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教室から消えた沖縄の歴史・仲原善忠原著『琉球の歴史』(上・下)を読む~第6章 王国の成立②

二、王朝の衰退と護佐丸・阿麻和利の乱

【解説】
 第一尚氏王朝の崩壊過程。おとぎ話口調が気になる。もう少し具体的な話がほしいところったので、少しだけ調べて全面的に書き直した。趣旨は変わらない。客観的に「内乱」を描写したが、王位継承のトラブルなどは、もう少し調べて書き加えた方がいいかもしれない。
 歴代国王のリストは筆者が作成して挿入しておいた。歴史の本なのだからこれくらいは必要だろう。

【本文】
 尚巴志はすぐれた人で、その実力で先島諸島を除く全島を統一したのですが、その後も按司の中には、兵力をたくわえて自分の城にこもってチャンスをうかがっている者もいました。これは、本土でも、戦国時代を勝ち抜いた豊臣秀吉が亡くなった後すぐに、徳川家康がその遺産を自分のものにしたことを考えればよく分かると思います。
 尚巴志の子孫は、その遺産を長く受け継いで守ることはできませんでした。

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 この表を見ても分かるように、初代の尚巴志を除く5人の王の在位期間は平均5年です。

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 上の系図を見るとわかるように、歴代国王は尚巴志の子、孫だけなので、文字通り血で血を洗う争いがあったということです。
 第5代王の尚金福は小島であった今の那覇を貿易港として整備する一方、約1㎞の「長虹堤」を整備して首里と繋ぎました。
 1453年に金福王が亡くなった後、王子の尚志魯と弟の尚布里が後継者争いを起こして内乱となりました。これを志魯・布里の乱といいます。この乱の際に首里城は全焼しました。戦いの中で志魯は亡くなり、布里は首里を追われたといいます。
 乱の後、尚泰久が6代目の王となりました。
 この泰久王の時代には護佐丸・阿麻和利(あまわり)の乱が起きました。
 護佐丸は、尚巴志が北山を攻めるときから呼応して共に戦った読谷山の按司でした。北山平定後は、北山、座喜味などを守るように命じられ、その間、貿易を積極的に行い、経済的に王国を支えました。
 尚巴志は1430年、護佐丸に中城の築城を命じ、勝連城の茂知附(もちづき)按司に対抗させました。その後護佐丸は1440年に中城城に居城を移しました。
 もう一人の王臣である阿麻和利が茂知附按司を滅ぼして勢力を伸ばすと、共に王家との婚姻関係を結んだ護佐丸と阿麻和利の対立も先鋭化していきました。
 1458年8月、阿麻和利に対抗するため護佐丸が軍備を整えると、阿麻和利は「護佐丸に謀反の動きがある」と尚泰久王に讒言し、それを信じた王は阿麻和利を総大将に任じ、中城城を包囲しました。これを見た護佐丸は抵抗することなく自害しました。
 こうして護佐丸を排除した阿麻和利は、まもなく首里に攻めのぼりましたが、敗走して官軍に滅ぼされました。
 この護佐丸・阿麻和利の乱については諸説があります。
 通説は、護佐丸は本当に忠臣で、王に背く心などなかったが、阿麻和利の讒言を王が信じてしまったことで滅ぼされてしまい、王はあとで後悔したという話ですが、阿麻和利も実は悪人ではなく、勝連では人望のたかい人であったいう話も伝わっています。阿麻和利を英雄として讃えるおもろが『おもろさうし』に収録されています。また、勝連城には大きな戦いの跡がないらしく、無血開城であったという説もあるようです。
 いずれにしても、王の一族が互いに争っていた中で起こった護佐丸・阿麻和利の乱は、政情不安定な中で起こった権力闘争だと言えるでしょう。


【原文】
  尚巴志はすぐれた人で、とにかく全島を統一したが諸按司はそれぞれ兵力をたくわえて自分の城にこもっている。王の力がよわくなり何かのきっかけさえあればすぐ反乱をおこし自分がかわろうという者もいます。
 尚巴志の子孫はおろかな者が多かったとみえ、たがいに中がわるく、彼の死後十四年のあいだに三人の王が立ち五年平均で次々に死んでいます。その次には王子と叔父が位をあらそい、二人共切り死にした上に王城も丸やけとなりました。何というみにくいことでしょう。
 このような乱れた王室を各地の按司がそんけいするはずはありません。はたして六代泰久王のときに中城按司(護佐丸)の乱があり、つゞいて勝連按司(あまわり)の反乱がおこりました。護佐丸は「あまわり」を大将とする官軍に平げられたが、間もなく「あまわり」は首里に攻めのぼり、敗走して官軍のために攻めほろぼされました(一四五八)。
 この二人の反乱についてはいろいろの説があります。護佐丸は実はむほんの心はなかったが「あまわり」がざん言したために、王はこれを信じて討伐し、あとで後悔したとか。あまわりも悪人ではなく勝連では人望のたかい人であったとか。或はそうかも知れません。一ばん明白なことは王族がたがいに争っていることで、これは人民の害にこそなれ、すこしも利益にならなかったということです。

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