.