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プロレスの体重制限に関して私が思った事

はじめに

2022.8.5に行われる、プロレスリング・ノア後楽園ホール大会。


2000.8.5の団体旗揚げから丁度22周年を迎えるこの日、唯一組まれたタイトルマッチがGHC Jrヘビー級王座戦・『HAYATA vs近藤修司』だ。


このカードが決定して以降、一部のファンから、ある指摘がなされた。

「近藤修司の体重は、果たしてジュニアヘビー級なのか?」と。


過去に同王座を戴冠した経験を持つ、近藤の公称体重は105kg。

個人的に、今現在のジュニアヘビー級の趨勢を見ていても、近藤の体重はジュニアでも重い部類に入ると思う。
現GHCヘビー級王者の拳王が95kgであることを踏まえても、これに異議を唱える人が出るのは、まあ分からない話でもない。

ただ、本件に関して言うと、「既に王座戦としてカードが組まれている」、「2022.4.29に行われた"ジュニアの両国"に上がっている(※1)」等の理由から、私は別に良いんじゃないかと考えている。
(※1)同大会はジュニアヘビー級の選手のみ参戦


一方、こうした意見を見かけて、私は別の事も思い浮かべた。

プロレスの体重制限って、実に曖昧ではないか、と。


プロレスと体重制限

プロレスにおける体重の境目は、ハッキリしているように見えて、曖昧だと私は思う。


日本国内最大手の新日本プロレスでは、100kgを境にヘビー級とジュニアヘビー級が分かれる一方、大日本プロレスでは95kgを超えるか否かで、ヘビーとジュニアヘビーの両王座における挑戦資格も変わってくる。


全日本プロレスに至っては、世界ジュニアヘビー級王座の体重制限が105kgだし、全日から派生したWRESTLE-1(2020年活動休止)のクルーザー・ディビジョン王座は体重制限200パウンド(90.719kg)以下と、およそ15kgの差がある。

それもあってか、先に上げた近藤がWRESTLE-1に所属していた時は、クルーザー級ではなく、団体最高峰にあたるWRESTLE-1チャンピオンシップに挑戦していた印象が強い。
(間違っていたら申し訳ないです…)



これらをとっても、各団体で設けられる体重制限の境目は、それぞれで異なることが分かる。
階級の区分がハッキリと分けられ、事前計量も実施される総合格闘技やボクシングと比べても、プロレスはその点が異質かもしれない。


体重に関しては、選手側から直接言及がなされたケースもある。

私自身、体重関係で最初に思い浮かんだのは、2015年にZERO1内で交わされた大谷晋二郎と菅原拓也の舌戦だ。
菅原拓也の”ヘビー級疑惑”も含め、個人的に今でも忘れられないやり取りである(笑)。


また、2018年に行われた『チャンピオン・カーニバル』でも、体重について意識させられる機会があった。

DRAGONGATE所属(当時)の鷹木信悟が『チャンピオン・カーニバル』に参戦した際、石川修司がサムライTVの番組内で「(鷹木は)ヘビー級じゃないですよね?」と、戦前から歯牙にもかけない態度を表明したのである。


鷹木が当時所属していたDRAGONGATEでは、ジュニアヘビー級中心の同団体で【パワーを誇る重量級】という印象が強かっただけに、石川の発言には衝撃を受けた。
96kgでも、ヘビー級として認識されないのか、と…。


その一方で、先述した新日本プロレスでは、公称体重が100kg未満のザック・セイバー・Jrがヘビー級戦線で活躍している。
新日本参戦以降に挑戦・獲得したタイトルの階級は、ヘビー級ないし無差別級のベルトのみ。

プロレスリング・ノアでも、直近1年でGHCヘビー級王座を獲得している6選手(※2)のうち、丸藤正道(90kg)、中嶋勝彦(87kg)、拳王(95kg)の3選手は、いずれもジュニアヘビー級に分類できなくもない体重ではある。

(※2)丸藤正道、中嶋勝彦、藤田和之、潮崎豪、小島聡、拳王


個人的に、前述した近藤の体重に言及し始めてしまうと、「中嶋や丸藤はジュニアヘビーじゃないの?」という意見に拍車をかけそうな気もしている。

かといって、彼らにヘビー級王者として不足を感じた点は個人的に無い。
2021年10月に行われた『丸藤vs中嶋』のGHCヘビー級王座戦なんかは、配信映像でも感じ取れる、年間ベストバウト級の激闘だったから。


体重制限は、曖昧なままで良い時もある。


厳然たる階級差と、それをひっくり返すカタルシス

体重と階級の境目が各団体毎に異なるとはいえ、階級の違いは、リング上で残酷なまでに反映される。

ヘビー級とジュニアヘビー級がタッグマッチでぶつかる際、ヘビーがジュニアに勝つ機会は多く目にするけれど、その逆は中々見かけない。

敢えて階級の違う選手同士をシングルでぶつける事で、大型選手の破壊力を見せつけるようなカードも存在する。

2022.7.14『サイラスvsブラックめんそーれ』(全日本プロレス)


その一方で、階級による力関係の差が、【身体の小さい相手が大きい相手を制する】瞬間に生まれるカタルシスを引き出しているとは言えないだろうか?


管轄タイトルに階級制限が設けられていないDDTプロレスリングでは、168cm80kgの佐々木大輔が、竹下幸之介(187cm105kg)や火野裕士(178cm123kg)といったスーパーヘビーとも堂々と渡り合い、KO-D無差別級王座も過去に3度戴冠している。


プロレスリングZERO1が毎年開催しているシングルリーグ戦・『火祭り』でも、ヘビー級もジュニアヘビー級も混ざる中で、ジュニアヘビーがヘビーを制する場面が見られる。

佐藤耕平を秒殺した菅原拓也(2019.7.7新木場1stRING)


階級差による王座の区分けがなされていない女子団体の選手だと、【身体以上にデカく見える】選手は多く存在している。
それ故、体格差を跳ね返していく選手の姿が多く見られるし、そういうワクワク感にも溢れていると私は思う。

里村明衣子(センダイガールズプロレスリング)は、身長157cmとは思えぬ圧倒的な存在感を、リング上で見せる選手だ。
スターライト・キッド(スターダム)
150cm49kgと小柄で華奢だが、唯一無二の華と存在感を誇り、身体的不利を感じさせない。


まとめ

プロレスにおける体重制限の曖昧さは、他の格闘技では交わる事の無いような階級同士の対決を容易にし、独自の雰囲気を生みだしている。

2019年の『チャンピオンカーニバル』に出場した青木篤志(写真左)
ディラン・ジェイムス(写真右)との体格差は歴然だが、丸め込みで見事勝利をおさめた。


この曖昧さこそがプロレスの魅力でもあると私は思うのだが、もしも、「階級差によるダメージの点で、果たして問題が無いと言えるのか?」と突っ込まれてしまったら、何とも言えないものもある…。


仮にもし、そうした議論が活発化していったとして、各団体で階級を統一する取り決めがなされたり、ボクシングみたいに団体を統括する役割を設けたりするのだろうか?

そして、プロレスは階級毎に厳格な管理がなされ、ジュニアヘビーやヘビーが交わる機会も今以上に減るのだろうか…?


近藤修司に対する体重の指摘を見て、そんな妄想にも近い将来を考えてしまった私なのでした…。
(何はともあれ、HAYATAvs近藤修司、楽しみにしてるやで!!!)


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