小説家が書籍一冊分の小説を書き上げるまで。

本日、小説家になろう、カクヨムにて連載していた「レディオーガは世間知らず」が完結しました。多くの読者から応援頂き、3月1日からの毎日更新で全39話を書き終えることができました。
今回はせっかく久しぶりに作品を一つ綺麗に完結させるところまで書き終え、なおかつ全体の分量でも書籍一冊分程度(13万字弱)になりましたので、「レディオーガ」を執筆した際の方法などをご紹介しようと思います。なお、急に思い立って書いている上に特に記録なども取っていないので記憶頼りとなりますが、どなたかの参考になれば幸いです。

執筆時に作った初期構想と詳細プロットもPDFファイルで公開しておりますので、よければ参考としてご覧になりながら読み進めていただけるとより分かりやすいかと思います。

執筆環境

まずは前提となる執筆環境について。
ハード
私は現在、すべてをiPadPro(2018)の11インチモデルで執筆しております。キーボードはスマートキーボードフォリオです。この組み合わせなら家でも喫茶店でもどこでも書けるので便利です。
ソフト
使用しているアプリケーションはテキストエディタとしてUlyseesを、執筆補助として物書堂を、宣伝告知気分転換その他諸々でTwitterをお供にしています。小説執筆の際の三種の神器です。Twitterは開かない方が捗るという説もありますが。

執筆場所はipad一枚で作業が完結するのでどこでもいいと言えばいいんですが、喫茶店なんかでコーヒー飲みつつやっています。近所に行きつけの喫茶店がいくつかあるので、店員さんに捕捉されないように祈りながらローテーションで通っています。なおたまに「いつものやつでいいですか?」と聞かれる模様。
自宅で書けないこともないんですが、やっぱり集中できるのは外ですね。最近はコンセントや充電用USBポートを置いてくれている所も多くなってきて嬉しいです。

構想

環境が整ったところで、早速「レディオーガ」について。兎にも角にもアイディアを思いつくところからなのですが、私は日頃何かしら小説にできそうなアイディアがあったらとりあえずメモしています。そうしないと3秒後には忘れるので。

「レディオーガ」の種を思いついたのは、2022年10月くらいのことみたいです。その頃に「レディオーガは世間知らず」というタイトルと以下の二行の概要だけ考えていました。

概要
冴えない中年おっさんと隻腕筋肉鬼娘の師弟ファンタジー。
世間知らずで奴隷落ちした鬼娘がおっさんに拾われて最強の傭兵になって結ばれるまで。

とりあえず作品の核になるのが「おっさんと女の子」「隻腕筋肉鬼娘ヒロイン」ってところですね。性癖です。

作品の種ができたところで、次にすること。それは一旦忘れて別のことする。です。

まあ、考えついた時は自分天才じゃんって思ってしまうものなので、冷却期間を置くわけですね。そうでなくとも、私の場合は毎日投稿でそろそろ1100話超えてる「ヴォーパルバニーと要塞おじさん」だったり、いずみノベルズから好評発売中の「剣と魔法とナノマシン」だったり、色々別の作品を並行しているのもあるのですが。
そういうものもこなしつつ、ふと思い出したタイミングで少しずつアイディアを形にしていきます。

そうやって出来上がるのが初期構想です。

Ulyssesから書き出してWordで整えたものですが、こんな感じのものを書いてます。

中身は

  • 仮タイトル

  • 概要

  • あらすじ(1,000字程度)

  • 主要登場人物

となっています。

仮題と概要は種をそのまま、それを元に起承転結のあらすじを作り、物語の核となる主人公とヒロインを組み立てます。
物語を組み立てる際には世界観から作るという派閥と、キャラクターから作るという派閥があると言いますが、今回の「レディオーガ」は後者だと思います。
とはいえ、“このキャラが成立するならこの世界観が”“この世界観が成立するならこのキャラが”と相互の要請に応じて流動的に変わっていくものなのですが。

あらすじはとりあえず物語の概観をざっくり捉えるのを目的としたものです。読者向けではなく作者(自分)向けのものなので、文庫本の裏表紙にあるようなやつじゃなくて小説のコンテストなんかに応募する際に添付するようなやつです。これで伝わるのは小説家だけなんよ。

とりあえず始まりから終わりまで、書きたいところを書きつつ細部は全然詰めてません。

義手を手に入れたディオナはオーガの力強さを発揮して破竹の勢いで成長する。

みたいな一文で表されてるところも、本文だと10話くらい使ってますし。とりあえずなんやかんや書いとけば未来の自分がなんとかしてくれます。

それでもって、主要登場人物です。今回は主人公のアランとヒロインのディオナですね。物語を考える時は「おっさん」と「鬼娘」みたいな代名詞的な変数で考えてるので、後で名前を考えた後にプロットに一括置換で流し込みます。
ざっくりしたキャラの容姿と性格、ある程度重要な情報があればそれを付記するような感じです。

詳細プロット

初期構想ができた後はまた適当に寝かして熟成させます。その間により良いアイディアを思いついたりもするので、適宜書き加えていきます。そんな感じである程度煮詰まってきたら、というかよし書けるぞと思えるようになったら、いよいよ本腰を入れて執筆する――ための準備に取り掛かります。

それが詳細プロットですね。

詳細プロットは執筆を見据えたプロットです。今回、私の場合はwebでの連載で書籍1冊分くらいの分量という条件で構成を考えます。実際に執筆する際に確認する資料にもなるので、固有名詞とかの設定もしっかり書いていきます。

あらすじ
これはwebでタイトルの次に読者さんが見ることを想定して書いていきます。つまり、文庫本の裏表紙にある、読書欲を煽るようなあらすじです。主要な登場人物が誰か、世界観はどのようなものか、どのように物語が展開していくか、などを押さえて書いていきます。大体200字から300字くらいですかね。

概要
こっちのは初期構想の概要をコピペしつつ、ざっくり場面ごとにぶった切っていきます。章立て、もしくは起承転結みたいなシーンごとですね。今回は五幕構成になりました。

プロット
上記の概要を元にしつつ、詳細な話の流れを書いていきます。ここでは番号付きリストを使っています。最初に書いてある“各3万字、8話くらい”というのは一番大きい項目で、ざっくり起承転結になっているところの内訳です。4幕×3万字=12万字って感じですね。私の場合、1話はおよそ3,000字強を想定しているので、1幕8話で24,000字、若干増えるので大体30,000字になる計算です。

大項目ができたところで、それぞれ3〜5幕くらいで中項目を、更に小項目を書いていきます。イメージとしては石像を彫り出す時に大まかに彫ってから少しずつ細部に入っていく感じですね。

小項目は1話に相当します。3,000字程度で書けるように考えつつ書いていきます。

登場人物
プロットを書きつつ、必要になったキャラクターをここに追記していきます。ここでもまだキャラクターの名前が決まっていないことは多々あります。

エイリアル・デュセア・ボルトーラ・ヴァン・アルクシエラとか本文で登場したその時のフィーリングで書いて、忘れないようにこっちにも追記しました。悪徳商人とか本文中では38話でデュベルトって名前が出てきたので、もうこっちには悪徳商人としか書かれてません。かわいそうに。

世界観
これは作中で重要になってくる、というか忘れたらマズい固有名詞なんかを書き溜めておくところです。今回は傭兵組合とオーガ族の項目しかないですが、もし「レディオーガ」が続くとしたらアルクシエラ領の詳細とか、大森林ほかの魔境とかも立項されると思います。

本文執筆

詳細プロットを作り始めたあたりで書きたい欲は高まってるので、とりあえず3話くらい書きます。序盤ですね。ここで大体世界観と登場人物を説明します。
先述のとおり、色々並行して進めている作品もあるので書き溜めもしておきたいと思っていました(過去形)。

だいたい5話くらいまで書き溜めできたところで、公開予定の3月になってしまったので小説家になろうとカクヨムに投稿します。この段階では30話くらいの構想だったので、一月でちょうど終わるやろという目算でした。

で、案の定5話の書き溜めが消し飛んだので、すぐに当日か前日に書いて出すという自転車操業になります。一応毎朝6時に定期更新というテイを取っていたのですが、いつの間にか午前中ならセーフというガバガバ具合になっていました。

それに、プロット作成段階にはなかったアイディアやら展開やらもあるので、割合臨機応変に書いていきます。
一番大きいところで言えば、プロット段階だと途中でアランが失踪するんですが、実際にはディオナの方が失踪してます。こんな感じで割とその場のノリで展開を決めています。
あとは、ディオナはハイオーガであるという設定も消えたというか、明記していません。別にいいかなって……。

そんな感じで過去の自分がなんやかんやで済ませているプロットに殺意を覚えながら書き進めていると、39話に膨れ上がってました。なんで?
アルクシエラ以外の町とか、第二の魔境とか、色々な設定がライブで生えてきました。いつの間にか。

あと、タイトルも変わりました。もともとは「レディオーガは世間知らず」だけだったのが、「レディオーガは世間知らず〜悪徳商人に騙されて奴隷堕ちしたあげく片腕を無くしたオーガの女の子を拾って育てたら最強の傭兵になりました〜」というものに。何かと色々言われがちな長文タイトルですが、こっちにしてからPVが結構増えました。

序盤は1日1話3000字書くのもひぃひぃ言ってたんですが、大体32話くらいかな、それくらいから終わりが見えてきたのでテンション上がってきました。1日で4話書けた日もあります。なんでそれが毎日できないんだ。

で、4月3日に手元の原稿で完結まで書き終えました。

つまり5話くらい書き溜められたわけですねぇ。

心の支え

執筆ってのは一人でやる作業なので、結構辛いです。書いたやつが面白くないし、コンディションによっては死んでるし。そういう時にお世話になるのが、Twitterで感想を書いてくださってる方々です。これは本当に、マジで、めちゃくちゃモチベになります。

私は毎日、ていうか毎時くらいの頻度でエゴサしてます。Twitterの検索欄はすべて自作のエゴサ用履歴で埋まっています。幸い、毎日読んで感想を書いてくださる方がいらっしゃるので、めちゃくちゃ感謝しています。気持ちの悪い作者なのでこっそりいいねつけるくらいしかしてませんが。本当にありがたいんです。感想もっと下さい。

それと、下手の横好きではあるもののイラストも描いておりまして、ヒロイン・ディオナの幼少期と成長後の姿を参考資料的に描きました。私は脳内でアニメ的な映像が流れるのを文字に起こしているタイプの物書きなので、ビジュアルがあるとより書きやすいんですね。
で、そのイラストはカクヨムのサポーター限定記事として公開しています。(月額480円からで好きな作者さんを金銭的に養えるよ!)カクヨムはPVに応じたリワードだったり、毎月のサポートであったりで金銭的にも支えてくれるのがすごく嬉しいですね。

最後に

「レディオーガ」は特にコンテストに応募するとかも考えずに書いた作品です。というのも、私は今までほとんど作品を完結させたことがないのです。そこに「作品は下手でも無理やりでも完結させないと上手くならない」という言説を見まして、これはちょっと完結作を持っとかないと、と思った次第です。

ありがたいことに多くの皆様からブックマークPVなどを通して応援頂き、それも大きな心の支えとなり、無事に完結まで書き切ることができました。正直、展開として妥協した部分がないと言えば嘘になりますし、読み返せば改善点はいくらでも出てくると思います。
それでも、やはり完結させるのは大事なんだな、と思い知りました。完結させないと経験値入らないですね。

そんなわけなので、これから創作をしたいと志す方がいらっしゃるのであれば、ぜひ作品を完成させてみてください。それがどんなに拙いものでも、完成品は実績になりますし、自信になります。そこから多くのことが学べますし、それを踏み台にして次回作をより良いものにできます。
その際に、この記事が多少の支えとなれましたら、無量の喜びです。

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