脱・下請けに向けて、自社製品の開発に乗り出したい。最初の一歩は?その2
今回の相談は「長く大手企業からの受注生産がメインでやってきました。その状況から脱却するため、自社製品の開発に乗り出したいと考えています。最初の一歩はどんなことになるでしょうか」。東京都八王子市でプラスチック成形業を営む40代の社長さんのお悩みです。
前回に続き、リファラバの「自社を伸ばすプログラム」のナビゲーターで、売り上げアップの仕掛け人、秋元祥治さん(岡崎ビジネスサポートセンター、「オカビズ」のチーフコーディネーター)が答えます。今回のポイントは、新商品開発で必要な「試し算」の手法です。
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に課題を感じている方々にお薦めです。
▼ 自社を伸ばすプログラム「秋元祥治のいいトコ探し塾」
毎日のように湧き出してくる困り事や悩み事。でも、相談できる相手が見つからない……。そんなファミリービジネスの経営者、後継者の方々は少なくないと思います。「みんなの経営相談」は、リファラバのナビゲーターや、ファミリービジネスへのサポート経験が豊富な専門家たちが、皆さんの困り事や悩み事に一つ一つ親身になって答えていきます。
より良いものをより高く!
前回に続いて、ご質問に答えていきたいと思います。
さて、自社の強みや魅力をつかんだ上で、具体的にそれをどう商品開発につなげていくか考えていきます。ポイントになるのは、「商品をほしがっているのは誰なのか」を明確にすること。もう一つは「しっかり利幅が取れる商品にする」ということです。
中小企業の勝ち筋は、これまで「良いものをより安く」と言われてきました。しかし、私は全くそう思いません。より良いものをより高く、どうやって売っていくかを追求することが、健全な経営のあり方だろうと考えています。
自社製品の開発に乗り出す時に明確にすべきなのは、この商品を誰が本当にほしがるのかという点。つまりターゲティングです。しかし、これは多くの方々がおろそかにしがちなポイントでもあります。
思いつきや当てずっぽうではなく、その企画の「確からしさ」を検証する必要があります。小学生の時、計算問題を解いた後に行う「試し算」のように、自社で考えたターゲティングや展開について、一歩立ち止まって、まずは考える必要があります。
試し算①…自分でじっくり考える
「これ、何となく良いよね」「こういう人がたぶん買ってくれるよ」という感覚と、実際にお客さんがその商品を買ってくれるということの間には、ドーバー海峡ほどの大きな、大きな距離があります。
ここで必要になるのが「試し算」です。まずは自分がその想定顧客なら、その商品を買うのかどうか、じっくり考えてみることが必要です。
商品への思い入れはいったん脇に置いて、できるだけ自然に、客観的に、自分の中での「試し算」をやってみます。類似した商品は売れているのかといった競合のリサーチも良いでしょう。
類似の成功事例はなくても、同様の顧客のニーズ、さらにその奥にあるインサイトを捉えた、何らかの類似点のある商品やサービスの存在を見いだせれば、心強いでしょう。
例えば、こだわりの味付け調理みそを手掛ける花誠(名古屋市)。アウトドアトレンドを捉えた新商品の投入の際、リサーチを行っても、アウトドア向けみそのヒット商品は見当たりませんでした。
しかし、「気軽に本格的なアウトドア料理を楽しみたい」というニーズを起点に見回してみると、例えばコショウやスパイスなどをブレンドしたアウトドア調味料「ほりにし」のヒットを見いだせます。
このような中で、キャンプや登山といったアウトドアシーンを盛り上げ、「ソトメシ」を格上げする肉みそ「岳味噌(がくみそ)」を市場投入したところヒットにつなげることができました。
試し算②…手元でできるリサーチ
もう一つのポイントは、しっかり利幅が取れるかどうか。前回ご紹介した額縁製造販売の美創舎(豊橋市)が開発した収納機能付き額縁「osaMaruue(オサマルーエ)」の事例でいうと、私たちはターゲットを贈答品に絞りました。
国産の額縁はどうしても高価になってしまい、値段では中国製にかないません。オサマルーエはひとつ9000円以上しますが、おじいちゃんやおばあちゃんが新入園や新入学のタイミングで、お孫さんに「おめでとう。たくさん絵を描いて、いろんなことに頑張っておいで」という思いを込めてプレゼントするシーンであれば、無理のない価格だと考えました。
加えて、手元でできるリサーチもしました。「幼稚園、子ども、絵、収納」といったキーワードで検索してみると、口コミサイトや新聞の投書コーナーなど「子どもの絵の収納場所に困っている」という困り事がたくさん出てきました。これは潜在的なニーズがある。価格としても、しっかり利幅の取れる商品になると確信しました。
試し算③…試作品を使ってもらう
試し算の方法は、他にもあります。試作品を作ったら、SNS(ネット交流サービス)に投稿してみるというのも良い手法です。
山川醸造(岐阜市)は、卵かけご飯専用のしょうゆやアイスクリームにかけるしょうゆを売り出したことで知られています。
どちらもヒット商品になりましたが、試作品ができた段階で「今度、こんな商品をつくりました。興味のある人はいますか」とウェブ上で発信しました。希望者に試作品を送り、使ってみた感想を尋ねたり、どのぐらいの価格であれば実際に買うかを聞き取ったりしました。
そのフィードバックから、商品そのものにニーズがあるのかどうか、ブラッシュアップすべき点はどこなのか、どのぐらいの価格設定であれば「値ごろ」と感じてもらえるのかといったことをつかんだうえで、発売に臨み、ヒットにつなげることができたわけです。
まずはフェイスブック上の友達を対象に募集してもいいですし、ツイッターで呼びかけてもいいでしょう。試作品の希望者に送り先を聞くのに合わせて、グーグルフォームなどで作成したアンケートも送り、「どうして興味を持ってくれたのか」「実際に使ってみてどうだったのか」といった質問をすることもできます。
もっとしっかり取り組むのであれば、クラウドファンディングを試してみるという選択肢もあります。
ヒト・モノ・カネの経営資源に限りのある中小企業であっても、まずはコストをかけずに小さく始めてみることが大事。さまざまな試し算の手法を織り交ぜ、自分が取り組めそうなことから、まず始めてみることが大切です。
<おわり>
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