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ずーっと恋をしている。

出会ったのは6年前、大学を休学してオーストラリアに留学していた時のこと。初めて出会った日からたぶんわたしは彼に惹かれていたんだと思う。1つ年下、おしゃれでバスケが上手でバンドが好きで歌が上手で、子犬みたいに人懐っこい性格の彼。

初めてちゃんと話したのはみんなでサーファーズパラダイスでサーフィンに向かうトラムの中。日本の通っている大学が近いこともあり、話が最初から盛り上がりすぐ意気投合した。とっても感覚の合う子だと思った。留学に来てまだ心の許せる友達のいなかったわたしにとっては、大学の男友達のように何も気を使わず自然体でいられる彼といるのがとても居心地が良かった。大学の男友達はわたしのことを男の友達と同様に扱ってくるけど、彼はいつもは対等に兄弟みたいにふざけてくるのに、要所要所で女の子扱いをしてくれるのが好きだった。

一緒に買い物にゆけば、持ってみこれ重いからと言われ、持ってみたらじゃあそのままよろしくなんてふざけてきて、わたしがむーってしていると、なんてねと言って結局すっと荷物を全部持ってくれる、そんな子だった。何もなくてもテンポが合うから一緒にいて楽しくて、でも不意に女の子としてわたしが女の子としてしてほしいことをピンポイントにしてくれるずるい子だった。いつも一緒にじゃれあっていたから周りからは付き合ってるの?なんて言われるくらい仲良しだった。1回酔っ払った勢いですきと伝えたことがあったのだけど、もう日本帰るし留学先で彼女は作る気ないんだとさらっと断られてそのあとも何事もなかったようにいつも通り過ごして彼は帰国していった。

彼とは留学以降、不定期に連絡とったりたまに会ったりしていたが、しばらく会ってない時期が続いていて、そんな時にわたしが島に移住をしたらその時の留学仲間の男の子2人で遊びに来てくれることになった。到着してのっけからはしゃいでくれる彼、わたしと一緒で感情を素直にそのまま表現する子だからとっても嬉しくて、2人であの6年前に戻ったみたいにじゃれあっていた。自然や海で過ごす時間が好きだったり、食事の好みが似ていたり、とにかく全ての感覚やテンポが合うことを再認識した。

東京に帰ってしまう前の最後の日、星が見えそうだったので居酒屋のあとビーチ行こうよって、コンビニによって缶ビール片手に向かう。缶ビールが1本なくなろうとしていた時だろうか、もう1人の男の子がトイレ行ってくるわと去って束の間の2人の時間。

最後にちゃんと伝えようと思っていたので「やっぱり好きだなあって思った」とつぶやくように伝えた。すると彼は「本当にずっとおれのこと好きだよね」といつものいたずらっこの笑顔でにやっとした。その返答も笑顔も含めて、初めて恋をしているかのようにあのときと同じ恥ずかしいような胸がきゅっとする感情に包まれた。

2人の時間はたったそれだけだったけれどその旅の中で一番鮮明に記憶に刻まれている。たぶん留学のあのときから、付き合った人もいたし、本当にすきになった人もいたけれど、変わらずずっと彼にはまだ恋していたんだと思う。叶わない恋心はなかなか消えてくれないし、きっとこれからも消えないだろうな。


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忘れられない恋物語

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