『モンスターファーム』を遊ぶのが怖い

『モンスターファーム』というゲームがある。

テクモからプレイステーション用ソフトとして1997年に発売された本作は、音楽CDやゲームディスクからモンスターを生成することを特徴とした育成シミュレーションゲームだ。我々の世界でいうCDは作中では「円盤石」と呼ばれ、この中にモンスターたちが封印されている。円盤石はいわばモンスターのタマゴといっていい。プレイステーション本体にCDをセットし再生を開始することで、封印されたモンスターがゲーム上にも再生される。
ゲームソフトの供給メディアがROMカセットからCD-ROMに移行するなか、本作はそれをギミックとして取り入れた。以前からバーコードの読み取りを用いた対戦ゲームがあったが、それをCDに置き換えたものが本作だといえる。

私は小学生の頃、このゲームを遊んだ。
当時は『ポケットモンスター』が流行しはじめ、モンスターを育てる要素を持つゲームが数多くリリースされていた。いま振り返れば、本作もそうしたなかのひとつに位置づけられるだろう。
RPGとして作られ、旅をしながらモンスターの収集をしていく『ポケモン』と比べると、『モンスターファーム』はモンスターの育成により重きを置いている。プレイヤーは「ブリーダー」として拠点に身を置き、モンスターに修行や仕事をさせて能力を鍛え、モンスターバトル大会に出場して優勝を目指す。

はじめて私がこのゲームをプレイしたとき、CDから「ディノ」という種類の恐竜型のモンスターが再生され、それは灰色の体表を持っていた。
いまとなっては何のCDから再生されたのか憶えていないが、現実に手元にあるCDから生まれたモンスターに対し、自然と愛着を覚えた。ゲーム内には月日があり、そのなかで助手の「ホリィ」とともにモンスターを育成していく。私も日々、モンスターを育成しバトルに出場させていたのだが、ある日突然、ホリィからモンスターが死んだことを告げられた。モンスターには寿命があったのだ。考えてみれば、当時ブームを巻き起こしていた『たまごっち』にも寿命は存在したし、私自身もこうしたポケットサイズの育成ゲームでキャラクターの死には何度も触れていた。しかし『ポケモン』やそのフォロワーで慣れた当時の私にとって、モンスターがゲーム内の育成中に死ぬことはないと無意識に信じていて、その死に衝撃を受けた。育てていたモンスターが1匹だけだったというのもそれに拍車をかけた。
以後、モンスターの死を見るのが怖くなり、私がモンスターファームを起動することはなくなった。私自身は体験することはなかったが、バトルで敗北した際に死んでしまうこともあるらしく、もしそんな場面に出くわしていたらより大きな衝撃を受けていただろう。

『モンスターファーム』は私にとって「怖いゲーム」であって、決して嫌いなゲームではない。いまでも、モンスターの死という描写も含めてむしろ好感を持っているし、気にかかっているゲームだ。当時のショックはどうしようもないことだが、もしかしたら現在プレイしたならば、ある程度受け入れることができるかもしれない。

『モンスターファーム』移植版公式サイト:https://www.gamecity.ne.jp/mf1/
現在はAndroid/iOS/Nintendo Switchで初代と『2』が配信されている。

『LINEモンスターファーム』公式サイト:
https://monsterfarm.game.line.me/ja/
サービスはまだ始まっていないが、LINEのゲームでも新たな展開がある模様。CDではなくLINEの友だちからモンスターが生成される。

『ウルトラ怪獣モンスターファーム』公式サイト:
https://ultrakaiju-mf.bn-ent.net/
ウルトラ怪獣とモンスターファームのコラボレーションゲームで、久しぶりの新規作品。発売は2022年10月20日。

PS2時代の『5』以降、しばらくシリーズが止まっていたが、ここ最近はいろいろと動きがあって嬉しい。

余談:モンスターファームに近いゲームとして、ジャレコの『ドラゴンシーズ 最終進化形態』があり、私も後年になってプレイした。このゲームはモンスターファームよりも世界観が殺伐としていて、もし小学生当時にこちらを遊んでいたら、それはそれでショックを受けただろう。


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