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「できる人」が「できない人」の気持ちを知るためには

初心者に何かを教えるときのポイントの一つに「できない人」の気持ちを踏まえ、「できない人」のペースで教えるというのがあります。

これは非常に重要なことですが、実際は教える側が「できない人」の気持ちをわかったつもりで全然わかっていないということが多く、結局自分のペースで教えてしまって相手がついて来れないという問題がよく発生します。

というのも「できる人」はできなかった経験が少ない、もしくはできなかった経験自体がないということが多いため、「できない人」の気持ちを想像したくても全くイメージがつかないからです。

「できる人」が「できない人」の気持ちを知るにはやはり自分自身ができない人になってみるしかありません。

そのための手法として私が過去に受けた研修で体験したワークを紹介したいと思います。

2人一組でお手玉を投げるワーク

このワークでは二人一組になり、3~4メートル離れたところから椅子をめがけてお手玉を投げ、椅子の座面に着地させることが目的です。

お手玉は弾まないのですが、力が強すぎると一旦着地しても勢いで外に落ちてしまうため力加減が重要ですが、何回か練習すればほとんどの人は着地させることができるようになります。

ここまでは難しくとも何ともないのですが、ここからは投げる人には目隠しをつけていただきます。

見えない状態で投げてもらうと椅子の上に着地させることは至難のわざなので、もう一人のほうは「トレーナー役」として投げる人が椅子に着地できるよう「指導」を行っていただきます。

その際の「指導」の仕方について、以下の三段階で行っていただきます。

1.結果だけ伝える

トレーナーは「成功」か「失敗」だけ伝えるので、投げる人は「成功」と言われるまでひたすら投げ続けますが、見えていないので成功できるかどうかは運任せです。

2.成功したら褒める、失敗したら叱る

今度は成功した場合は「よくやった!素晴らしい!」と褒め、失敗したら「何をやっているんだ!」と叱りつけます。投げる人は成功したら気分よくなりますが、失敗したら凹みます。しかし、やはり見えていないので闇雲に投げるしかありません。

3.具体的なフィードバックをする

最後は成功したら「今の力加減がよかった」「今の位置で手を離すとちょうどよい」とよかった点を具体的に伝え、失敗した場合は「少し右にずれていた」「力がやや強すぎた」と具体的な修正点を伝えます。投げる人は自分が投げるところを見えていないので感覚だよりになりますが、それでもフィードバックを受けているうちに成功率が上がってきます。

このとき、投げる人は見えていないのでまさしく「できない人」の立場ですが、トレーナー役は見えているので「できる人」の立場になります。

「できない人」にとっては1,2のやり方で指導されても何の役にも立ちません、3のやり方でようやく何とかなるというレベルですが、「できる人」にとっては3のやり方は1,2に比べて大変で面倒なものです。

このワークを現実での指導に置き換えると教える側は「できる人」であるため、この程度簡単にできると思い込んでしまい、教わる側がうまくできないと結果だけ見て「ダメ出し」したり、叱りつけたりしますが「できない人」にとっては何の意味もありません

「できない人」が少しでもできるようになるためには3のやり方のように具体的なフィードバックをするしかないのですが、相手は「できない人」なので一度や二度ではできるようになりません。そのため、初心者に何か教えるときは根気強くフィードバックを続けるしかありません。

このワークで伝えたいことはまさしく「できる人」と「できない人」の間には目が見えるか見えないぐらいの違いがあり、自分の想像以上に根気強く忍耐強く指導しないとできるようにはならないということです。

私自身もこのワークを体験して「できる人」が「できない人」の気持ちを知るのが如何に難しいか痛感しました。

人に何かを教えるときはつい初心者の気持ちをわかったつもりになってしまいますが、「できない人の気持ちは簡単にはわからない」と思った方が丁寧な指導ができるかもしれません。

今回もお読みいただきありがとうございました。


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