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人手不足に悩む職場で、人に定着していただくには④

現場の責任者ができることは何か

今回は人に定着していただくうえで、店長や営業所長といった現場の責任者の役割について考えてみたいと思います。

私がマクドナルドに勤めていたころも店舗の離職率は店長によって大きく異なりました。
もちろん地域によって離職率の違いはあるものの、都心の同じエリアでほぼ同じような条件の店舗でも離職率に差があったので、人が定着するかどうかは現場の責任者による影響は大きいと思います。

そのため、当時は私も「アルバイトが辞めるのは店長のせいだ」と思っていろいろ悩んだ思い出があります。(もちろん店長だけの責任ではありませんが)
幸い私がいた店は比較的に離職率は低かったものの、やはり不本意な形でアルバイトの方が辞めてしまうという苦い経験もありました。

そこで、当時の経験を元に現場コンサルタントとして様々な企業をお手伝いした中で見えてきたことについてまとめようと思います。

現場の責任者はスタッフに好かれるべきか?

まず、現場の責任者のキャラクターについて、性格が明るくて話しが面白くて人に好かれる魅力的な人物である必要はあるか?
これについては私の結論は「好かれるに越したことはないが、暗い性格で話し下手でもOK。ただし信頼できる人であること」になります。

私がいた頃のマクドナルドにはそれこそ店舗のいる100人のアルバイトほぼ全員から慕われる“カリスマ”みたいな店長がたくさんいらっしゃいました。強烈なリーダーシップがあり、黙っていても人がついていくようなタイプの人です。

最初は私も「店長になるためにはカリスマ性が必要」と思い込んでいましたが、残念ながら私には万人に好かれるような人徳もないため自分には無理でした・・・

ただ、あまりカリスマ性が無さそうな店長(失礼ながら)でも、アルバイトがほとんど辞めないという人も居れば、カリスマ性はあるけど意外とアルバイトが辞めている人もいることに気づき、もしかしたら性格はあまり重要ではないのかもと思うようになりました。

実際に自分がアルバイトの立場で考えてみると、確かに店長が人間的魅力に溢れる人物なら働いて楽しいのですが、元々お金を稼ぎに来ているので、別に店長は存在感の薄い人でも面白みのない人でも対して気になりません。

それよりも、店長が「信頼できないやつ」ではないことのほうが重要だということがわかりました。
店長が厳しくて怖い人でも、「信頼できないやつ」でなければアルバイトは辞めません。しかし、明るくて楽しい人でも、ある日「信頼できないやつ」の部分が見えてしまうとアルバイトは辞めてしまいます。

では、「信頼できないやつ」は具体的にどんなことをする人なのか?よく聞く事例をまとめるとこのようになります。
・嘘をつく、約束を守らない
・自分のことを棚に上げて人のせいにする
・人によって態度を変える、露骨なえこひいきをする
・急に切れる、何で切れているのかわからない
・上にはペコペコ、下には横柄

私自身もアルバイトの機嫌を取ろうと安易に無責任なことを言ってしまい、結果的に相手に「この人は信頼できない」と思われて辞められてしまったということがありました。
一方で「絶対私のことを嫌っているよな」と思っていたアルバイトの方が最後まで辞めずに仕事をして下さったこともありました。思い返せばこの方には私が苦手意識を持っており、距離を取っていたものの、その分敬意を持って接していたので相手との信頼関係は崩れなかったと思います。

そのため、現場の責任者はむしろ嫌われてもいいので、責任のある言動を心がけたほうがよいと言えます。

スタッフとはこまめにコミュニケーションを取るべきか?

理想を言えば、現場の責任者はスタッフとはこまめなコミュニケーションを取り、相手の悩みを聴きながら自分の思いも伝えていくのがよいと思いますが、現実的には現場の責任者は忙しく、しかもスタッフの数も多くなると物理的には無理です。

私がマクドナルドの店長のときは大きい店で社員が4人、アルバイトが100人いましたので、全員とこまめなコミュニケーションは無理です。せいぜい挨拶と業務上の会話、あとはたまたま休憩室で世間話をする程度です。1対1の面談なんて3ヶ月に1回、それも30分がやっとです。

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では、こまめなコミュニケーションが取れないならどうすればよいか?

ここでは発想を変えて、コミュニケーションは「言葉によるコミュニケーション」だけではないと考えると、忙しくてもできることは出てくると思います。

まず、忙しくてもスタッフの表情、行動を観察することはできます。
もし不満なく仕事しているのであれば、わざわざ声をかける必要はありませんが、観察して何か違和感を感じることがあれば、その時に声をかけて必要に応じて面談をすることはできます。

更に重要なこととして、現場の責任者の言動は常にスタッフの目に入ってきます。そのため、責任者がわざわざ言葉を発しなくても、スタッフは責任者の無言のメッセージを受信してくれます。

例えば、現場の責任者が毎日スタッフの前で辛そうな表情で仕事をしていたとします。
そうすると、スタッフは「ああ、この仕事は辛くて大変な仕事なんだな・・・」と思ってしまい、仕事をネガティブに受け止めるようになるでしょう。

また、責任者自身が上司や会社の不満を言いながら仕事をしていると、周囲のスタッフは「店長も嫌々仕事しているんだ、この仕事ってそんなものだよね」と思い、いつの間にかスタッフも仕事に対して不満を持つようになるかもしれません。

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このことから、現場の責任者は「言葉によるコミュニケーション」以上に、自身の言動が与える影響を意識したほうがよいと言えるでしょう。

もし責任者自身が「自分はこの仕事を好きでやっている」という姿を見せれば、仕事の面白さを言葉で説明するよりも説得力を持ち、スタッフがこの仕事を続けようと思える動機につながります。

とはいえ、現場の責任者も人間ですので常に前向きでいるのは無理です。店長であっても泣き言を言いたいときもあれば、不平不満が溜まることもあります。

そんなときはむしろ心を開いて弱みを見せてスタッフに助けを求めてもよいと思います。無責任なところではなく人間としての弱いところを見せることで、スタッフも「ああ、店長も人間なんだな」と思ってくれるでしょう。

いずれにしても、月並みな言葉かもしれませんが「信頼」が大事ということになります。相手に弱みを見せるもの「あなたを人として信頼している」という証にもなりますので、相互の信頼が人を辞めさせない最大のポイントといえます。

今回はここまでにして、次回は「会社としてできることは何か」について考え、このシリーズを締めくくりたいと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。

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