主治医への手紙「誰かを恨むことがない人生が良かった」

2021/01/14

コロナが流行るまで、自分はいつも恵まれない側の人間だと思っていた。

なので、あらゆることに不満を感じていたし、

あらゆる人間に敵対心や嫉妬心を抱いていた。

コロナが流行ってからは、

会社が在宅勤務に切り替えてくれたりという出来事があって、

自分は恵まれているんだと思えるようなことが増えていった。

今まで意地で生きてきた人生だったけれど、

最終的にここに帰結したかと思っていた。


しかし、私は今34歳で、なおかつ女性であることを加味し

一番望ましいロールモデルと言えば、

結婚し、子供を授かるということだろう。

私の家庭は機能不全家族だったので、

私の人生に結婚や妊娠出産育児といった、

本来であれば女性としてメジャーなイベントを望む気持ちがわかない。

そもそも、結婚したいと思える人も居ない。


私は母に散々人生を邪魔されてきて、それでもなんとかたどり着いた今を

なんだかんだは最適解だったのだと、

自分を納得させることで精神の安定を得てきた。

でも本当はそうではないことに、

周りの人間の結婚、出産、育児によって気づかされる。


母が私を愛してくれていたら、父がロリコンではなくて母を愛していたら、

私は母に嫉妬されて母に人生をめちゃくちゃにされることなどなかった。

そう思うと私は母を殺めたいと衝動的に思ってしまう。

そして、この先、母の介護をしたくないとも思う。

私は健常者のようにバリバリ働くことができない。

お金さえあれば、すべての介護を他人に任せて、

適度な距離で母と関わることができるのに。


母はいつも娘である私が自分より劣っていないと気がすまなかった。

私は年齢の割には頭が働いたので、父によく愛された。

だから母は私をつぶしたかった。生物としての本能だと思う。

母に話が通じないという絶望的な現実は、

過去だけではなく今もまだ続いている。

私が母を許せる日が来るのだとしたら、

私が身ごもって母になったりした日かもしれない。

でもそのような未来は、残念ながら来そうにない。


一応年賀状や誕生日のプレゼントは義理で送っている。

たまに母とのLINEの中で私達家族にまつわる過去の話が出てくると、

私はお腹を下すなど、体調を悪くしてしまう。

私の中では、四人家族だったときのことは

思い出してはいけないことになっている。


お風呂の中で、母の葬式で何を言おうかを考えたりする。

死んだ母に恥をかかせようと考える。

母が床に伏せたら、母が満足に話せなくなったら、

どんな言葉で母を傷つけようかとよく妄想する。

そうして、溜飲を下げている。

そんな風に、誰かを恨むことがない人生が良かった。

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