Re-ClaM eX Vol.4(パトリック・クェンティン特集)

五月に読んだ本のまとめ。二つ目は文フリで購入した、Re-ClaM eX Vol.4。パトリック・クェンティンの未訳短編をまとめた特集で、「出口なし」「待っていた女」「嫌われ者の女」の3篇が収録されている。

「出口なし」
軍隊帰りの主人公が、元妻の無実を確かめるために、自らも疑惑をかけられながらも事件を探すというサスペンス。真相はどうというわけでもないけど、コンパクトと手紙を軸に、事件は細かな手がかりで二転三転し、それに主人公の複雑な人間関係のドラマが絡んでくる。

「待っていた女」
短めの平凡なパズルストーリー。

「嫌われ者の女」
いかにも殺されそうな被害者が殺されるまでの周囲との軋轢を描き、殺人が起こった中盤以降は動機を持った容疑者たちが次々と再登場する。
夫と友人が帰ってくると、被害者を憎んでいるカップルが部屋に侵入していて、拳銃で脅してくる。男の方が逃げたあとに、カップルに同情した友人が女の方も容疑者を逃がそうとしたところで警官が登場。
隠し事をしながらの取り調べはサスペンスがあっていいけど、犯人がわかりやすいこともあってさほど盛り上がらず。
冒頭とラストシーンを照応させていること、容疑者の一人の行動が、単なるミスリードではなく犯人に殺意を生じさせたきっかけになっていること、意図せずに偽装工作が完成したモダーン・ディテクティブ・ストーリー的な作りはちょっと良いかな。

一番面白いのは「出口なし」か。法月綸太郎がD・M・ディヴァインをパトリック・クェンティンの影響から論じていたけど、その点、主人公周りの人間関係が濃密な方が楽しい気はする。

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