想いに向かう、言葉の受精。
2023.3.11
少しずつ、少しずつ落ちていった。
印の上に記すような日。
何度も何度もなぞって想いのこす。
大好きだった海が、わからなくなって、
何度も何度も責めて、
本当に辛かったのは、海だったんじゃないかって、
そう想うまでに数年かかった。
落ちていく。遠くでサイレンの音。
日付を乗り越えていく手前の、不穏。
0:00の耳鳴り。
ハン・ガン『すべての、白いものたちの』を読む。
言葉のどこまでもに、浸る。
ページごと良くて、もうすべてをくるむように、
ふせんを斜めに貼る。
読み散らかして、心が散らばる。
言葉が、想いに向かって集結する。
うようよ泳いで、受精するみたいに、
たったひとつがたどり着く。
はらんで、ふくらむ。
1:15 ふたたびサイレン。
遠くの音が、近い場所の、きっといるその人に、
思い馳せる。ただ遠い。
刻む時計の音。進み続ける。
深い夜とアルコールに飲まれて
言葉は朝に白むだろう。
文学は眠らない。
猫はあたたかい。
1:58 幻聴サイレン。
いつだって、為す術はない。
水中に血が滲み、
生命のいない子宮が重く沈みだす。
2:24 くるまる。
明日は朝日を見ない朝。
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