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かなしみのむこうがわへ

西日本を巻き込んだ台風。北海道を震撼させた地震。自然災害が立て続けに日本を襲っている。進路や強さ、方向などを予め推測できる台風と、前触れもなく突然やってくる地震という性質の違いはあれど、人々を恐怖と不安に包み込む点では全く同じかもしれない。

私は2011年の地震を仙台で経験した。当日は校内で模擬試験が行われる日に当たっていて、当時高校一年生だった私たちは十四時過ぎには試験を終えたはずだ。先輩を待ちながら部活動の準備をしていた時に、あの揺れが訪れたのを鮮明に覚えている。

「帰れる人は早く帰ること」という指示が出て、自転車通学をしていた私はすぐさま帰路に就いた。その道のりで見たものは、衝撃的な光景であった。

地面に落ちた歩行者用信号に、揺れにしなった柱が折れて宙を飛んだと思われる街灯の上部。あちらこちらでマンホールが地面から飛び出ていることなど気にもならないほどに、街全体が壊れている。どこからか女性の泣く声も聞こえた。目に痛いほどの惨状と、静かに流れる悲しみが、一面を覆っていた。


だからこそ、この数日の報道で目にする遠い街の様子は、あの日記憶に深く刻まれた景色と色濃く重なる。決して他人事ではなく、心の奥を締め付けられる心地がしてしまう。これから始まっていくであろう復旧への道のりを想い、ふと天を仰ぐ。

星がきらめいている。

名もない光が、夜空を彩る。それは、私たち一人ひとりのわずかな希望を反射するように。荒れ果ててしまった街を背に、被災地の方々は明日の方向が見えなくなりそうになっているかもしれない。私自身もそうだった。しかし、絶望の淵に立っても、底の見えない絶望の穴には引き込まれまいと誰もが踏ん張っている。そんな曖昧なイメージさえ信じさせてくれるのが、いつも変わらない星々の輝きである。暗闇を照らすなどできない微かな光ではあるけれども、確かにそこで輝いている。それだけで十分だと思う。普段は気にもしないような些細なことが、非常時には大きな力になる。


これからも、私たちの平穏を覆す災害は必ずやってくる。備えることはもちろん大切で、欠かすことはできないが、それでも被害を0にすることはおそらく不可能だ。それが起きてしまった時にどう対処できるか。それは、私たち一人ひとりの心持ちにかかっている。

きっと日常は戻ってくる。だから、決して下を向かないでほしい。今日抱く希望は、必ず明日の活力につながるから。

(文字数:1000字)

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