わたしのおばあちゃんの話#5
施設では、いつもたくさん話をする。
普通は、ご利用者様の話を聴くのが私たちの仕事。
だけどわたしはいつも話を聞いてもらっている。
わたしの話を自分のことのように、
喜んで、悲しんで、たまに叱ってくれる利用者のおじいちゃん、おばあちゃん。
いろんなことが落ち着いて、
東京に戻って、またバイトを再開した日。
休憩中の、2人のおじいさんの前に座る。
目の見えない、ささじいさん。
認知症で少年のようになった、ルーじいさん。
「クビになったかと思ったのに、まだいたんか。」
舞台の期間も含め、長く休んでいたわたしに、
いつものノリでささじいさんは言う。
車椅子のささじい、車椅子の押し方ひとつで、わたしとわかる。
そしていつも意地悪を言ってくる。
「ささじいさんが私に会いたくて泣いてるかなと思って!!!」
「会いたくないよ!血圧上がって仕方ない!」
っていう顔が笑ってる。
いつも通りのやりとりに、なんかホッとする。
「大好きなばあちゃんの、お通夜にも行けなくてね。もうお骨だったけど、挨拶してきたの」
いつも通り、いつも通りと唱えながら話す。
わたしの方を向いているささじい。
何が見えてるんだろう?
黙って聞いてくれる。
だんだん、自分の声が涙声になっていく。
耳が遠いルーじいさんが、
わたしの顔を見て、
「ありゃーーー、目が真っ赤だなぁ!!!
どうしたーーー眠いか!!!」
可愛い笑顔で、大きな声で突然話しだす。
そんなテンションで来られたら、さすがに笑っちゃう。
声のトーンを落としていたわたしは、
ルーじいさんのトーンに合わせて
「昨日夜更かししたの!!!眠いのよーーーー!」
「あーーー夜更かしはダメだぞーーー、今日は早く寝なぎゃダメだなぁあ!!」
「そうするー!ありがとーー!!!」
涙もひっこむ。
笑っちゃう。
ささじいさんは、しっかりわたしの方を見て
ちょっと笑って、
大きな温かい手で、肩をポンポンとしてくれた。
ばあちゃんに聞いてほしかった話、
今はたくさんのおじいちゃんとおばあちゃんが聞いてくれています。
「昨日魚焼いたら焦がしたの。」
「お母さんと、電話なのに喧嘩しちゃってさーーー」
「わたしの大好きな地元の友達が結婚するんだけどね....」
「酢蓮根漬けたんだけど、全然シャキシャキじゃないんだけどなんで!?」
「またオーディション落ちたよぉおおお!!!」
些細なことも、嬉しいことも、落ち込むことも
自分のことのように、
喜んで、悲しんで、たまに叱ってくれる。
こんだけでかい声で話してたら、
ばあちゃんまで届いてるかもしれんよね。
たくさんの人を愛して、たくさんの人に愛される、
そんなでっかい人になれるように
まだまだ頑張るね。
おわり
*自己満足な内容でしたが、最後まで読んでくださり、ありがとうございます☺︎
*最近よく、オーディション落ちたよーーーと叫びます。
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