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「アメリカの旧正月」の巻

 日本で旧正月を祝うのは、沖縄以外では、Chinatownがある神戸、長崎くらいなのだろうか。神戸市民時代の筆者は、神大大学院の同期生や研究仲間と、旧正月(漢語では春節と言う)にかこつけて、南京町で支那料理を食べて、終電まで大いに飲むのが楽しみだった。あれからもう20年か、みんなどうしてるだろうか。
 実はアメリカでは日本以上に、旧正月を意識する。支那人の人口が多いということもあり、サンフランシスコはもとより、各地のChinatownでは、獅子や龍が練り歩く。
 さて、ここはサクラメント。旧正月の祝いではあるのだが、これはヴェトナム人のものだ(写真はいずれも2007年1月20日撮影)。ちなみに、星条旗の横で翻っている黃地に赤の三本線は、懐かしの南ヴェトナム(ヴェトナム共和国)国旗だ。
 ヴェトナム語で旧正月は「テト」。50歳以上の人や、歴史をちょっとかじった人ならば、ヴェトナム戦争時の「テト攻勢」という言葉を思い出すに違いない。
 アメリカ西海岸でヴェトナム人コミュニティといえば、LAの隣、オレンジ・カウンティーのウェストミンスターにある、通称リトル・サイゴン。一度だけ行ったことがあるが、ヴェトナム語の看板が軒を連ね、美容系の店が矢鱈多い印象。そして、ここにも南ヴェトナム国旗。
 ヴェトナム人の間では、ヴェトナム戦争中から「(グエン・バン)チュー(大統領)は嫌いだが、コンサン(共産党)はもっと嫌いだ」と言われていた。アメリカが泥沼から足を抜いたとたんに、死んだフリをして和平に応じた北ヴェトナムは、あっという間に南ヴェトナムを併呑し、東洋のパリ・サイゴンは、ホー・チ・ミン市という、取ってつけたような名前になってしまった。そして大量の難民がボート・ピープルとなって逃げ出した。これを見れば、マスコミや左翼、特に、ベ平連のプロパガンダは真っ赤なうそで、真っ赤な連中とつるんでいたことが、まだガキだった筆者にもよーく分かった。 
 ヴェトナムに平和をと叫んだ連中は、戦争が終わって真の平和が来ると信じていたのではない。アメリカが出て行って、共産主義者が跋扈し、恐怖政治を行うことが平和だと考えていたのだ。だから、あの下品な言動の小田実(マスコミがあんな無責任男を担ぎ出していたことが信じられない。顔を見たら虫唾が走ったものだ)は、ボート・ピープルが南シナ海で溺れ死んでいるのを見ても、「ヴェトナムに真の平和を」とは口が裂けても言わず、「知ったこっちゃない」と頬かむりを決め込んだのだ。
 サクラメントのヴェトナム人コミュニティは2000人ほどと聞く。リトル・サイゴンとは比べ物にならないが、この様子を見れば、結束がかたいことが良く分かる。

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 この日は残念ながら雨。ベトナム人の知り合い・アイリスに会うつもりで行ったのだが、残念ながら彼女には会えなかった。派手な祭壇とステージ、民族企業のブースや屋台が忙しく準備をしている隣では、移動遊園地がテストラン。アメリカでは、祭りといえばこの移動遊園地が登場する。ちんけな観覧車やジェットコースターを見ていると、子供の頃に大阪にあった「みなと遊園」を思い出す。
 アイリスはサイゴン陥落後、家族とボートで逃げ、シンガポール近くの無人島に1年間暮らしたという体験の持ち主だ。その間、蛇や猿を食いながら生き延び、そしてアメリカ船に救助された。彼女は自分でビジネスを行い、ご亭主もレストランチェーンの社長。勿論非常に裕福な生活を送っている。そしてアメリカ市民となった今も、コミュニティの為に奔走している。子供たちは流暢にヴェトナム語を操り、非常に礼儀正しい。
 他の民族のこういう姿を見ていると、日本人や日系人の民族的なパワーの弱さを非常に情けなく感じる。日系人は日本語を話せない人が殆どである。しかもその中には、マイク・ホンダ元下院議員のように、支那人の金に目が眩み、偽南京事件や偽慰安婦問題など、与太話やプロパガンダを持ち出して、自分の先祖(マイク・ホンダの出自は日系人ではないという噂もある)に鞭を打ち、天に向かって唾するような恥ずかしい輩さえいるのだ。これは、ヴェトナム系アメリカ人が、コンサンの支配する今のヴェトナムの腐敗を唾棄するのと訳が違う。ヴェトナム人はヴェトナムを愛しているが、反日日本人・反日日系人は日本を愛してなどいない。
 国際人である前に、日本人であれとはよく言われることだ。国籍がどうなろうと、自分はどこに出自を持つかということを自覚し、誇りを持つことは、人間にとって非常に重要なことなのだ。それを自覚できない人間は、誰からも信頼されない。三浦知良選手が、国歌斉唱時に胸に手を当てて斉唱したことを咎める記者に言い放った言葉だ。

拙ブログ『無闇にアメリカに来てはいけない』より「雨のテト」(2007年02月24日 12:26付)に加筆修正した。

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