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溶解して凝固せよ #9



溶解して凝固せよ 98-05


「見ているもの(観察者)」が「見られているもの(対象)」に本質を影響されるかどうか、ということを考えていた。

アヴァンギャルド芸術を好いている人はアヴァンギャルドか。
美しいものを好きでいる人自身に美しさが備わるのか。
パンクを聴く人が漏れなくアナーキストか。

確かに似た性質を持つ事柄や存在に興味を持つことはあるし、ティーンの頃までに好きになったものや見たものに抗いがたいほどの影響と呪いを受けるのが我々であると思う。しかしそれ以外の場合はどうであろう。自分の本質と似ても似つかない存在に興味を惹かれているとき。

それは郷愁や、憧憬である場合がある。
つまりは、とどまることができない場所であり、手の届かないものなのである。

わたしたちはしばしば、わたしたちの本質の中に無い属性のものに心を奪われる。我々が無垢な哲学者だった頃を思い出しては「こうだったら」「あのとき出会っていれば/出会っていなければ」という平行世界を夢見る。

何かに興味を持って見る、見られるという行為には一瞬の旅が含まれている。

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