その優しさに用がある
はじめに
小峠篤司という男は、つくづく人間臭くて不器用な人だと私は思う。
2019年以降、金剛→STINGER→FULL THROTTLE→ノア本隊→TEAM NOAHと、ユニットの居場所が短期間で転々として定まらない所。
2016年末にJr二冠王者の立場を捨てて飛び込んだヘビー級の舞台から、僅か2年半でJrヘビー級に再転向してしまったところ。
NOAH Jrでシングルもタッグも王座戴冠経験があるけれど、どこかファンの期待に対して突き抜けきれていないもどかしさ。
一度手酷く裏切られた経験のある人間であったとしても、見捨てられてしまった人間には手を差し伸べてしまう、非情になりきれないところ。
でも、そんな小峠篤司のことが、私は歳を重ねるごとに好きになってきている。
どこか、ほうっておけない存在とも言うべきだろうか…?
このフワフワした小峠の優柔不断さに、私自身、正直ノレなかったことも多々あった。
でも、今では彼の人間臭さに愛おしさすら感じて仕方がない。
2024年夏。
『N-1 VICTORY』で連覇がかかっていた潮崎豪の負傷欠場が発表されると、開幕戦前日の記者会見で小峠の代打出場が急遽決定した。
でも、今の小峠は実力不足だとは思わない。
階級面で不利は否めないけれど、2024年に結成した『TEAM NOAH』を通じた積み重ねが、今の小峠に味方すると私は考えているから。
TEAM NOAHで磨かれた、無差別級・小峠篤司の魅力
実力者ではあるのに、近年のNOAH Jrでは中々存在感を示せていなかった小峠篤司にとって、2024年の『TEAM NOAH』結成は彼の持つ新たな一面を引き出す場になった。
当初、潮崎豪の「プロレスリング・ノアに強さ、激しさ、そして闘う姿勢。この3つが圧倒的に足りない。そのプロレスリング・ノア、俺が変えてみせる。俺達が変えてみせる。」という想いから結成された『TEAM NOAH』。
だが、そんな彼らの提示する【NOAHの闘い】というフレーズや、個々人のNOAH内における立ち位置に対して、ファンから冷ややかな反応が見られたのも事実だ。
その後、『TEAM NOAH』はNOAH本興行と別でユニット興行『LIMIT BREAK』の開催を宣言する事になったのだが、このブランド旗揚げ戦で一番印象を刻み付けたのが、メインイベントで潮崎豪と組んで秋山準&永田裕志組と対峙した小峠であった。
4人の中で唯一のJrヘビー級であったが、積極果敢に攻め続けて、反撃にも屈しなかった小峠。
30分フルタイムドローという結果に終わった試合後、観客席から自然発生的に小峠の名前がコールされ続けた事こそ、彼が観客のハートを掴む何よりの証拠になった。
その後、『TEAM NOAH』は他団体の選手達と闘う機会が増えていく。
小峠も、自身が主戦場としているJrヘビー級ではなく、ヘビー級の選手と対峙する機会がNOAHのタッグリーグや他団体参戦などで増えていった。
小峠の存在は、同じサイバーファイトグループでありながら一時期はNOAHとの交流が絶えていたDDTプロレスリングとの対抗戦にも火を点ける事となった。
2021年と2022年に行われた『サイバーファイトフェスティバル』の時はDDTファンからNOAHとの対抗戦にアレルギー反応が見られるなど、どこか突き抜けきれなかった対抗戦ムードを、スポーツライクでシンプルな方向に持って行ったのは、積極的に外敵として立ちはだかり潤滑剤として場を回していった小峠の功績が大きい。
NOAH内でのJrヘビー級という括られた枠組みから、『TEAM NOAH』を通じて無差別級としての積極性を発揮していった小峠だからこそ、今回潮崎の代打として急遽『N-1 VICTORY』に参戦することは、無差別級でならした小峠篤司の存在感を見せつける絶好の舞台になり得るのではないだろうか?
私はそう信じている。
まとめ
誰かに対して、立場や困難や危機を超える形で手を差し伸べる。
それは、小峠篤司の持つ優しさなんだと私は思う。
その優しさが仇になっているという指摘も、もしかしたらあるのかもしれない。
けれど、誰かのために立ち上がる・引き受ける姿こそ、小峠の持つ唯一無二の強さなんじゃないかと私は感じている。
ヘビー級の選手が中心の『N-1 VICTORY』で、Jrヘビー級の小峠は階級面で不利を強いられている。
レギュレーションの違いこそあれど、過去には征矢学(2021年)、2022年『火祭り』準優勝の稲村愛輝(2023年)ですら公式戦全敗を喫したこともあるリーグ戦だ。
きっと、1勝を挙げるにも困難が伴うだろう。
それでも、リーグ戦の優勝予想云々を抜きにして、一番公式戦の行方に注目したくなる魅力が、小峠篤司にはある。
実際、彼の代打参戦が決まってから、『TEAM NOAH』の仲間だけでなく、先輩やトレーナー、ファンまでもが小峠の活躍に期待しているではないか。
小峠にとって、「顔じゃない」ではなく、「顔になる」かもしれないN-1。
小峠篤司に注目せざるを得ない2024年の夏が、不意に訪れた。
私はこの約1ヶ月を楽しみにしたい。ワクワクしてるよ。
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