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他者に貢献しながら生きるために

私は理学療法士という仕事をしていて、確信していることが一つあります。

それは、この仕事の主役もしくは中心は自分ではないということです。

若かりし頃(笑)は、お金をかけて講習会に行って、本を沢山買って読んで、プライベートを潰して勉強している自分自身が主役であると勘違いしていたものです。

この仕事、恐らく理学療法士に限らず医療職全般に言えることですが、主役であるのは患者さんもしくは利用者さんであるべきです。

病気や怪我と向き合うのは、回復していくのは、社会に復帰していくのは、全て患者さんもしくは利用者さんですから。

しかしそれは、医療に限った話なのでしょうか?

学校を卒業してからは医療の世界でしか働いていない私ですが、恐らく他のどのような職種も主役は顧客になるのではないかと考えるのです。

そんな考えを後押ししてくれるのが、こちらの書籍です。

※この文章は読書感想文です

※私の所有する書籍と表紙が変わったようですが、内容は同じのようです


自己主張と需要の狭間で

臨床研究なんかをしていると、そしてそれを学会なんかで発表していると、自己主張をしたい欲求に駆られる場面は多いものです。

今でこそなくなりました(なくなったつもりです)が、学会発表のために作成するスライドやポスターは独りよがり、口頭での説明も研究結果から自分が主張したいことばかり、質問してくれる聴衆の方は敵のようにみなして、質問に対する回答は『攻撃は最大の防御』とでも言うような自己主張のマシンガン。

私が変わっている(いた)のかもしれませんが、もしかすると若手の方の中にはまだこのような感覚で学会に参加されている方もいるかもしれません。

では、学会発表は、一体何のためにするのでしょう?

一つは、自分自身の業績を積み上げるため。これはあると思います。

これに似たもので、自身の所属組織の業績のため。これも少なからずあるのが現実でしょう。

自分自身の勉強や経験のため、と考えている方も多いかもしれません。

では、ここで言う業績というのは何なのでしょうか?

発表したという事実、抄録集に自身が筆頭演者になっている演題が載ったという事実、これが業績なのでしょうか?

今なら言えます。そんなもの、意味ありません。

もちろん、とにかく学会で発表するという経験をするというのは尊い機会です。若手だろうが何だろうが、積極的に研究・発表すべきだと考えています。

ただ、その研究・発表の行き着く先に何があるのでしょう?

自分自身のためだけの発表であれば、残るのは聴衆の頭に浮かぶ「???」と、自分勝手な満足感だけなのではないでしょうか。

そしてこれは、臨床場面でも同じことが言えると思います。

患者さん・利用者さんの意向を無視もしくは軽視した介入をするのであれば、その後に残るのは療法士の自分勝手な満足感だけかもしれません。


マーケターのように生きる

本書では、マーケターつまりマーケティングをする人の思考や技術を紹介しつつ、それを実生活や仕事に活かすという視点が展開されます。

それは一言で言うならば、全てを相手(=顧客)から出発するということです。

前述のような自分勝手な発表や臨床では、『自分のしたいこと』もしくは『自分にできること』から出発します。

そしてそれを相手やその場に合うように若干カスタマイズして提供するという流れだと考えます。

一方、マーケター流のやり方では、先に相手のニーズがあります。

そのニーズをできる限り的確に捉え、そこに応えようとする上で自分の個性や能力を発揮する、という流れであるようです。

詳しくは書籍を読んでいただくのが良いと思いますが、このような考え方は何事にも共通して必要なことなのではないかと思うのです。

仕事はもちろん、家族との関係、友人との関係、趣味なんかのコミュニティ、地域での活動などなど、およそどのような場においても、自分自身のやりたいことだけをやっていたのでは、本当の意味で周囲の人のためになることは成し遂げられないのではないでしょうか。

アドラーも、他者に貢献できることが自分の幸せに繋がると言っています。

他者の役に立っている、他者に貢献できていると実感できることこそが、人間の本質的な幸せであるようです。

医療職として身を粉にして働く人たちは、他者に貢献しようという意思を持っている方が多い(はず)と考えています。

しかしそれは、漠然とした感覚的な部分が多いのではないかと思うのです。

本書『マーケターのように生きろ』は、この他者に貢献するということを、より明確に考えていくための取っ掛かりが掴める書籍だと思います。

正直、この一冊を読んだからと言ってマーケティング思考が十分に理解して実践することができるとは思っていません。

むしろ、より深く勉強したくなります。(←個人の感想です)

まずはこの本で、マーケティング思考というのはどんなものなのか、それを仕事や実生活に活かすというのはどういうことなのか、というのを掴むと良いのではないかと考えます。

アドラーの言葉を借りると、それこそが自分自身の幸せになる方法であるのかもしれません。


おわりに

最期まで読んでいただき、ありがとうございます。

Twitterで予告した読書感想文、なんとか今月中に書くことができました。

読書感想文なのか書籍の紹介なのかよくわからないことになっていますが、どちらにしろ「読んでみよう」と思っていただける方がいれば幸いです。

『マーケティング』と聞くと、医療関係者はあまり聞き馴染みないですし、自分には関係のないものと考えがちだと思います。

でも実は、医療を提供する上でも非常に役立つ技術ですし、実生活でも役立つものだと思います。

私自身、マーケティングの勉強はもう少し深めていきたいと考えているところです。

では、また。




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