自然からの恵み
旧暦の3月3日は大潮の時期です。私が学生のとき、村人は我先にと潮が引いた海に向かいます。浜より100m先にはむき出しになったサンゴがあるからです。その日に限ってサンゴを歩きサザエやアワビ、色々な貝類が採れるからです。
母の介護をしているのですが、その日だけは海に繰り出します。前みたいに潮干狩り行く村人は少なくほんの数える人だけになってしまいました。皆年をとり老人だけになってしまったからです。私は元気だったのでアルバイトの人のボートで素潜りをしながらサザエをとりました。食べきれない程の量でしたので味噌漬けにしたりして楽しみました。
奄美大島には都会と違ってそれぞれの時期に頂く旬な野菜や果物、海産物が豊富に採れます。サトウキビの旬は1月から3月です。知人の友達が精糖工場で働いていましたので、できたての黒砂糖が手に入ります。出来立ては香りだけで食べれるぐらい新鮮です。色も濃くなく黄緑色に近い感じです。私は白砂糖を買ったことがなくいつも黒糖の粉状にした純正なものを使っています。奄美に帰ったとき、一年分を買います。それを新聞紙でくるみ日の当たらない所に保存して使います。
タラの芽は畑の脇に生えていて採っても採っても次々に生えてくるので食べ応えがあります。私はタラの芽の苦みが好きで天ぷらをして塩で食べます。そして自然に生えていた桑、実は美味しいのは当たり前ですが若葉を油で炒めて食べたらおいしいです。とりわけ美味しいのはフキ、兄の車で山に入り道路の側に生えているフキを抱えきれないぐらい頂戴してゆがいて皮をむき冷凍して保存したり豚肉と昆布と一緒に炒めたら極上の食べものに変身します。書ききれないほど美味しい果物もたくさんあります。奄美には源種に近い果物があります。花桃もその一つです。見事なほど花が美しく、実は小さいけれど少し甘酸っぱく、私はジャムにしたりジュースにしたりして頂きます。そして大好きな奄美すもも、こちらも甘さは控えめで酸っぱいのが特徴です。源種に近ければ近いほど酸っぱさがあります。私は果物は甘酸っぱいものが好きです。そしてパイナップル、完熟パイナップルはたとえようもなく美味しいです。まるで天国の果物です。大阪に兄から完熟パイナップルが送られてきました。ダンボールからも甘酸っぱいパイナップルの香りが漂っています。食べきるまで部屋中はパイナップルの香りで溢れていました。忘れてはいけないのが兄が栽培しているパッションフルーツです。甘酸っぱい女王さまです。爽やかな甘酸っぱい香りとともに、他のジュースに入れて飲んでもトロピカルに変身します。一瞬にして南国にいる状態になります。果物は80%は香りを頂くものと思っています。近頃は糖度が多いほど良い果物のように言われていますがいいとは思わないのです。
自然から頂くものが多すぎて一年がアッという間に過ぎてしまいます。少しのお金があったら島では生活ができます。都会から移住してきた人たちは約一年ぐらいで島を出ていきます。なぜなら田舎では隠し事ができなくすべてが筒抜けになるからです。そして郷に入れば郷に従えの言葉とおり、島ならではの決まり事があります。例えば週に一度は村の清掃、月に一度は溝の清掃、海のごみ拾い、そして定例会議、これは村人が代々受け継いできた行事であるから参加しなければなりません。秩序があるから円滑に生活できるのです。村の人たちと交流したくない方は移住はしないほうがいいと思います。
余生を田舎で暮らしたい希望は消えていません。病気が良くなり歩けるようになったら奄美に帰ろうと考えています。
こぼれ話続く