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棘上筋を強化するために最適な運動とは?(論文レビュー)

こんにちは桑原です。

Instagram→@kei_6918

今回の記事は論文レビューです。

皆さん棘上筋の筋力訓練を導入する際、何を選択してるでしょうか。

一般的にはfull canでのエクササイズが用いられていることが多い印象です。

ですがそれは本当に棘上筋の筋力訓練として最適でしょうか?

今回はこのfull canempty canの他に報告されている3つのエクササイズを加えた合計5つのエクササイズ棘上筋・棘下筋・三角筋の3つの筋の活性レベルで比較検討した報告の論文レビューをしていきます。

文献は2001年の武田芳嗣 ・遠藤健次らの報告です↓

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19812522/

それではよろしくお願いいたします。



1)棘上筋の最適な運動の定義

では何をもって最適な運動とするかですが

先行研究では三角筋の活動を最小限にした上で、棘上筋の筋活動を最大に引き出すべきであるという考えのもとで筋電図学的検証が行われています1)2)

これらの先行研究の考えに基づき棘上筋の最適な筋力訓練の検討を行なったのが本文献です。


2)文献の概要

では文献の概要に入ります。
5つのエクササイズは何が比較されたかですが以下のとおりです。


①"Empty can" exercise position.(エンプティカン肢位)肩甲骨面で肩関節外転させ、上腕を内旋させ、手首に抵抗を加える


②"Full can" exercise position. (フルカン肢位)肩甲骨面(前額面より30°前方)で肩関節外転し手首に抵抗を加える



③Prone elevation exercise position.(腹臥位挙上肢位)腹臥位で肩関節外転約100°外旋位で挙上し手首に抵抗を加える


④Pendant external rotation exercise position.(ペンダント外旋肢位)肘関節90°屈曲位、肩関節下垂位で外旋させ手首に抵抗を加える


⑤Prone external rotation exercise position.(腹臥位外旋肢位)腹臥位で肩関節90°外転位、肘関節90°屈曲位で手首に抵抗を加え外旋させる


これらの5つのエクササイズ時の
棘上筋・棘下筋・三角筋の活性を比較検討した文献になります。

結果ですが

調査したすべての運動姿勢において、棘上筋の活性化レベルに有意な差は見られなかった。
・棘下筋は、外旋運動において棘上筋よりも高いレベルで活性化された。
・ペンダント外旋肢位
・腹臥位外旋肢位※外転位
この2つの外旋運動が三角筋の活性レベルを抑えかつ棘上筋の活性レベルも高かった。
・肩峰下インピンジメント症状を回避することに配慮すれば、疼痛を誘発する挙上位より内転位で行うことができるペンダント肢位外旋の方が都合がよい。

とされています。

棘上筋の活性レベルに優位差が無いのであれば三角筋の活性レベルが低いものがより最適と言えます。

そして挙上角度が上がれば下方関節包が緊張するので内転位よりも骨頭上方偏位によるインピンジメントのリスクは高まります。

つまり外旋運動のなかでも内転位のペンダント外旋肢位(下垂外旋肢位)がより最適というのが本文献の見解です。


3)文献の考察

下垂位外旋で棘上筋の活性が高く、かつ三角筋の活性が抑えられるというのは重要な知見かと思います。

外旋筋だけの筋力訓練だと思って1st外旋のセラバンドでトレーニングしていたら棘上筋のトレーニングにもなっていたというわけです。

個人的にはこの下垂位外旋に加えてタオルを肘で挟めて肩関節内転方向にも出力しながら行うとより三角筋の抑制になると思います。
(三角筋は外転に働く為、内転方向の出力時は抑制される)相反抑制ですね。

三角筋を抑制しながら棘上筋を鍛えることは過去の研究でも多く行われてます。

full can testが新しく報告された時も比較研究でempty can testよりfull can testの方が三角筋中部の出力を抑えることができ疼痛誘発リスクを抑えることができると報告されています3)

臨床でもempty can testよりfull can testが推奨されています4)

このことからもempty can testを選択することはスポーツなどで競技特性上内旋位での挙上が大切になる場合を除いてかなり限定的になるかと思います。

同じく三角筋抑制かつ棘上筋の活性が高いとされた「腹臥位の外転外旋運動」もインピンジメントのリスクがポイントなので、時期に応じて下垂位外旋から段階的に導入するのも機能的な側面から良いかと思います。

この記事のまとめ

・肩関節下垂位外旋の抵抗運動、腹臥位外転外旋の抵抗運動で棘上筋の活性を保ちつつ三角筋を抑制することができる。
・疼痛誘発リスクから外転位より下垂位での外旋運動の方が都合が良い



参考文献
1)Reinold MM, Wilk KE, Fleisig GS, Zheng N, Barrentine SW, Chmielewski T, Cody RC, Jameson GG, Andrews JR. Electromyographic analysis of the rotator cuff and deltoid musculature during common shoulder external rotation exercises. J Orthop Sports Phys Ther. 2004; 34(7):385-94.

2)Yasojima T, Kizuka T, Noguchi H, Shiraki H, Mukai N, Miyanaga Y.Differences in EMG activity in scapular plane abduction under variable arm positions and loading conditions.Med Sci Sports Exerc. 2008;40(4):716-21.

3)Takashi Yasojima et al. (2003). Effect of position and change of angle on activity of shoulder muscles during scapular plane abduction

4)Kelly BT, et al.: Current research on muscle activity about the shoulder. Instr. course Lect, 1997; 46: 53-66.

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