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美しい瞬間には、名前がある。 〜桜編〜

街角を歩く見知らぬ人同士が、目の前にある美しい景色を眺めて、幸せな気持ちになる。そんなピースフルな瞬間が好きだ。

例えば、夏の花火とか、秋の紅葉とか、冬のイルミネーションとか、春の桜とか。

今年の桜の開花は、平年よりも早かったらしい。
咲いたと思ったら、雨が続いて、また晴れて。気温差が激しいなかでも、美しく咲き続けてくれる桜は、健気で儚くて、ますます美しく見惚れてしまう。

桜は、日本を代表する花。
名前の由来には諸説あるけれど、「サ」は「聖なる」、「クラ」は神様の座る場所を意味しているという説が好き。桜は、山の神様が降りてくる依代(よりしろ)とされていたらしい。

桜が咲くと「山の神様が降りて来なさった!」とみんなで集まり供え物をしたところからお花見が始まったとも言われてる。

平安初期に出された『古今和歌集』では、梅を詠んだ歌は18首程度に対し、桜を詠んだ歌は70首。花=桜として歌われたのも、この時代だ。

日本人は、桜が咲いたら、祈ったり、歌を詠んだり、眺めたり。それぞれの時代のなかで、桜と共に過ごしてきた。

日本人が大好きな桜にまつわる言葉はたくさんある。

いくつかご紹介しよう。


朝桜(あさざくら)

朝、露をうけて咲いている桜。
他にも、夕桜や夜桜もある。時間帯によって名前をつけていたなんて。昔の人は、表情が変わる桜を楽しみ、愛でていたのですね。

花吹雪

花びらが、雪が吹雪いているがごとく舞い散るさま。風に舞う桜の花びらはとても幻想的ですよね。
昔の日本人も、その一瞬に心奪われ、雪に例えて表現をしたのでしょう。ロマンチック。

花筏(はないかだ)

桜の花びらが散って、水面にかたまりとなって、優雅に流れるさま。別名、桜筏。または、桜の絨毯。
水面の花びらを筏に見立てるなんて、上手いこと言いますよね。散った花びらにさえ、私たちは心動かされる。桜の魅力ってすごい。

落花(らっか)

花が盛りを過ぎて、散ること。水面でなくても、散りゆく桜は美しい。
満開の桜を眺めるのも良いけれど、足元に目を向けて散りゆく桜をも楽しむ。今も昔も、楽しみ方は変わらないのかもしれません。

残花(ざんか)

散り残る桜のこと。残桜(ざんおう)や、名残(なごり)の花とも呼ばれる。
葉桜がはじまると、花見の季節の終わりを感じて名残惜しくなる。そんな中、咲き続けている残花を見つけて心救われる。そんな心情をこの「残花」という言葉から感じる。

満開のときだけを楽しむのではない。
いろいろな瞬間の桜に目を向けて、そこに美しさを感じている。

歳時記や季語を調べると、桜にまつわる言葉の多さに驚く。長い歴史のなかで、多くの人たちが桜の美しい瞬間を切り取り、そこに名前をつけてきた証だ。

日本人の美意識の繊細さを感じる。
日本語って、知れば知るほど美しい。

もっと勉強したいし、未来にも受け継いでいきたい。

=== お わ り ===

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