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友達を沢山誘おうと思った話~チケット代値下げ狂騒曲~


はじめに

先日、プロレスリング・ノアが2024年12月以降の大会チケットの料金改定を発表した。


物価高と言われ、値上げが常の現代において、このチケット料金改定は値上げを指すものと思われた。

しかし、今回ノアが発表したのは、チケット料金の各席種1,000円値下げという施策だった。

◎2024年11月30日までのチケット料金例
S席 9,000円
A席 7,000円
B席 5,000円

  
◎2024年12月1日以降のチケット料金例
S席 8,000円
A席 6,000円
B席 4,000円

※会場または大会によって同席種でもチケット料金が変わる可能性がございます。
※サービス向上のためチケット料金が変動する場合がございます。


コロナ禍を経て、プロレス観戦におけるチケット代は確実に上がっている。

特に統計を取っている訳では無いけれど、私自身、生観戦数をカウントするようになった2017年~2018年頃から今現在まで年間100大会以上のペースで観戦している中で、コロナ禍前は4,000円台の座席を設定している団体が今よりも明らかに多かった。

しかし、今では最低でも1大会あたり5,000円は出さないとプロレス生観戦が出来なくなっていて、後楽園ホールの興行に限っても、客席の隣同士を空けていた時期を脱して、コロナ禍以前に近い料金設定に戻している団体は非常に少ない。

定期的に後楽園で興行を行っている団体でも、客席がフル仕様となったタイミングとほぼ同時期にチケット代をコロナ前の水準に戻したのは、私が把握してる限り、全日本プロレス、大日本プロレス、DDTくらいだ。
(その他だと、DRAGON GATEも4,000円台の席が復活している。)

スターダムも、エグゼクティブプロデューサーを任されていたロッシー小川が2024年2月に契約解除となり、岡田太郎社長が本格的に先頭に立つようになった2024年春以降は、後楽園でも3,000円席を用意したり、平日全席5,000円興行も開催するようになった。
コロナ禍以降に本格始動した団体だと、GLEATやマリーゴールドも、4,000円台と比較的安価な席が後楽園で用意されている。

ただ、これらの団体でも、コロナ前には当たり前だった2,000円台の立見席やバルコニー席は、全席完売でもない限り開放される事は無くなってしまった。


今回のノアだけでないけれど、何もかもが値上げしていく時代でチケット代を下げたり、全日本プロレスのように安い席を維持したりする決断は中々出来ない。
その判断を手放しで喜んで良いのか、私は思わず不安になったほどだ。


ノアファンやプロレスファンを始めとして好意的に捉えられたノアのチケット料金値下げ発表だが、今回の件に対して一部からはこんな批判も見かけた。

「値下げしたところで人が来るとは限らない」

「値下げしたところで売上が上がるわけではない」

「値下げしても、既存客が安い席に流れるだけから変わらないだろう」


個人的には相当ガックリ来た。

チケットが値上げした話なら未だしも、「スタッフはちゃんと生活していけるのか?」みたいな方向性以外の値下げ批判が出たのは、正直言って予想外だった。

ガックリ来たのは、「何をやっても揚げ足取って批判するんだな」という落胆や底意地の悪さに対してではない。

今回の値下げのような、消費者にとって前向きなニュースにまで諦観や憂慮が述べられてしまう、今の日本の景気の悪さに私はガックリ来たのだ。


ハッキリ言って、こういうニュースも後ろ向きに捉えるようじゃ、景気なんて絶対良くならねえよ。
値下げしてでも人に来てもらえるよう、大々的にアクションを起こした側の決断が揶揄されてしまう事も含めて…。


そんな批判も含めて諸々思う事があったので、私はGmailに下書きした文章をスクリーンショットして、Xに"個人的なチラシ裏の御気持ち表明"という形で投稿したところ、私も想定していなかった程の反応をいただいた。


正直な話、このスクリーンショット4枚だと書き切れずに削った箇所もあったので、チラシ裏に書いた自分なりの御気持ちを、今回noteに清書してみた。

値下げしたから動員が増えるんじゃないんだ。
この値下げを口実に、動員を増やしていこうぜ。


チケット代値下げは、人を誘うハードルも下がる

チケット代金が安くなれば、動員は増えるのか?売上は上がるのか?

その辺りのビジネスだとか実情だとかは、中の人じゃないから私には分からない。
けれど、しがないプロレス好きな私の中で確実に言えることがあるとしたら、ただ一つ。

それは、【人を誘いやすくなる】ということだろう。


「後楽園ホールのオレンジ色が目立ってるな。でも、今来てくださってる皆様がお友達を1人でも連れてくれば、ここは満員になる」


ある選手がメイン後にマイクを握った時に何度か口にしていたフレーズだけれども、この「お友達を1人連れてくる」というアクションは、簡単なようで難しい。

例えば、知らないバンドやアイドルやジャンルに関して、他者から「現地に行かない?」と誘われたとして、それが面白そうであったとしても、チケット代が自分の出せる範囲より高かったならば、反射的に触手は伸ばしにくい個人的実感がある。

だからこそ、そういう時にチケット代が安めだと、御試し価格な点で非常に有り難かったりする。


ここで、私の実体験を一つ紹介したい。

プロレスリング・ノアで、2023年秋に始動した『MONDAY MAGIC』というブランドがある。


好評に好評を重ねて、2024年10月からはseason3が開幕するノアの人気ブランドだが、『MONDAY MAGIC』はseason2までチケット代の最安値が3,000円と、ノアの通常興行より最低でも2,000円安く観戦できてしまうメリットがあった。

私は、知っているプロレスファンの方とプロレスの話題になった時に、「『MONDAY MAGIC』のチケット代が安いんですよ!」というポイントを、NOAHに興味を持っている方や、普段NOAH観戦してない方とかに飲み屋とかで積極的にプレゼンしたことがある。
この内容を話した時に、大体「えっ?こんなに安いんですか?」という反応になり、最終的に現地まで来てくださった方が複数名いらっしゃった。
(ありがとうございます!)


誘われる側としても、未開拓ジャンルのチケット代は安い方が有難い。

私は2024年に入ってから、プロレスだけではなくライブにも行くようになった。
その中で、ライブハウスで会った方がやっているバンドのライブに誘われたり、プロレスファンが定期的にツイートしていたアイドルグループのライブに誘われる機会があったのだけど、チケット代は『MONDAY MAGIC』同様約3,000円と安かった事もあり、実際会場に出向いたことがある。

私にライブをプレゼンした人達は、結果として、私という動員を1人増やすことにも成功しているのだ。

私にLOVEBITESを薦めてくれた実父
私に「こういうライブがあるんですよ」とアイドル(Merry BAD TUNE.)のライブを薦めてくれたフォロワー様のアドバイスで、新規特典チェキ券を行使した時の残り香…
中野のライブハウスでお会いした人から「翌日に自分達のライブがある」ことを薦められ、訪れてみた西東京のライブハウスにて


何より、私はライブの値段を見て「プロレス観戦より安いじゃん」と驚きを隠せなかった。

その時に、私なりに確信した事がある。

「人は、自分の好きな趣味に出す金の基準より高いものに対して、多少なりとも手が出しにくくなるのではないか?」という自説だ。


自分の好きなジャンルで出す金額より高いものには、中々手が出ない。

スポーツ観戦、ライブ、演劇、ミュージカル、演芸、テーマパークetc…。

娯楽が溢れている現代社会で、時折気になってしまうことがある。

「人が娯楽を楽しむ上で、1回あたりに出せる金額の上限って、一体どれくらいまでなのだろうか?」と。


勿論、行く回数や娯楽にかける費用は人それぞれ異なるし、娯楽によって設定されているチケット代や入場料にも幅がある。他には、前で見たいor後ろで見たいという好みの問題も大きいから、一概には言えないと思う。

ただ、その娯楽を回数だとか年数だとかで継続的に訪れるようになると、自然と「安い席でも、1回あたりの観戦で払えるのはここまでだな…」という上限は自然と決まってしまう感覚がある。

私の場合、それはプロレス観戦になってくるのだけれども、娯楽だけでなく生活する上でかかる費用や、娯楽に行く頻度とも勘案しながら決まってくるものだ。


だからこそ、自分の知らないジャンルに対して出せる金額は、いつも出しているジャンルの金額より更に限られてくる実感がある。

自分の興味や関心、「これは行った方が面白そうだな」という勘などが強く働いた場合は出せたりするけれど、自分の関心が薄い段階で他ジャンルのライブなどを薦められた時に、私が普段プロレスのチケット代で出している5,000円よりも高いライブには正直行きづらい。

逆に、普段趣味に出している金額よりもチケット代が安ければ、「御試しで行ってみようかな?」という捉え方にもなりやすいので、結果的にチケットを買っている事が多い。

ジャンルの事を知らないからこそ働いてしまう警戒心や、いざ面白くなかった時のガッカリ度合い、「ちゃんと元を取って楽しめるかな…」という不安に冒険していくリスクも、金額が高いと大きくなってしまうからこそ、御試し価格は大変ありがたいのだ。


他の娯楽よりも、チケット代でハンデがあるプロレス観戦

今は色々な娯楽が溢れる世の中にあって、プロレスも他の娯楽と勝負しなければならないんだということを、ライブとかに行くようになって強く実感し始めた。


コロナ禍以降の今現在で、プロレス観戦する時にかかる1大会あたりのチケット代が大体5,000円くらいだとして、会社や会場規模などの差があるとしても、お笑いライブや寄席やライブなどは下手したら5,000円以下で見れてしまう。
その点で、プロレス観戦は他の娯楽よりも圧倒的にハンデがある。


勿論、他の娯楽との競争力を理由にした安易な価格引き下げが良いとも思わない。

ただ、プロレスの場合は都内に限定してもほぼ毎日興行をやってい故に、注目興行や団体に限定しても、例えるなら【好きなバンドの全国ツアーが年中行われている】感覚に近いものがある。


バンドやアーティストとかだと、ツアーをやっている時期にライブが固まったり、都内とかで定期公演してる人でも、月の開催頻度はプロレス団体の1ヶ月間の都内興行と回数変わらないか、或いは少ないんじゃないかという印象だ。
バンドのライブなら多少チケット代が高くても行けるだろうけど、毎月やっているプロレスにこの感覚を当て嵌めると正直しんどい…。

そうなると、気軽さという点でチケット代は障壁にもなり得る。
だから、チケット代が1,000円下がるだけでも、行きやすさは大分変わってくるものだ。


まとめ

個人的に、チケット代値下げは「プロレスを見たことのない方にも来てほしい」、「財布に優しい」だけではなく、「現地に行ってる人が、他の人を誘って連れて行くハードルが下がる」効果もあるんじゃないかと思っている。

「プロレスを知らない・見たことがない」方を現地に御誘いする機会があるとして、その際に団体や選手の陣容、雰囲気と並んで、チケット代は結構重要なものだから。


「値下げによって動員が増えるわけではない」というのは一理あるんだろうけど、私の中で間違いなく言えるのは、動員を増やすのは客数を数えて一喜一憂してる人ではないという点だ。
他者に好きなものをレコメンドしたり、好きなものを推してる姿が楽しそうだったりするファンの存在が、他者の興味を惹きつける。

空席をつつくだけなら誰だって出来るんだ。


この記事で最終的に私が言いたいことは、「現地行こうぜ!配信見ようぜ!友達たくさん誘おうぜ!」に尽きる。

ファンが先ず気にするのは動員や売上ではない。目の前のものが面白かったか否か、満足できたか否かだと私は思う。

そして、楽しいと思っているものを無理強いすることなくレコメンドして、誘って、同じ楽しみを共有できる人を増やしていく。
人を誘うのは簡単では無いけれど、値下げは誘う口実として大きい道具なのだから…。


そして、他者に好きなものをレコメンドしてる人は、誰しもカッコいいし、尊敬しかない。

私もああいう人になりたい。頑張ろう…!
(プロレスは面白いぞ!!プロレスリング・ノアも面白いぞ!!!)

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