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好きな人はいつまで経っても好きな人。

もう一緒にいてはいけないと別れた人と会わなくなってからもう1年も経っただろうか。わたしは4年ぶりにできた彼氏とそろそろ1年が経とうとしていて結婚も考えるくらい今がとても幸せだった。そのおかげで彼のことももう自分の中で吹っ切れた気がしていた。だから島に移住すると決まった時、最後に彼に会って卒業証書をもらいたくて久々に会いたいですと連絡をした。

いつも通り仕事終わりに待ち合わせて彼の行きつけのお店に連れてってくれる。彼がいつも後輩の中でわたしだけを特別に行きつけのお店のマスターや常連さんに紹介してくれるのが嬉しかった。お互いこの頃の近況報告なんかをして、1年も会ってなかったのが嘘みたいにただただ楽しい時間を過ごして気づけばもうすぐ終電の時間。間に合う電車に乗って、でも名残惜しくて彼は終電が少し遅いのでわたしの終電に途中までついてきてくれる。

最後のお別れは品川駅のホーム、見つめ合う2人、涙があふれる。言葉なんていらなかった、マスクをそっと外してくれて大好きだった優しいキス。もうすぐ出発しますの駅員さんのアナウンスで、行っておいでと頭を撫でて送り出してくれる、たぶん終電を逃したら前みたいにホテルに行けちゃうんだろうけど今日は卒業証書をもらいにきたという強い意志が相手にも伝わっていたんだろう。涙を流しながら駆け込んだ終電出発1分前。ドラマみたいな一瞬の出来事だった。

泣きながらおうちに帰ったら仕事終わりになぜか美味しいペペロンチーノの作り方のYouTubeをみている彼氏がおかえりと迎えてくれた。もうそのほのぼのした光景に拍子抜けしてつい笑ってしまい涙はいつの間にか止まっていた。わたしはこっちの未来を選んだんだ、これでよかったんだな。

たぶん彼はこれから先一生結ばれなくてもずっと好きな人なんだと思う。
この気持ちと思い出をそっと心の中にしまって生きていく、こうやって人は大人になるのかもしれない。
この日はいつもより温かい気持ちですやすやと眠りについた。


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