池尻移転も目が離せない"KIGI OFS GALLERY"
白金の北里大学近くにあったOUR FAVORITE SHOPが池尻に移転した。
このOFSは、植原亮輔氏と渡邉良重氏によるクリエイティブユニット、KIGIが運営するショップ&ギャラリーだ。ショップでは主にKIGIがデザインやディレクションを手掛ける、食器、アパレル、雑貨などが並んでいる。ギャラリーでは毎回興味深いアーティストの展示を見ることができる。
白金にあった時もそうだが、移転した池尻も246通りから入ってクネクネと進んだ先の住宅街にポツンと現れる。それはまだ皆に知られていないが、自分が密かにお気に入りのデザインを見つけ出したときの感覚に似ている。
1.グラフィックの今、を堪能
ショップに併設されるギャラリーの池尻移転後初回の展示はグラフィックデザイナーの服部一成氏。キューピーハーフなどをはじめとした広告デザインやブックデザインで長く活躍している。
私が好きな画家マグリットの名作「これはりんごではない」をデジタル上でドローイング表現した作品もある。シンプルな直線で厳選されたいくつかの色みで構成された作品の数々。清々しくどんな空間にも合いそうなデザインだ。
KIGIが運営するグラフィックデザイナーたちの作品をポスターにして販売する「POSTERS」でも取り扱われている。同業同士の交流も垣間見える素敵な展示だ。
2.チーズが滲み出るクッキー缶
オンライン販売のみで滅多に直接購入できないのがこのチージィーポッシュ。これは富山の町の洋菓子店ZAXFOXで作られるチーズクッキーだ。この洋菓子店のオーナーがKIGIと出会い、お菓子研究家の福田里香氏と共に試行錯誤を重ねて完成したという。KIGIはクリエイティブディレクションからロゴのカリグラフィー、イラストデザインなどに携わっている。
美味しいと噂に聞いていたが、池尻で特別にショップ販売されていたことから購入した。
幸せなチーズ色の缶を開けるとふんわりとチーズの香りが広がる。絞りのクッキーの表面に広がる立体感、中央の白いメレンゲは見るだけでもその美味しさがわかる。味は言わずもがな、しっかりとチーズが味わえる上にくどくないので、どんどん手が伸びてしまう。缶のイラストにはネズミも潜んでいてこの美味しいチーズクッキーを狙っている。
3.その瞬間を楽しむフラワーベース
KIGIのデザインの真骨頂は、デザインされた状態で完成するのではなく、人々が使う段階でデザインが完成する。それは光や鏡面、影などを巧みに活用した高度なテクニックであり、その代表作がフラワーベースだ。花瓶型のビニールパックだが、水を入れると光の屈折により、立体的で幻想的な花瓶になる。江戸切子のような繊細な文様があったり、おはじきのデザインにも似た懐かしさもある。グラデーションの色みがかった水にも見えるものもあり、フラワーベースに生ける花の組み合わせを考えるのも楽しい。
お菓子や食器、洋服など境目なく、クリエイティブの根本からクライアントと対峙して高いクオリティのデザインを世に出し続けるKIGIから目が離せない。
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