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【ラーメン】オムニバス物語#2『激走!走り屋ラーメン・伝説のドリフトマスター』


第2話 激走!走り屋ラーメン・伝説のドリフトマスター


とある地方都市、山神県、山神市にて…若者たちが週末になると夜な夜な峠をチューンドカーで、生き様の如く攻め続ける"走り屋"たち。今宵も地元では走り屋のメッカと呼ばれるこの西王座峠に集まっていた。彼らは夜通し峠を攻め続けるのだが、もう一つの楽しみがあった。それは峠の麓にある伝説の元走り屋が経営するラーメンショップで、ラーメンを食べることだった。

現在、西王座峠で最速と謳われる最速R男は、チーム"skyscraper"を率いるチームリーダーだ。今夜もチームメイト達と一緒に、その熱い走りに没頭していたのだが…。


今夜も絶好調な最速R男は、愛車のトヨタ86のチューンドカーを走らせていた。

R男「ん…、後ろからパッシングしてくる車がいる…うちのチームメイトじゃないし、誰だ?…リトラクタブルのライトにあのエンジン音」

R男「…おっ、あれはAE86トレノ、しかも並のハチロク乗りじゃないな、タイトなコーナーのあとも離れない」


「この俺と勝負したのか、しかもダウンヒルだしな、新旧86対決ってわけだ。久しぶり楽しめそうだ」

R男はアクセルを踏み込む!迫力のエンジンサウンドが炸裂!アフターファイヤー!

R男「次の3連続コーナーで終わりだ、俺のミラーから消してやるぜ」

R男は絶妙なアクセルワークとシフトワーク、高鳴るヒールアンドトゥからのカウンター、そして華麗なドリフト!まさに峠番長の走りだ。

西王座峠の名物、下りの3連続コーナーだ。ここをクリアーし、R男に勝った者はいなかったのだが…。

R男「何っ!…」

形勢は逆転し、最終コーナーで相手のハチロクが見事なカウンターアタックでノーズギリギリのラインで抜き去っていったのだ。

チームメイト一堂「うわっー、あ~るさんが負けた!」

AE86はハザードランプをカチカチするとそのまま去っていった。

R男「うわ〜負けた…あいつはいったい何者…」

チームメイト「さあ、それが速くて姿は見えなかったすけど、このあたりのチームじゃないですね。車はAE86、白黒のパンダトレノでしたね」

「そうか、まあ散々な夜だったが、世の中には上には上がいる、ってのをまざまざと感じる瞬間だったな」と少し嬉しそうに言うR男。

R男「よし皆、気を取り直していつものラーメン行っか〜!」

チームメイト「うん、行きましょう!」

チーム一堂は、元伝説の走り屋が経営するラーメン屋へ車を走らせた。

その屋号は『ラーメン走り屋』。


店の駐車場へ行くとなんと、店主の34Rの隣には先ほどR男を抜き去ったAE86パンダトレノが止まっている。

チームメイト「あ~るさんコレ、さっきのハチロクですよ…。 ん、なんかコレどこかで見た事ありますよ」

R男「ん〜もしかしてこれは!よし店へ入るか、ドライバーがいるはずだから」


一堂は店に入った。


店主「いらっしゃい!」
「お〜、最速。ちょうどいいところへきたな待っていたぞ、お前に合わせたい人がいるんだ」

一堂「あっ〜!この人は、伝説のドリフト・マスターでドリクィーンこと、走屋女神だ!」

カウンターに座っている。

女神「あら、さっきはいい勝負だったわね」

「私、ほんと負けるかと思ったわ、あなたいい腕してるわね」

R男「あなただったんですね…どうりで速いと思いました」

「どうしてここへ?」

女神「あー、ちょっと店主へ会いにね、昔のよしみってところよ」

店主「昔、お世話になったんだよ、それよりお前たち腹減ったろ、さっそくラーメン作ってやるよ」

R男「俺、スペシャル全マシ」

チームメイト1「こっちは鶏ごぼう味噌ラーメン」

チームメイト一堂「俺、味噌チャーシュー。俺、つけ麺大盛りで。俺はチャーシュー麺!」



R男「しかし、ほんとびっくりだな。まさか女神がいるなんてよ」

チームメイト「でも店主も西王座の黎明時代の伝説の走り屋だったからな、ハチロク使いの、それが今はラーメン屋に鞍替えって人生だもんな…」



店主「はい、ラーメンあがったよ熱いから気をつけてな」

R男が頼んだスペシャルとは、見た目はG系ラーメンなのだが、店主はG系が好きなのだが重く食べ切れなかったためにスープは魚介系であっさりにしており、コクを出すために海老から抽出したチー油をアクセントにし、カラメソースを山盛りのもやしの上へかけており、麺は細麺のストレートにしてあるのだ。

チームメイトが頼んだ鶏ごぼう味噌ラーメンとは、ごぼうの旨味をごま油で抽出したもので、スープは味噌の甘みとごぼうの風味が相まった、まろやかなラーメンである。

走りの後のラーメンは最高に美味い!仕事から直行で峠に来たので皆腹ペコなのもあるが、休日前の夜を仲間たちと共に走り、うまいラーメンを食べて過ごすのも、至福の時間なのだ。


熱きバトルの後に絶品ラーメンをすするskyscraperのメンバーたち。

女神は中華そばを食べる。


ズルズル…、ゾゾゾ〜…、ちゅるちゅるちゅ…

ゴクンゴクリ、ゴクリ、もぐもぐ、ズルズル…ポン!

一斉にラーメンをすするサウンドがこだまする。


R男「あ〜食った食った、ご馳走さん」

店主「よ〜し、これから皆で走るか、女神さんも来てるしな」

R男「あの34Rで走るんですか?」

店主「まあね。ちょっと行ってくるわ」

奥さん「ちょっと早く帰ってきてよ」

女神「いいわね、じゃ私も付き合わせてもらうわ、今日は皆で走ろう!」


今宵西王座峠はさらに熱い走りと夜が続きそうである。

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