私は長くは生きられない

彼女を待っている間も、友人としては遊びたかった。

色んな所へ行きたかった。

まだまだ写真も撮りたい。

普通に、笑い合いたかった。


「やっぱりやめよう」


そんな言葉聞きたくなかった。


ねぇ知ってる?

君が戻って来るって言ってくれた9月以降、遊べなくなっちゃうんだ。

次に遊べそうなのは来年の5月。


その頃、私は生きているのかな?

歩けるのかな。

言葉を話せるのかな。

耳は聞こえるのかな。

味は分かるのかな。

匂いは分かるのかな。


幸せだったときと同じように色は見えるのかな。

もう似た色は分からない。

あの時の海も、夜の海のように深い色に見える。


記憶はあるのかな。

すでに正しい記憶は消えかけている。

いつもは君が思い出させてくれた。

写真も沢山撮ってくれたから思い出せた。

でももう分からない。

次の君の恋人のためにも引きずっちゃいけないと思って半分消した。

泣きながら消した。

だからもう、大切なこと以外思い出せない。


あぁこの指輪。

左手の薬指にはめてくれた時の、君の顔も声も言葉も思い出せない。

もう、指輪を買ったという事実しか思い出せない。

それが“好きになってしまったことへの懺悔”として表れているのかは今の私には分からないが、少なくとも思い出せない事実にに泣いてしまうほど弱っている自分がいる。

指輪をはめる資格が私にはあるのか。

答えは自分が1番よく分かっている。


ばいばい、大好きな人との想い出。

帰ってきてくれる確証があるならば、こんなにも苦しまず、次の新たな思い出に胸を馳せるだろうに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?