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~不安にとらわれないために~第3章 心的エネルギー水準

心的エネルギー水準という概念は、フランスの心理学者ジャネらが提唱していました。
その概念のエッセンスをお話しします。

図で見た方が理解しやすいので、図1を見て下さい。

心的エネルギー水準の図_横1

これは池に水が溜まっている状態です。
この水の量が『心的エネルギー』を表しています。『心のエネルギー』です。
この水位(水の量)は、気を使い過ぎたりや気疲れすることで下がっていきます(図2参照)。すると、水底に隠れていた岩が現れてきます。この岩が不安の種になると考えてください。
この図2は、心のエネルギーが下がったために不安にとらわれていることを表しています。元気いっぱいのときは全然気にならなかったことが、なぜか不安に思えて頭から離れなくなる感じです。
そして、不安にとらわれている状態を根本的に改善するには、池の水位を上げること、つまり心のエネルギーを上げることが必要になります。水位が上がれば、この岩も水底に沈み、気にならなくなるというわけです。

では、心のエネルギー量が下がっている状態を上げるにはどうしたらいいのか?
身体の例えで説明していきます。

図1の水の量を『身体のエネルギー』と考えてみましょう。

心的エネルギー水準の図_横1

そして、風邪をひいてしまい体力的にグッタリの状態になったとします。図2です。
さて、体力を回復させるためになにをしますか?
風邪薬を飲むのは一つの方法です。熱が出ていたら解熱剤を服用するでしょう。しかし、薬を飲んですぐに『身体のエネルギー』である水位は上がるでしょうか?熱が下がったのであれば楽にはなるでしょうが、根本的に回復したとはいえないでしょう。
やはり、安静にして寝ているのが第一でしょう。そして、消化のよい栄養のあるものを摂取することです。なんにせよ、安静が最優先。そうすれば、人間に本来備わっている自然治癒力が発揮されて、少しずつ体力が回復していきます。徐々に水位が上がってくるわけです。
動物もケガをしたときは、じっと動かずにいます。これも自然治癒力で回復するのを待っているのです。じっと待てるのは本能のなせるワザなのでしょう。
つまり、体力を回復させるには『動かずに、(自然治癒力で回復するのを)待つ』。

さて、心的エネルギーに戻りましょう。

心的エネルギー水準の図_横1

不安にとらわれて心的エネルギーである水位が下がっている状態が図2です。
体力を回復させるときと同じように、『動かずに、(自然治癒力で心が回復するのを)待つ』ことができれば、水位が上昇して図1の状態になります。
しかし、動いてしまうと水位は上昇せずに図2の状態のまま。穴の開いたバケツに水を注いでも溜まらないかのごとくです。ここでいう『動く』とは「不安が頭から離れなくなる」「不安がずっとループして止まらない」という状態。不安に意識が向いています。
さて、前の章の最後で、不安について考えないためには、不安以外に意識を向ければいいといいました。
どこに意識を向ければいいのか?
ズバリ、『心のエネルギー量』に向けましょう。
フォーカスすべきは『心の水位』です。

『心のエネルギー量』に意識を向けることで、「不安になるのは、心のエネルギー量が低いのが原因だ。落ち着いて心の水位が上昇するのを待とう」と思えるようになり、不安へのフォーカスが外れます。不安については見て見ぬふりをして、心の水位に意識を向けて上昇するのを待つ。『動かずに待つ』ですね。
そして、心の水位が「60%」「70%」「80%」という感じで上昇していけば、今まで不安に感じていたことが、いつの間にか「どうにかなるか」とか「なんであんなに不安になっていたのかな」と思えるようになってきます。または、不安への対応策を冷静に考え、行動にうつせるようになるでしょう。

ただし、フォーカスを不安から心のエネルギー量に向けるには、まず不安にとらわれていると自分自身で気づけなければいけません。不安がループして焦っている真っ最中にです。また、心のエネルギーが下がっていると自覚できるかどうかも問題になります。
次の章では、そのカギとなるメタ認知を説明します。


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