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京橋でクスッとできる ギャラリー"浅田政志 ぎぼしうちに生まれまして。"

浅田政志氏のことは、数年前にTVで知った。様々なシチュエーションを浅田家の家族全員で撮り写真集にしたものが話題となり、その後多くの家族写真を撮っている。

2020年には二宮和也氏が浅田政志氏を演じた映画「浅田家!」で彼の経験や人となりを深く知ることになった。

浅田氏は、日本写真映像専門学校研究科を卒業後、スタジオアシスタントを経て独立。写真集「浅田家」で木村伊兵衛写真賞を受賞した。映画では専門学校卒業後、写真に向き合えない期間があったが、写真を始めるきっかけとなった「家族の写真」を撮ることを決意し、消防士、戦隊ヒーローものなどに扮した写真を撮り続けた。写真集はたかが家族写真、と捉えられることもあった。しかしどれも家族の会話や関係性が感じられ、ちょっとクスッと笑える、そんな写真がジワジワと人々から共感を呼んだ。

展示会「浅田政志 ぎぼしうちに生まれまして」では、ギャラリーがある京橋周辺の人々の暮らしから見えた「家族」や「時間」が語り合った人々の写真、言葉、アートで表現されている。


1.ぎぼしうちの粋な空気がそこにある

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江戸時代には幕府直轄の橋が京橋、日本橋、新橋にあり、他の橋と区別するために欄干に「擬宝珠」(ぎぼし)という飾りつけられ、橋の内側エリアを「ぎぼしうち」と呼んだ。このエリアは東京の中心として経済、交通、文化の中心であった。現在では、再開発が進み暮らす人々は少なくなったが、展示では時代の変化を受け入れながらも自分たちの役割を理解し、未来へ向かって前進する人々の様子が描かれている。街の人々は古くから東京の中心として栄えたこの街に決しておごることなく、どちらかと言うと達観している。大量生産やデジタル化により、衰退していく個人商店。家族にとってなにが幸せかに悩み、行く先を見いだしている。その有り様はどこか潔く「粋」を感じる。

2.会話や時間を切りとった写真

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歴史のある家業を引き継ぐ店主の話や、まもなくお店をたたむ家族の話など、写真と言葉で語られている。浅田氏は、話を引き出すのが上手なのだろう。写真に写る人々は、ペラペラとまたはボソボソと自分の想いを語り、時には動きも加えて思い出を懐かしんだりしている。そんな会話のワンシーンがごく自然に写真として切り取られている。

3.どれも心温まり、クスッと笑ってしまう

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浅田氏の写真は、写真を撮られる側の人々がごく自然だ。もっと言うと、自然な感じの流れの中でちょっとおもしろい瞬間の写真だ。人々は撮られることに警戒せず、演技もせず、それは本能的に笑ったり、真剣になっている表情だ。それこそが見る側からするとホッコリしてしまう。帰りの電車の中で思い出して、クスッと笑いたくなってしまう。


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浅田氏にとって、写真集を出版した「赤々舎」との出会いは大きい。映画の中でもこの社長は豪快で、結果的に目利きが凄まじい。浅田氏以外に取り扱う写真集も、ニッチで魅力的なものが多い。

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