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"真ん中"と"横道"のジャンクション~2022.10.12『樋口和貞vs青木真也』~
はじめに
Q:青木選手が思う「俺たちのDDTを見せよう」というものはどうあってほしい?
「やっぱり、強さと言うか、強いからこそ面白い事も出来るし、唯一無二なものを見せてほしいんですよ。本当に凄いことやってると思うし、その意味では…。」
「結局、僕、思うんですけど、選手自身が自分たちは強くないみたいなコンプレックスを抱えてるんですよ、多分。他の団体に比べて。でも、そんなことなくて。みんな、僕が格闘技やって触れあってきた強いとされる人たちと同じくらい、それ以上強い訳ですよ。竹下にしても上野にしても。でも、何かどっかに『俺たちが…』って言うのがあると思うんですよ。それが無くなった時に、ズドーンと行くと思うんですよ。」
「強くてうまいんですよ。技術も体力もあるんですよ。ただ、自分を認めてあげれてなかったり、自分にブレーキをかけてる。どっかに『どうせ俺なんて…』とか『どうせ俺たちあれだからな』っていうのがあると思うんですよ。じゃない。オマエたちは"メジャー"なって思いますよ。」
上述のやり取りは、2022年8月にDDTプロレスリングで行われた『樋口和貞vs遠藤哲哉』を前に、青木真也のインタビューで生まれたものである。
2022年6月、サイバーファイトフェスティバル2022で起きた、KO-D無差別級王者・遠藤哲哉の失神KO。
遠藤の返上により空位となった無差別級王座を、自らの手で掴み取った樋口和貞。
そんな一連の流れに対して、フリー参戦中の立場から青木がコメントしたのが、冒頭のインタビューである。
質問にある「俺たちのDDTを見せよう」とは、遠藤と樋口のマイク合戦の中で発せられた言葉だ。
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インタビューの最後には、「それらの成長が見えた暁には、青木さんがKO-D無差別級王座に(挑戦)…」という質問が青木に対してなされた。
「俺は横道にいれば…。俺、あんのかなあ~。あればいいですけどね…。」
『いつでもどこでも挑戦権』が生んだドラマ
上記のインタビューが公開された前後に、DDTから、とある発表がなされた。
『いつでもどこでも挑戦権』(以下:いつどこ権)の復活である。
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・保持している選手は、行使の宣言をすれば「いつでも」「どこでも」KO-D無差別級王座に挑戦できる。
・通常の試合の中で3カウント・ギブアップなどで敗れた場合、挑戦権が勝者に移動
これまで、高梨将弘、大家健、佐々木大輔、遠藤哲哉などがKO-D無差別級王座初戴冠を果たすなど、DDTの名物アイテムであった『いつどこ権』
しかし、2020年以降は、同権利が大会内で撒かれることがなかった…。
2022.8.14、約2年半振りに復活した『いつどこ権』を獲得したのは、青木真也。
https://www.ddtpro.com/results/18634
どのタイミングで青木が同権利を行使するか注目された中、事が動いたのは約2か月後。
2022.10.12 DDTプロレスリング後楽園ホール大会だった。
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この日のメインイベントは、KO-Dタッグ王座戦・『樋口和貞&吉村直巳vs佐々木大輔&KANON』
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シングルとタッグの二冠王者である樋口は、序盤から挑戦者チームに右腕を攻められる展開に…。
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終盤のロープエスケープでは、腕を極められた状態でロープを噛みつく場面も。
![](https://assets.st-note.com/img/1665860620039-it1ADOQHe2.jpg?width=800)
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— DDT ProWrestling (@ddtpro) October 12, 2022
KANONは必殺のコブラツイストを決めながら樋口の左腕をロック! さらにその体勢から右腕にはアームブリーカー! 両手を固められて絶体絶命の樋口だが、ロープを噛んでエスケープ!
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個人的に、2022年に見たタッグマッチでも上位に入る好勝負だった一戦は、樋口がブレーンクロースラムでKANONから勝利し、王座防衛。
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試合後、吉村がマイクで締めようとするタイミングだった…。
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— DDT ProWrestling (@ddtpro) October 12, 2022
辛くも勝利したハリマオが大会を締めようとしたその瞬間、そこに現れたのは黒いショートタイツにレガース姿の青木真也! 青木はこのタイミングで“いつでもどこでも挑戦権”を行使!
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「挑戦…!」
この一言により、KO-D無差別級王座戦・『樋口和貞vs青木真也』が急遽実現する運びとなった。
先述した青木の言葉を借りるなら、"メジャー"だと評した樋口と、"横道"にいた青木が、頂点をかけて交わる事になったのである。
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『樋口和貞vs青木真也』
タッグ王座戦の激闘直後に実現した一戦は、一方的な展開となった。
メインで攻められ続けた樋口の右腕を、青木は容赦なく攻め立てたのである。
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体格差では圧倒的に樋口が有利なはずなのに、的確に右腕のみを狙って試合を掌握する青木の姿からは、そのような身体的不利を一切感じさせなかった。
寧ろ、青木の方が大きく見える時もあったほどである。
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追い込まれる樋口に対して、次第に強くなる樋口への声援。
この日は声出し応援が可能な大会となっていたが、メイン以上に、樋口への声援は強さを増していった。
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終盤、青木がオクトパスホールドから樋口の右腕と首を極めた瞬間、悲鳴交じりの声援がこだまするも、何とか樋口もエスケープ…。
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勢いそのままに、飛びつき式腕十字を狙う青木だったが、樋口がブレーンクロースラムで反撃。
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立ち上がれない青木を起こすと、樋口が青木に強烈な頭突き…!
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直後にレフェリーストップが宣告されて、勝負あり。
ダブルヘッダーかつ難敵というキツい条件を、樋口は見事に乗り越えてみせたのである。
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この瞬間、私は思った。
「今年の樋口は、プロレス大賞のMVPないし三賞に入らなかったら嘘だ」と…。
今年の樋口が、プロレス大賞のMVPか三賞に入らなかったら嘘だよ、マジで
— レンブラント🍻🤼🎸🍴🍹 (@rembrandt_kbs) October 12, 2022
ちょっと、この内容叩き出してるの凄いから#ddtpro
KO-Dトーナメント優勝&KO-D無差別級王座戴冠、遠藤哲哉や竹下幸之介からの王座防衛、タッグ王座戴冠、今回のダブルヘッダーと、約4ヶ月で一気に賞レースの筆頭候補に立ったのだ。
そこに、疑いの余地はないと私は思った。
青木真也がいつどこを取った時から…そして試合中も緊張感が半端ではなかった。
— 樋口 和貞 higuchi kazusada (@kazusada185cm) October 12, 2022
強烈でした。
しかし自分の中で一つ何かを乗り越えれました。
青木さん、ありがとうございました。#ddtpro#wrestleUNIVERSE pic.twitter.com/171826XNMf
強いチャンピオン。おめでとうございます。 https://t.co/8k6TPgr7Jd
— 青木真也 Shinya Aoki (@a_ok_i) October 12, 2022
10.12 後楽園大会 試合後コメント📢
— DDT ProWrestling (@ddtpro) October 12, 2022
樋口「DAMNATION T.Aから『どんな手を使っても勝つ』気持ちを勝手に教わった気がする。青木さんには緊張感を与えてもらって。ガッツリやってくれて昔を思い出せた。最後に喝入れてくれた坂口さん、これで23日は全てを乗り越えた上でリングに立てる」#ddtpro pic.twitter.com/BqyPOC82RK
まとめ
「完敗です、完敗。強かったっすね。樋口も、遠藤も、竹下も、上野も皆強くて。彼らは、自分が強いことにもっと自信を持って、このプロレス界、格闘技界の真ん中を歩いてほしいなって思いますよ。本当に今日は、良い戦いをさせてもらいました。ありがとう!」
「(今回の挑戦については)そうですね。ここしかないかなって思いましたけど。ハードマッチの後で、竹下戦の後って事を考えても、ここしかないかなと思いましたね。強かった。」
10.12 後楽園大会 試合後コメント📢
— DDT ProWrestling (@ddtpro) October 12, 2022
青木「完敗です。樋口、遠藤、竹下、上野。みんな自分が強いことに自信を持ってプロレス界、格闘技界の真ん中を歩いてほしい。本当に今日は良い戦いをさせてもらいました。ありがとう!」#ddtpro pic.twitter.com/4qAejeGhzB
試合後の青木のバックステージコメントは、2022年8月のインタビューと変わらない、現世代に対するエールに満ち溢れていた。
今回の『樋口vs青木』は、タッグ王座戦の激闘から地続きのシチュエーションで実現した事もあり、その場で流れを把握している観客達が共有できる熱を含んでいた。
恐らく、当初から青木の挑戦が決定していて前哨戦を重ねていたなら、生まれなかった方向の熱だろう、と私は感じた。
まさに、タイミングが重なりあって生まれた好勝負ではないだろうか?
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個人的に、『いつでもどこでも挑戦権』が復活するまでの約2年間(2020年~2022年現在)で、DDTのプロレスは大きく変わったと思う。
所謂コミカル的な要素は残しつつ、アスリート的な部分だとか、闘いの部分だとかが色濃く反映されるようになり、KO-D無差別級王座を始めとした各王座の格も上がっていった。
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デビュー当初の若手選手が、コミカルマッチの人数合わせに無理やり組み込まれるケースが明らかに減り、若手が火花を散らす試合も増えた。
(岡谷秀樹、小嶋斗偉、高鹿佑也、石田有輝etc)
2022年8月にHARASHIMAとのシングルでデビューを果たした正田壮史なんかは、その象徴的存在と言えるかもしれない。
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その一方で、『いつでもどこでも挑戦権』に代表される、【自らの知恵と勢いで試合を制する】ような、度肝を抜く戴冠劇はあまり見られなくなってしまった印象がある。
だからこそ、今回の『樋口vs青木』が実現した意義は非常に大きいと、私は感じたのである。
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2年半ぶりに復活した『いつでもどこでも挑戦権』は、今回の青木の挑戦を以て消滅し、再び保持者0という状態に戻った。
現時点で、どのタイミングで『いつどこ権』が撒かれるか分からないけれど、叶うならば、『いつどこ権』が定期的に流通する展開が観たい。
今回の『いつどこ権』を通じて、"横道"からだとしても"真ん中"を狙うカッコ良さを、青木真也が魅せてくれたのだから…!
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