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高校無機化学#3(17族)~ハロゲン単体③~
それでは、塩素の製法の最後、
④隔膜法、イオン交換膜法によるNaClaqの電気分解
隔膜法、イオン交換膜法は、NaOHの工業的製法であるが、副生成物としてCl2やH2も生成する。したがって、塩素の製法の1つでもある。
(ⅰ)隔膜法
上の図が、隔膜法の模式図である。陽極極板に炭素、陰極極板に鉄を用いて、NaClaqを電気分解すると、陽極、陰極ではそれぞれ次のような反応が起こる。
陽極側では塩素、陰極側では水素と水酸化物イオンが発生する。
その後、陰極で発生した塩素が水と反応して下の自己酸化還元反応(#1)を起こす。
この結果、発生したHClとHClOが陽極側の水溶液中に溶け込んでいることになる。(上図の赤矢印)
また、陰極板周囲では負電荷であるOH-が発生しているため、電気泳動により、陰極板の近くにNa+が移動する(上図の青矢印)。だから、極板の周りではNaOHaqが出来上がっている。(これが、本来の目的)
*素焼き板の役割
ここで、素焼き板の役割は何だろうか?
答えは、「陽極側で発生した塩素が水と反応して生成するHClとHClOがNaOHと中和反応を起こすのを防ぐという役割。」である。
この実験の本目的は、NaOHを作ることだから、HClやHClOがNaOHと中和してできるNaClやNaClOといった不純物ができるだけ陰極側に含まれないようにしたいのだ。そのためには、陰極側へのHClやHClOの進入を防がなければならない。そのために使われるのが、「素焼き板」だ。
しかし、もともと陰極側の溶液は不純物であるNaClaqだし、素焼き板も細かい穴が開いているだけで、完璧にHCl,HClOの移動を防ぐことはできない。つまり、隔膜法は不完全なのだ。
(ⅱ)イオン交換膜法
そこで、不純物が含まれないように工夫したのが、イオン交換膜法である。
まず、陰極側の溶液をNaClaqからNaOHaqに変える。これで、陰極側のもともとの溶液に由来するNaClが不純物として含まれることはなくなる。しかも、陰極で起こる反応は変化しない。
次に、素焼き板を陽イオン交換膜に変える。これで、陰極側にCl-やClO-が移動してしまうことがなくなる。
この2つによって、陰極では純度の高いNaOHaqが得られるようになる。
塩素の製法まとめ
話が長々になってしまったが、これで塩素の製法4つコンプリートである!再掲しておくと、
全て、ポイントを説明できるようになりたい。
では、サラバ!
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