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高校無機化学#2(17族)~ハロゲン単体②~

前回の続きから。

③酸化マンガン(Ⅳ)に希塩酸を加えて加熱

反応式は次の通り。

スクリーンショット (50)

まず、この反応は酸化還元反応である。したがって、2つの半反応式を足し合わせることで反応式が書ける。

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ここで、MnO2は酸性条件下でのみ、酸化剤として働き、Mn2+に変化することに注意。半反応式は反応物と生成物さえ覚えれば、ワンパターンな手順で書けるので、ミスの無いようにしたい。(補足 半反応式の作り方)

と、反応式を書くまでは、非常に簡単なのだが、実はこの反応、論述問題で出題されやすいポイント2つある。

(1)なぜ加熱?

1つ目。この反応はなぜ加熱を必要とするのだろうか。

答え。「Cl2を溶液中から気体として追い出して、反応を右に進めるため。」

スクリーンショット (50)

どういうことか。この反応の電子の動きに注目してみると、MnO2がCl-から電子を奪っている。しかし、Cl2は強い酸化剤であるから、本当は、逆反応の、Cl2がMn2+から電子を奪う反応の方が起こりやすいはずである。つまり、この反応は自発的には起こらないのだ。

そこで、加熱することにより、生成したCl2を反応系から取り除くことで、「ルシャトリエの原理」により、平衡を移動させて、逆反応が起こるのを防いでいるのである。

スクリーンショット (52)

ここで1つの疑問が生じる。「なぜ、わざわざ加熱が必要になる弱い酸化剤MnO2を用いるのか?」ということだ。Cl2よりも強い酸化剤である過マンガン酸カリウムKMnO4を使えば、加熱もいらず、テストにも出ず、みんなHappyなのではないか?

だが、答えはノーである。私たちは塩素は有毒気体であるということを忘れてはならない。つまり、加熱が不必要であるということは、逆に言うと、自発的に反応が進み止めることが出来ないということであり、塩素の発生を制御できず、外に漏れだす危険性が高まってしまうのだ。

(2)水が先で、濃硫酸が後

続いては、実験操作上のポイントである。

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実際の実験では、生成物である、塩素Cl2、水蒸気H2O、未反応の塩化水素HClが混合気体として出てくる。私たちが欲しいのは塩素なので、なんとかしてHClとH2Oを除去したい。この時の手法が非常に重要である。

上の図を参考にしてほしい。まず、重要度は低いが、最初に空の容器に接続する。これは、加熱を終えたときに水がフラスコ内に逆流して、割れるのを防ぐためである。だけど、ほんとに重要ではない。

次に、水の入った容器に接続する。塩化水素HClは強酸であり、水への溶解度も非常に大きいため、この操作によりHClが除去される。したがって、塩素と水蒸気の混合気体となる。

最後に、濃硫酸の入った容器に接続する。後に考えるが、濃硫酸には、強い吸湿作用があり、水を吸湿する。これで、晴れて、塩素だけに分離された。

ここでは、「水→濃硫酸」の順番が非常に重要で、よく出題される。仮に、「濃硫酸→水」だとすると、最後に得られるのが、どうしても水蒸気混じりの塩素になってしまうからだ。

今日はこれでおしまい。めでたしめでたし…


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