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【HR領域】採用ターゲットとメッセージについて(採用関連)

たまには自分の本業について、まじめなことを書いてみたいと思います。

改めまして、私は人材系会社で採用のコンサルタントをしています。
元々、大手ナビサイトの営業をしていたこともあって、
顧客からの採用相談に乗ることも多くありました。

その過程で、グループ全体のMVPやコンテスト大賞受賞の実績もありますので、ある程度信頼度の高い話を書くことができると思っております。

さて、タイトルにも書きました
採用ターゲットとメッセージングについてですが、
TM設計(ターゲッティング&メッセージング)なんて言い方もします。

人材周りに携わったことのある方であれば大抵の方がどこかで聞いたことのあるワードではないでしょうか。

ただ、採用にお困りの企業の多くが、このTM設計を理解が不十分のまま活用し、結果として思い通りの採用にならないという結果に陥ってしまっているのも事実です。

そこで今回は改めてTM設計について自分なりにまとめてみようと思います。
釈迦に説法になりましたらご了承ください。

また、現在転職活動中や新卒での企業選考中の方にも参考になる話かと思いますので、最後までご一読いただけますと幸いです。

そもそも、ターゲティングとメッセージングですが、
その名の通り、会社の欲しいターゲットに対してどのようなメッセージを発信すれば求職者に興味を持っていただき、応募、採用につながるかというものです。

したがいまして、逆にここさえ定まってしまえば、あとはそのメッセージを人材紹介や求人広告、SNSなどで発信するだけである程度の採用成功は達成できます。そのくらい重要なものだと考えています。

通常の手順でいえばまず自社のターゲットとなる人物像のペルソナを作成し、そのペルソナに刺さる自社の魅力をメッセージとして発信するのですが、そのためには自社の魅力とは何かを考える必要があります。

その際行うのが3C分析です。
3Cとは顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)のことで、それぞれの視点から分析することで顧客ニーズの把握や競合のサービス内容、自社の差別化ポイントなどを把握するというものです。

3C分析を行うことで、他社にはない差別化ポイントを求職者に訴求することが可能になりますので、TM設計においてはかなり重要な要素になってまいります。

と、ここまでは一般的な話です。

では、なぜ3C分析までしたTM設計が上手く機能しないのか。
ほとんどの理由がこれです。

事業上の競合と採用上の競合は異なる

これに尽きます。
ここを混同されてしまっている企業様が非常に多い印象です。

どういうことか。
具体例を挙げたいと思います。

スターバックスドトールの話
※本内容は筆者の想定から成り立っており、
実際の戦略等とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

この2社はカフェを展開する競合会社です。
事業上でターゲットとする顧客も提供している商材もほぼ同じです。

では、どこが違うのでしょう。
それは、営業スタイルです。

ドトールでは従業員に対してマニュアルが徹底されており、
顧客の回転数を高めることで利益を出す仕組みになっています。

一方、スターバックスにはマニュアルというものは存在せず、
基本的に接客は従業員のホスピタリティによるところが大きいです。
顧客のロイヤルティを高めることで利益を生み出しています。

では、この2社は事業内容でみれば
「店舗でコーヒーを顧客に提供する」と同じですが、
はたして同じ人を採用しても良いのでしょうか。

違いますよね。

ドトールではマニュアルが存在しているため、
決められたことをきちんとこなし、
手際よく物事を進められる人が求められるはずです。

一方でスターバックスの場合は、
顧客の気持ちを考え、自分がどう動けば
より顧客満足を生み出せるのかを考えられる人が必要になります。

つまり、同じカフェの店員でも求められることが異なる以上、
求めるターゲットも異なれば、そこに刺さるメッセージも異なります。

ドトールの場合、ターゲットのペルソナは
「30~40歳。女性。子育てがひと段落して隙間時間でバイトをしたいけれども、専門的な資格もない。コミュニケーション能力には自信があるので接客業をしたいと考えている。ただし、接客の経験はないので、未経験でも始めることが可能な仕事、できれば近所で働きたいと考えている」
というような人を作ることができます。

では、しつこいようですがこの場合、採用上の競合は
スターバックスになりうるでしょうか?

ならないですよね。
上記の内容であれば、近くのコンビニやファミレスのホール、雑貨屋の店員などが競合になってくる可能性はありそうです。

つまり、同業他社である他のカフェにはない魅力を打ち出すのではなく、
こういった、コンビニやファミレス、雑貨屋にはない魅力を打ち出す必要があるのです。

その場合のメッセージングは
・カフェ業態なので品数は少なく、覚えることはマニュアル通り
・落ち着いた雰囲気で、静かな職場で働ける
・店員同士協力して仕事を進めることが可能
などを打ち出すことができます。
※もちろん、このような羅列ではなく、
具体的なエピソードを交えながら広告表現をしますが、
その話は別の機会に。

一方、スターバックスではどうでしょう。
ターゲットのペルソナは
「20代、性別問わず。人の幸せが自分の幸せと感じることができるようなホスピタリティ溢れる人。友達の誕生日会を自ら企画するなど、能動的に感動を生み出すような行動ができる」
というような人を作り出すことができます。

この場合、採用上の競合はどうでしょうか。
おそらく、シティホテルのスタッフブライダルスタッフ夢の国で”キャスト”と呼ばれるような人が競合になってくるはずです。

その場合、打ち出さなければならないメッセージは
・自分の裁量でお客様を喜ばせる接客ができる
・常連のお客様と密なコミュニケーションが取れる
・お店作りに積極的に参加できる
こんなところでしょうか。
これらはホスピタリティを求められるものの、マニュアルや研修が存在する競合には打ち出せないポイントになりそうです。

このように、事業上の競合と採用上の競合は分けて考える必要があります。

当然ですが、求職者は1社だけに応募するのではなく、
複数の企業の選考を同時並行で進めていきます。
そうなった場合、「採用上の競合」はどこになっていて、
その競合と「どう差別化」するのかが重要になってくるわけです。

通常の3C分析をしてしまうと、
事業上の強みをそのまま求職者に対して打ち出してしまい、
確かに自社のメリットではあるのですが、
求職者にとってのメリットにはなっていない
というケースが生まれてしまうんですね。

よく求人広告などで
「トータルソリューションで顧客をサポート」
「日本トップクラスの技術力」
こんなキャッチを見ますが、
本当にターゲットに対してメリットになっているのでしょうか。
他の採用上の競合にはない魅力なのでしょうか。

改めて考えたいところですね。


いかがでしたでしょうか。
採用上の競合を意識したTM設計が固まれば様々なところで応用が可能になります。
自社採用HP上に掲載する内容や、求人広告、SNSで発信する内容など。

ちなみに、採用上の競合や自社の魅力がイマイチ分からない場合は
社員にアンケートを取ることも有効な手段の一つです。

・なぜ自社に入社したのか
・同時に受けていた企業はどこか
・仕事中で喜びを感じる瞬間はどんな場面か
などなど。

これらアンケートからも採用上の競合や自社の魅力を把握することができます。

転職活動・就職活動中の方にしてみれば、
企業がどのような考えで求人を作っているのかを把握することは有意義なことだと思いますので、参考になりましたら幸いです。

長くなりましたが
ここまでお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

たまにはこのように
自分の専門であるHR領域を中心に世の役に立ちそうな情報を
発信していければと思います。

この文章が企業様の採用活動の一助になることを祈っております。

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