ハンデをつけられた障害者は嫌な思いをする?

母校の大学に講義で呼んで頂きました。精神保健福祉士の実習の前に、現場の人の話を聞く、という趣旨です。


いろいろ話す中で、知的障害者とオセロをする時、四隅に相手の石を先においてハンデをつける、こちらも余程考えて置かないと負けてしまうので必死になる、お互い必死なのでフェアな勝負ができる、という話をしました。

その後の質問で、「ハンデをつけられた障害者の方は嫌な思いをするんじゃないですか?」という質問がありました。

適切な説明が思いつかず、「大丈夫、そういうものだから」と経験論で終わってしまいました。それが悔しくて、こういうふうに言えばよかったな、を言語化しました。お付き合いいただければ幸いです。

結論から言うと、「障害がある人も一人の生活者であり、社会との接点の在り方を自分自身で考えていく存在だ」ということです。

・・・なんのことかわかりませんね。

それは誰の問題か?

例を挙げましょう。
とある地元の名士の方とお話していたときのことです。「出かけるときに何を着ていくか悩んでいた時期がある」というのです。

誰に対しても丁寧に接して偉ぶることなく、それでいて気さくな方です。なんでこの人がそんなこと悩むんだろうと不思議でした。

「着ていったものに対していろいろ言われるのよ。羨ましいとか、自分には買えないとか。困ってしまって、わざと地味な服を着てみたりしてね」

そんなこと言う人いるんですか、とびっくりしていると、その方は、ニコニコして仰ったのです。

「でもね、もういいや、と思ったんです。自分が着たいものを着て、格好や出かける用事にふさわしければ石のついたアクセサリもしていく。それで服装について言われたら、どこで買ったかをお伝えするようにしたの。その人がその後どうするかは、その人の問題ですからね」

高い洋服や指輪かもしれないけど、ここに行けば手に入るという道筋をお伝えする。そこで売っているものが高価で買えないとして、もっと働いて買うのか我慢するのか、それは服について聞いた人の問題。着ていた人の問題ではない、と思うのです。

選べることが大事

冒頭に結論として「障害がある人も一人の生活者であり、社会との接点の在り方を自分自身で考えていく存在だ」と述べました。

例で挙げたのは、社会と「高価なもの」という接点でつながった人が、その接点に対してどのような態度を取るか、という話です。

翻って冒頭の質問をこの話に引きつけて考えてみましょう。冒頭の質問は「障害者が『実習生とハンデをつけてオセロをする』という社会との接点にどのように向き合うか」という問いだと考えています。
ここまで書いて気がついたのは、そもそも最初の問の立て方が雑でした。

大学での講義では「知的障害者とオセロをするときは四隅をハンデとして駒を置かせてあげる」と言ったと思います。
正確には「こういうハンデの付け方があるけどどうする?え?4つじゃなくて2つでいい?」などやり取りしながら始めます。
もちろんハンデを要らないといえばハンデなしでもやります。
「待った!」も有りです。

大事なのはゲームのやり方について本人が選択することが大切です。講義で話したのは極端に言うと「知的障害の人とはこのくらいのハンデで丁度いいんすよ(笑)」というふうに取られても仕方ない、学生のみなさんが違和感を覚えても仕方ないな、と反省しました。申し訳ありませんでした。

自己決定のプロセスを本人と歩む

そして、支援者としては本人さんと一緒に歩む、という態度が大切です。

本人のオセロのやり方を見ていると、一方向をひっくり返している間に、自分がどこに駒をおいたのかわからなくなっているのではないかと思いました(アセスメント)。
本人に聞いてみるとそうだというので、自分が置いた駒に目印を置くことにしました(プラン)。
やってみると目印の置き忘れがあるものの、置いたときは他にひっくり返せるところに気がつくことが多くなりました(実行)。
最近は勝てる回数も多くなったようです(評価)。

できる選択肢を提示したり、一緒に考えたりする。その上で本人が決めて、その結果を振り返る。
何をしているかというと自己決定の尊重で、選択肢を考えるのは自己決定の質を上げるプロセスです。
十分な量の情報を受け取った上で本人が決める。
その結果を本人が受け止める。

目の前で起こっている出来事が、自己決定のどういうプロセスに位置づけられるのか、swとしてどのようによりそえるのかを考えていく。これがswの展開の一つの切り口です。

ありがとうございました

この話を言語化するのに2ヶ月以上かかってしまいました。
鋭い指摘のおかげで自分のしていることの振り返りをすることができました。
この場を借りてお礼を申し上げます。
ありがとうございました☆

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