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削ぎ落とされた美しさで都市型リゾートを牽引"アマン東京"

2014年にオープンしたアマン初、都市型ラグジュアリーリゾートホテル"アマン東京"。
母と娘と訪れた。窓から見える景色の中に、娘は自分の通ってる小学校が見えるか探したが、見えないわよ、とあっさり母に教えられていた。

このホテルが入る大手町タワーは、足元に広大な森を再現し、みずほ銀行本店がテナントとして入っている。
初めてアマンが大手町にできると聞いたとき、アマンは島、海、亜熱帯植物なくして成立しないと思っていた。
デザイナーはアマンリゾートの施設を多数手掛けたケリー・ヒル。アマン東京はリゾートホテルのイメージを覆す、装飾を廃したデザインであり、これは「建築そのものは主張しない」という彼の哲学から生み出されている。



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1.ローカリティの追求と敬愛

彼が手がけるリゾート施設に共通するのが、ローカリティの追求。その土地柄、伝統、文化を尊重し大切にデザインに落とし込むことで、訪れる人は自ずとその文化に触れ、休息、安らぎを感じることができる。すなわちローカリティが適切に表現できればビルが建ち並ぶ東京のような都心でもリゾートが成立する。
ラウンジに着くと約30mもの吹抜け空間が出迎える。障子を模した光天井はどこまでも高く、特別な空気感を纏いながらもここが東京であることを再認識する。日本の建築美をそのままに、要素を極力削ぎ落としたディテールに彼の日本建築への敬愛を感じる。


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2.東京の大自然を借景として有効活用

リゾートと言ったら大自然、では都心ではどうする。中まで入れないのでスケール感がいまいちわからないけど東京のど真ん中には、皇居を中心とする大自然が広がっている。その面に対して大胆に開口部を構えて、ベッドにいながらもその東京らしい自然を堪能することができる。加えて高層ビル群もまたここでは心が浄化される風景の一部となる。

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3.必要なデザインとホスピタリティがそこにある

ラウンジも廊下も部屋のアメニティまで一貫して無駄が削ぎ落とされたデザインである。うっかり露出してしまいがちな光源や設備ものも配慮されている。しかしミニマルではなく、質感のあるマテリアル、桟や組手など日本の様式美も随所に感じられ、心が満たされる。これはカタチあるものだけでなく、サービス面においても同じ。客人のニーズに合わせて必要なサービスが提供される。いわゆるリゾート地でなく、このアマン東京に人々は何を求めて来るのかがよく考えられ、緻密に臨機応変に応じられている。

アマン東京の成功を皮切りに世界中で都市型ラグジュアリーリゾートホテルが展開されていった。
一方、オリンピックに向けて慌てて建設されたシティホテルでは中途半端に日本らしさを体現しようとした残念な事例も見られた。
海外の人々には是非アマン東京を訪れ、日本の伝統文化を継承したこのデザインに触れてほしいと思う。このホテルを通じて日本を知ってもらうことは純粋に嬉しいし、この美しい空間を設計した建築家ケリー・ヒル氏にありがとうって伝えたい。



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