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谷口吉生が生み出すシークエンスの真骨頂"東山魁夷せとうち美術館"

先日丸亀製麺でうどんを食べた。丸亀製麺を食べると香川県の旅行を思い出し、谷口吉生氏が頭に浮かぶ。
谷口吉生氏が生み出す建築はとにかく美しい。ニューヨーク近代美術館や最近ではGINZA SIXの設計で有名だが、彼を語る上で香川県の作品は外せない。
谷口吉生氏は、慶應大学で機械工学を学んだ後、ハーバード大学で建築を学ぶ。お父さんもおじいさんも建築家。丹下健三氏の下で学んだ後に独立。
彼はニューヨーク近代美術館以外コンペに参加しないこと、美術館博物館建築が多く、それ以外の住宅設計などの事例がないことで有名である。
香川県では丸亀市の駅前にある猪熊弦一郎現代美術館、そして坂出市の瀬戸内海に面した東山魁夷せとうち美術館を設計している。

猪熊弦一郎現代美術館


猪熊弦一郎現代美術館は谷口氏がよく使うフレームによる設計手法である。これについてはまた今度触れるとして、今回は東山魁夷せとうち美術館について触れたい。


1.想像を膨らませる斜めアプローチ

谷口氏の建物は壁と軒で門構えを構成し、その中で機能やファサードを盛り込み、正対して見ると実に美しい。そんなパターンが多いので、この美術館のように斜めに建物を見るアプローチは珍しい。周囲の樹木に見え隠れする建物は青銅色の石壁面が周辺環境に馴染み、全貌がどのような建物なのか想像を膨らませる。

展示空間

2.美術品を美しく見せるトップライト

展示室は当然撮影不可の為うまくお伝えできないが、美術品の展示空間を知り尽くした空間と言える。トップライトによる柔らかな光によって無機質でもなく温かみでもなく、場所そのものが洗い流されて、作品に没入できる空間になっている。

瀬戸内海と瀬戸大橋を臨むラウンジ

3.瀬戸内を切り取る、この場所だけの風景

控えめなエントランス、階段を含めた吹き抜け、赴くままに進んでいける展示空間、彼の建物では常に魅力的なシークエンスが連続する。美術作品があくまで主役であり、建築はなるべく存在感を主張しない、ただ展示空間以外も実に美しい空間である。階段手摺の金物のディテールひとつも美しい。さらに風景を切り取るのも上手い。ラウンジで座ったときに見える瀬戸内海の広がり、庇の奥行き、視界を遮らないコーナー部の鉄骨柱。東山魁夷氏の祖父の地元であるこの地に作品のルーツとなる自然を美術館と融合させて、見る人の作品への理解が深められるようにしている。

奇をてらわずただ美術作品に寄り添って建てられる美術館は必ずしもコンペ向きではないが、そうであるからこそ貫かれた美術品と建築との向き合い方が垣間見えた。

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