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子育てとリハビリテーション

突然ですが、私には10ヶ月の子どもがいます。

昨日、初めて近所の公園を子どもが自分の足で歩きました。

その様子を撮影した動画を見ていたところ、自分で自分の動きに驚いたという話です。


理学療法士という仕事

私は普段、理学療法士という仕事をしています。

この仕事では、立てない方は立つ練習、歩けない方は歩く練習のお手伝いをすることが多くあります。

クライアントには成人の方が多く、立てない・歩けない原因には様々なものがあります。

脳卒中による影響、ケガや手術の後遺症、加齢による影響など。

そのような『歩けない理由』により、お手伝いの仕方は様々です。

この仕事を約10年続けているので、色々な方の立つ練習・歩く練習のお手伝いをしてきました。


無意識に歩行練習をしてしまう

冒頭でもお話しましたが、昨日は初めて子どもが外を自分の足で歩きました。

家の中では9ヶ月の終わりくらいから1歩進んでは転けてを繰り返すようになり、それから1ヶ月経たずに家の中はほとんど歩いて移動するようになっていました。

「これくらい歩けるのなら」ということで、ファーストシューズを履かせ、近所の公園に歩きに行ってみたわけです。

いきなり一人で歩かせると繰り返し転けて汚れるのは目に見えていたので、両手を持って歩かせました。

本人はニコニコしながら、積極的に歩きます。

その様子を撮影した動画を見て、思いました。

「これ歩行練習じゃん」

本人の動きを邪魔しない程度に誘導される『支持基底面内での重心移動』。

支えと振り出しの繰り返しが行われる歩行では、左右への重心移動が行われる必要があります。

無意識ですが、この重心移動を手伝っている様子が動画に収められていました。


子どもの成長を促してしまう

自分で一歩を踏み出してみたり、両手を挙げて2、3歩歩いたりする。(東京都教育委員会)

これは1歳児の発達(1歳頃〜1歳3ヶ月頃)だそうです。

全ての子がその通りに発達するわけではないですし、早い子もいれば遅い子もいます。

個人差や個性があるので、歩き始めるのが早いかどうかはあまり重要ではありません。

それでも、今回の動画に写った自分の動きを見て、若干反省しました。

今思い返すと、子どもが座り始めた頃、立ち始めた頃、1歩を踏み出した頃。

子どもの動きに合わせて、身体の動きを手伝うというのが常でした。

もちろん、こちらの介助は関係なく、うちの子の発達が早いだけの可能性もあります。

それでも、どんどん動きを促してしまった可能性があるのは確かです。

「ずっと赤ちゃんでいいのに」と思いながら(笑)


リハビリテーションと子どもの成長

半分冗談みたいな話でしたが、リハビリテーションと子どもの成長を比べて思ったことも書いておきます。

子どもを見ていていつも思うのが、「失敗を恐れていない」ということです。

子どもは転倒することなど気にせず、転けたらすぐに立ち上がるし、何度でも歩こうと試行錯誤します。

リハビリテーションの対象となるような方は転倒したらケガの恐れがあるので、何度も転倒するわけにはいきません。

そういう配慮は必要であるものの、リハビリテーションの中でトライアンドエラーの数が圧倒的に少ないのは事実です。

歩行に限らず、『麻痺した手で行為する』とかもそうです。

私たちは成長するにつれて、失敗を恐れるようになってしまいます。

身体的な変化や心理的な変化もあると思いますが、社会的な影響も少なからず受けているように思います。

失敗が許されない社会、やり直しを認めない社会。

リハビリテーションの業界でも、効率的な回復が称賛される方向に進んでいます。

効率的、つまり早く回復するという事は当然良いことですが、残念なことに費用対効果という側面が強いように感じます。

リハビリテーションは『全人的復権』と訳されます。

そしてリハビリテーションを行うのは我々専門職ではなく、クライアント本人です。

人が『全人的復権』を目指していく中で、失敗することなく進んでいくなんてことがあり得るのでしょうか。

リハビリテーションと子どもの発達は似ています。

全ての人が失敗を恐れずに挑戦し続けられる社会を目指していくというのも、我々リハビリテーション専門職の仕事なのかな、と考えます。


まとめ

子どもの成長について気付いたこと・感じたことをお話しました。

理学療法士の性は、子育ての中でも出てしまっているようです。

変に成長を促さないよう、気を付けていきたいと思います。(笑)

そして、リハビリテーションと子どもの成長は似ているという気付きがありました。

最終的に壮大な話になってしまいましたが、リハビリテーションは生きている社会の影響を強く受けるのは事実だと思います。

無謀ではなく、失敗を恐れずに試行錯誤できる、そんな社会の実現が広義でのリハビリテーションが目指すところなのではないでしょうか。

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