【7月作品の執筆記録】小説家が書籍一冊分の小説を書き上げるまで。No.3

 noteでは第三弾となる執筆記録です。
 こちらは商業作家であるベニサンゴが1ヶ月かけて書籍1冊分(大体10万字くらい)の小説を執筆した記録を公開しようというシリーズ記事です。過去に3月作品、5月作品に関して記事を書いていますので、そちらもぜひご覧ください。

 ちなみに4月は新規シリーズを始めておらず、6月作品は書籍化しましたので、記事を書いておりません。あしからず。

作品紹介

それでは、まずは7月に執筆した作品の紹介から。
タイトルは「悪の組織の下っ端研究員に就職しました。〜銀髪巨乳の女幹部さんがチラチラこっちを見てくるけど全く身に覚えがありません〜」です。

あらすじ
人類の2%が超能力者であり、“特区”でヒーローやヴィランとして企業の支援を受けながら争う社会。和毛京太郎は就活のさなかヒーローバトルに巻き込まれて重症を負う。
そんな彼を助けたのは、悪の秘密結社∀NEの女幹部である鉄血将軍オルディーネだった。
京太郎は∀NEの高度な医療によって一命を取り留めるが、機密保持のため記憶消去を受け、就職活動もまた振り出しに戻ってしまう。
だが目が覚めて途方に暮れる彼の元に折手と名乗る銀髪の美しい女性が現れる。彼女は呆然とする京太郎に微笑みかけ、悪の組織の研究員に勧誘するのだった。
悪の組織の下っ端研究員に就職した青年は、ちびっ子博士やコミュ障上司に囲まれながら、忙しくも楽しい職場を奔走する!

 現代より少し未来くらいの時代感、超能力者がある程度当たり前に存在しつつ“特区”という限られた地域に押し込まれているという世界観です。いわゆる超能力モノで、超能力者が戦隊ヒーローやヴィランとしてバトルしているような。
 ただし、主人公は無能力者であり、ヒロインは悪の組織の女幹部です。就活に失敗していた主人公がひょんなことから悪の組織に研究員として就職し……。とストーリーが始まります。

 こちらの作品は2019年11月あたりの1話だけシリーズと称して冒頭を書いていた頃に、3話までを公開した作品です。なので、その頃には初期の構想はありました。

  • ラバースーツのお姉さんが書きたい!

  • 二面性のある感じのキャラクター関係を書きたい!

  • 戦隊モノっぽいテイストを書きたい!

 このあたりが作品執筆の種になった気がします。
 実際、ヒロインは巨乳でラバースーツ着た念動力使いの悪の幹部で、一般人としての姿とヴィランとして活動中の姿を主人公は別の人物であると思い込んでいます。あと戦隊モノが個人的に好きだったので。

 折原良乃先生の「女怪人さんは通い妻」とか、佐伯庸介先生の「となりの悪の大幹部!」とか。コミックで言うと大井昌和先生の「ヒーローガール・ヒーラーボーイ」とか。そんなのを読んでて書きたいなぁと思った次第ですね。

プロット

 本作品も例に漏れず、事前にざっくりとしたプロットを作っています。

1. オルディーネとの出会い、記憶消去
就活中の和毛恭太郎はトウミメディカルでの面接後、誤ってヒーローバトルエリアへと立ち入り、戦闘に巻き込まれる。オルディーネによって助けられるものの、心身に重傷を負う。∀NEの医療部長メルテによって記憶消去措置を受けることで、機密保持とトラウマの消去を受ける。目覚めた彼はトウミメディカルでの面接をすっぽかしたことになり、途方に暮れる。そこへオルディーネが現れ、悪の秘密結社∀NEの研究員へとスカウトする。

2. ∀NE就職、オルディーネの支援
∀NEの研究員となった恭太郎。そこで見たのは、ヒーローバトルの現実だった。∀NEは大量のバイオロイドを用いた物量作戦を展開するが、現在はその対抗策が取られ、年々勝率は下がっているという。
恭太郎は怪人のデザインなどを担当し、オルディーネの支援を行う。初めは上手くいかないことも多かったが、徐々に実績を上げて、やがて多くの怪人を任せられることに。

3. トウミメディカル社長と出会う。引き抜きを受ける。
恭太郎の名前は、やがて同業他社にも知られるように。それと共に業務も多忙となり、疲弊していく。見かねたオルディーネが、町に誘う。そこでオフのオルディーネとのデートを楽しんだ恭太郎。オルディーネから、スカウトを受けても行かないでと言われる。その数日後、彼はトウミメディカルの社長と出会う。
社長から熱心な勧誘を受けるが、それを断る恭太郎。頑なだった社長だが、恭太郎が面接の時の記憶を全て失っていることを知ると、あっさりと引き下がる。

4. オルディーネの逮捕、記憶回復
ある日、突然オルディーネがステージによって逮捕される。容疑は一般人に対する能力行使。∀NEは抗議するが、ステージは有無を言わさず彼女を連行する。戦力を失った∀NEはその後全くバトルで勝てなくなる。
恭太郎は資料の中から当時の記録を見つける。それは彼の記憶にないものだった。
メテルにその時の状況を聞こうとする恭太郎。彼女を説得し、超能力〈復元〉によって記憶を取り戻す。

5. レインボーズとの共同捜査
オルディーネの疑いを晴らすため、恭太郎はなぜ自分がバトルエリアに迷い込んだのかを検証する。その結果、トウミメディカルで飲み物を飲んで以降記憶があやふやだったことを思い出す。
トウミメディカルの親組織であるレインボーズの元へと向かう。そこで、彼らと共にトウミメディカルの捜査を始める。その結果、トウミメディカルが怪しい取引をしていることが発覚した。

6. オルディーネとの再開。トウミメディカルカチコミ。ステージ暗躍。
取引の証拠を掴んでステージへと向かった恭太郎。彼らはステージと協力し、トウミメディカルの決定的な証拠を掴むため強制捜査することに。
オルディーネ、レインボーズ。トウミメディカルへ。しかし能力者の強い抵抗にあう。しかし、その背後から潜入したステージ部隊によって鎮圧。決定的な証拠が見つかる。

7. オルディーネ専属研究員に。
トウミメディカルの悪事が露呈し、セブンレインボーズは謝罪と共に∀NEに賠償金を支払う。オルディーネはレインボーズと共闘するという夢のマッチによって話題を呼び、またイメージ低下を最小限に抑えられたことで感謝される。
恭太郎は主席研究員へと異例の出世。更に首領からの計らいでオルディーネの専属研究員となる。

 だいたいこんな感じの、大枠ごとにざっくり項目を作った後、30話÷7で大体各項目4話くらいになるように詰めていって。
 とはいえ、今回はほとんど書き溜めできず、最終的に朝七時の更新のため前日寝る前に書くようなスケジュールということもあって、最後の方があまりプロット通りには進んでいません。

 キャラクターでいうと、シエラなんかは全然出てくる予定のなかったキャラですし、最終バトルも新型怪人が空気になりすぎててどうしようかと頭を抱えました。結局プロット作っても書いてるうちに行き当たりばったりになってしまうのは私の悪癖ですね。

設定

 執筆にあたって、登場人物のデータもある程度事前決めつつ、あとは執筆中の流れで出てきた情報を適宜メモしていく形でまとめていました。最終的な登場人物設定は以下のとおりです。

和毛恭太郎
主人公。大学院で医学を学んでいた。就活難。
特区で活躍するヒーローやヴィランの特別な力に憧れがあるが、超能力を持たない無能力者。特区内の医療系メーカーの面接で完敗した後、失意に暮れて歩いているとセブンレインボーズとオルディーネの戦闘に巻き込まれる。負傷した彼はオルディーネによってアンネの医療部へと運び込まれ、治療を受ける。その後、機密保持のため記憶消去処理を受けることになるが、その前にオルディーネに感謝の手紙を残す。

*オルディーネ*
鉄血将軍オルディーネ。秘密結社∀NEの女幹部。
念動力の能力を持つ、銀髪の巨乳の美女。赤い特殊金属フレームと黒いボンデージの戦闘服を着用する。
宿敵セブンレインボーズとの戦闘中、巻き込まれた恭太郎を助けて負傷する。彼をアンネの医療部へと運び、治療を施す。その後、自身もメディカルポットで治療している間に恭太郎は記憶消去処理を受け、一般人に。しかし、彼が就職先を探していることを知り、スカウトする。

*レザリア*
アンネの幹部。後方支援部医療生物工学科のトップ。特殊能力は〈精神感応〉、再生などとは異なり、完全に元の状態へと返す。そのため、記憶消去処理によって失った記憶も蘇る。

*首領*
アンネのトップ。純粋な〈身体能力強化〉による無類の強さを誇るが、あまりにも燃費が悪い。享楽的な性格で、軽い。ちょいちょい気まぐれに現場に出てきてはその場の思いつきで引っ掻きまわす。

*社長*
トウミメディカルの社長。秘密裏に特区内技術の区外流出を行なっていた。

*ステージ少年K*
ステージの特殊部隊を指揮する少年。外見は非常に若い男子の姿をしているが、超能力の副作用によるもの。本来は40過ぎのおっさん。対超能力者部隊の長として、非常に強い戦闘能力を持つ。

*レインボーズ*
極光戦隊セブンレインボーズ。光学分野に強みを持つ精密機械メーカー、トウミ精工が母体のヒーロー。トウミメディカルは子会社の一つで、医療機器の製造販売を行っている。
レインボーズは七人の超能力者を中核としており、彼らに支援を集中させることで大成してきた。
ブレイズレッド男
フレアオレンジ女
ビームイエロー女
シャイングリーン
ウェーブブルー男
グロウパープル
エクリプスバイオレット

 本当に設定はあいまいなものです。最初は名前すら付けてなくて、いい感じのものが思いつくまでは“主人公”“ヒロイン”といったタグみたいな感じで書いて、あとで一括置換で書き換えています。ラスボスは名前が“社長”になっていますが、作中では社長ですらないですし、主人公の直属の上司である新見は項目すら存在してないです。執筆中に必要だと思って出てきたキャラなので。
 セブンレインボーズもめちゃくちゃ簡単にしか書いてないですね。ブレイズレッドの本名も出てきてないです。たぶん初登場時にノリで決めた名前だったので。
 結構重要な人物であるクリムゾンファイアも影も形もないですね……。

 今回の作品はかなり設定ありきの執筆動機だったので、登場人物よりも設定の方に力を入れていました。

 主人公が所属することになる悪の秘密結社∀NEについても結構悩みました。どれくらいの規模の勢力にするのか、特区内でも有数のトップ層なのか、吹けば飛びそうな弱小なのか。どちらでも書きようはあったと思いますが、結局世界的な食品メーカーが親会社にある巨大組織ということになりました。
 他の作品を読んでいる方ならご存知かと思いますが、私はヒロインがいっぱい食べるタイプだと大好きになってしまうヘキがありますので。ごはんはいっぱい食べさせてあげたかった。

執筆スケジュール

 構想は先述したとおり2019年にはありまして、そこから数年温めていたというか放置していたというか。投稿を始める前日の6月22日から本格的な執筆を開始しました。既に3話までのデータはあったんですが、まあ3年以上前のものなので、改稿はしています。その上で、プロットを練りつつ設定を深めて、本文を書き始めました。
 とはいえ、すぐにスケジュールがカツカツになって書き溜めは消え、自転車操業に。書籍化作業なんかもあったので、なかなかなかなか……。それでも1日も落とすことなく書ききれたのは良かったです。

 18話くらいから背水の陣に追い込まれているみたいですね。

おわりに

 毎月一作執筆シリーズ、第4弾くらいになる本作「悪の組織の下っ端研究員に就職しました」の執筆記録をお伝えしました。予想以上にグダグダしていたと思いますが、どうだったでしょうか。
 この作品、自分の中では結構高い評価を頂けている作品でして、最初の頃から明確に初速いいじゃん!と思えるものとなりました。途中でがくんと勢いが落ちたりしてモチベーションも下がったりしたんですが、それでも今や代表作っぽくなってるバニおじすら凌ぐPVを叩き出したこともあり、なかなか良く書けていたのではと思っています。
 ちなみに完結してすでに五日ほど経っているのですが、いまだにちょこちょこブックマークも頂けています。完結作なのにありがたいことです。

 本当はキャラクターのイメージイラストとかも描きたかったんですけどね。ちょっと時間がなかったのとモチベーションが足りませんでした。

 八月作品こと、現在連載中の「貞操逆転獣人世界のヒトオス剣闘士」はイメージイラストトも結構描いていて、カクヨムの近況ノートやTwitter Xなんかで公開していますので、ぜひそちらも見てください!

 また、五月作品として連載していた「合法ショタとメカメイド」は晴れていずみノベルズより書籍化と相成りまして、すでに各電子書籍サイトにて販売が開始されております。その関係もあり現在はwebで第二章が始まっており、毎週火木土の19:05更新となっています。こちらもぜひよろしくお願いします!

 というわけで先月も無事に作品を一つ公開することができ、また今月も新たに一つ始めることができました。これも日頃から応援してくださる読者の皆様のおかげです。これからもぜひ、よろしくお願いいたします。

記事を気に入って下さった方は是非サポートをお願いします。金額は任意に設定できますので、何卒。 頂いたお金は資料書籍の購入などの活動費に充てられます。よろしくお願いします。