夕ごはん①

昨夜、わたしと夫ははらぺこで床についた。お昼ごはんをたっぷり食べたので、夕方になってもお腹がすかず、夕飯は見送ったのだ。

こんな日は、夜中に空腹がやってくる。

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「おれ、明日は冷やし中華が食べたい。」

めずらしくリクエストがきた!よほどお腹がすいているんだろう。よぉし、気合が入る。

「乗っける具はトマト。茄子を素揚げにして一緒にマリネにしてほしい。うん。」

おぉ。なかなか具体的な案ねぇ。トマトと茄子のマリネねー。わたしは錦糸卵とハムをましまし、胡瓜少なめのが好きなんだけど、まぁ、今回は夫の案を採用するとしよう。

ぼやぼやそんなことを考えながら、シーツの冷たい部分に足を伸ばす。

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8本200円だった胡瓜がまだ冷蔵庫に残っていたので、雲白肉も作ることにする。夕飯に炭水化物を摂る日は、なるべく他のおかずを野菜たっぷりにするという、ささやかな抵抗。

トマトは赤く熟れているものを八つ切りにして、白ワインビネガーと醤油、オリーブオイルのマリネ液へ。茄子は素揚げして、熱いうちにマリネする。

雲白肉は甜醬油作りから。同量の醤油と酒、そしてたくさんの砂糖(!)を小鍋に入れて、煮詰める。スパイスは桂皮、八角、陳皮、粒の花椒、にんにく、しょうが、ねぎ。とろりとしてきたら完成。

ピーラーでうすく削がれた胡瓜は、水にさらしておくと元気にぱりっとする。ほかほかな錦糸卵の匂い。目にもあざやかな胡瓜のさみどり、たまご色。青くさい、夏の香りがする。

このあいだまで「せりが」「いちごが」と言っていた、ぼんやりなわたしを置いて、季節はちゃんとうつろう。

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とろりのたれ。ぱりっと胡瓜。やわらか豚。

しみしみマリネ。やさしい錦糸卵。つるつる麺。

画像2

「うまーい!こういうこと!」

気に入ってくれたみたい。なによりだ。嬉しさは心の中だけではおさまりきらず、たまらずにひひと笑ってしまう。

料理は得意ではないけれど、とてもやりがいのある仕事だ。努力のしがいがあって、好き。

夫の喜ぶ顔を見たいがために、わたしは明日もキッチンに立つ。

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