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クロ現「邪馬台国はどこ?」を見て

7月4日放送のNHKクローズアップ現代で、「邪馬台国はどこに?九州説・近畿説」をご覧になった方もいるだろう。
吉野ヶ里遺跡で発見された石棺墓の話題をきっかけに、九州説・近畿(畿内)説双方の学者が持論を述べるという内容になっていた。
九州説は佐賀女子短大名誉教授の高島忠平さん、近畿説は桜井市纏向学研究センター長の寺沢薫さん。ともにそれぞれの説の代表格として知られる。

内容自体は、石棺墓に刻まれた印を天文学者も交えて検証するなど、新しい研究も紹介し、それなりに面白かった。
番組サイトでも、「両者譲らぬ邪馬台国論。その根底にあるのは『自分たちの国がどうやって成り立ち、ルーツがどこにあるのかを知りたい』という探究心です。考古学のデータと文献の解釈を照らし合わせながら仮説を立て、議論を深めることで古代日本の実像に迫っていく―このことは、今を生きる私たちの社会のあり方を考えることにもつながっていると、取材を通して感じました。」とバランスを取りながら現状で言えることを上手に伝えていたと思う。

ただ違和感を覚えたのは、そもそも纏向遺跡が「3世紀の遺跡」という紹介だ。
昔から学者の間でも意見が分かれるところで、そのことは考古学ファンなら大抵の人が知っている。

近年、関川尚功さんや奈良県立橿原考古学研究所の坂靖さんなど、纏向遺跡の発掘・調査研究を長年行ってきた、いわば「かつての身内」の方々が纏向遺跡は邪馬台国ではないと主張し始めている。
加えてintcal20など、科学的データが突きつけるのも「纏向は邪馬台国時代に合致しない」だ。
その意味では大きなパラダイムシフトが起きているといってよい。

なのに多くのマスコミは、依然として従来通りの「纏向は3世紀」を垂れ流し続けている。
しかし肝心の”考古学データ”そのものに対する検証が、きちんと行われてきたわけではない。
むしろその(畿内派に都合のいい)データに、マスコミが踊らされてきた歴史が50年続いてきたと言い換えてもいい。

今回の放送では、(内容は良かったんだから)そっちもアップデートしようよ、と改めて思った次第。

追伸:
NHKさん、どうせなら「徹底討論!畿内(近畿)派 vs. 九州派 」とか「纏向は3世紀or4世紀?」というテーマでシリーズ化してはいかが?


★見出しの画像は、masuno_shotaさんの「みんなのフォトギャラリー14」を使わせていただきました。ありがとうございます。


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