Colaboのアパート建築に係る助成金の審査の疑義と問題提起
2022年12月12日
(12月18日一部更改)
まず結論を述べると、一般社団法人Colabo(以下、Colabo)がアパート建築に係り交付された助成金100百万円の審査を、公益財団法人パブリックリソース財団(以下、財団)が適正に行ったかは極めて疑わしい。
ましてや『Colaboの助成金選考に係る利益相反の疑いと諸問題に関する雑感』で述べている通り、利益相反の問題もある。
公益を大きく害する事象だと思われ、広く問題を提起したい。
本件が氷山の一角だとしたら、我が国にとって重大な問題であると言えるので、特に休眠預金活用事業を所管する内閣府には早急に対応をお願いしたい。
はじめに
① 本稿執筆の目的について
Colaboがアパート建築に係り交付を受けた助成金100百万円について、その支出が適正であったか、疑うに足るだけの情報が判明したことは既に書いた。
助成事業の支出に問題があった上に、その審査ですら当を得ないものであった場合、何らかの不正があった可能性はより一層強まる。
以上より、本稿は助成金の審査に適当でない部分がなかったかを検証し、財団も巻き込んだ不正の可能性を探るものである。
② 助成金事業の最大の問題について
本件アパートにはDV被害等で困窮した若年女性が入居するため、その秘匿性は重要である。それはColabo自身も認識している。
この秘匿性はDV被害者等救済の根幹であり、例えば〇〇参院議員がDVシェルターのある自治体名や近くにある建物の名前を動画で述べたことが大々的に報道で批判されたのは記憶に新しい。
(元ニュースに名前は出ているが、ここでは名前を伏せる)
DV被害者等が居住する施設が特定された場合、単にDV加害者当人による被害が懸念されるばかりではなく、第三者による困窮した若年女性を狙った犯罪の標的になりかねないのだから、これは当然である。
しかし本件助成事業では概ねの建設時期、部屋数、用途等が開示される上に、所有者がColaboであることが自明のため、建物を特定するのが容易で、DV被害者等を居住させる事業としては破綻している。
調査会社、士業、不動産業、建築業、金融機関等の従事者であれば相当数が建物を特定する手法を知っているはずで、現に私が特定に要した時間は5分程度であった。
Colaboの代表者や支援実務者がその点に気づかないのはわかるが、その周辺の専門家が本件助成事業への取り組みを制止しなかった上に、財団がこの点を問題視せずに助成事業が採択され、助成金が交付されたことは失当を通り越して不自然である。
1 そもそもColaboと財団が共謀関係にあった。
2 Colaboやその関係者から財団に対して何らかの働きかけがあった。
3 財団がColaboを忖度する何らかの事情があった。
4 考えにくいが、Colaboも財団も単に当該問題に気付かなかった。可能性としてはこんなところだと思うが、どれに該当するにしても大きな問題である。
12/13追記
本稿を根拠に、DVシェルター等を運営団体が所有することのリスクを過大に評価する方々が散見された。
団体が所有物件をDVシェルター等として運用していたとしても、その用途は登記や物件の外観からはわからないため、物件の所有自体が多大なリスクになるわけではない。
Colaboの場合は助成事業の規定でその秘匿すべき用途、部屋数、取得時期等が公開されており、登記の特定=施設の特定に直結する状態なので、リスクが多大と評した。
私が言及したのはColabo特有のリスクなので、他の当該施設を所有する支援団体が不安に思うような言説は控えていただくようお願いします。
③ 当該助成金の概要
当該事業は財団より『コロナ禍の住宅困窮者支援事業≪休眠預金活用事業≫2020年度コロナ緊急支援助成枠』として公募された。
2021年4月30日 ~ 6月30日 まで募集期間に15団体からの公募があった。
同年8月に4団体(5団体が内定し、1団体が辞退)が採択された。
当初計画では7団体程度に対して概ね総額425百万円程度を助成し、概ね200室を確保する事業であった。
結果として4団体に対し総額379百万円が交付されて53室が確保された。
Colaboはこの内の100百万円(約26%)、8室(約15%)を占めている。
参考 公益事業に関する助成金・補助金の実情
特に社会的弱者救済をテーマとする公益事業に関する助成金・補助金は予算がつきやすいこともあって無数に存在しているが、事業の実施者は相対的に少ない。
予算の消化が重視されるあまり、とりあえず手を挙げた事業者に対して、資金が半ば『垂れ流し』(この表現については異論もあろうと思うが)されている側面がないとはいえない。
また、資金分配団体の総合的な与信判断能力も不十分で、私が知る限り、人手も時間も足りない中で審査を行っている団体が多いようである。
これは我が国全体の問題であり、特定組織だけの問題ではない点を本項をご覧の方々にご認識いただきたい。
ただ、それを差し引いても本件はひどい。
Colaboの事業計画審査における不審点 他
① Colaboの事業計画の評価
細かい審査項目は後掲するが、大別すると概ね3つになるため、それに沿ってColaboの事業計画を評価した。
Ⅰ 助成対象団体として妥当か
貸借対照表の公告をしていない等、ガバナンス面にやや不安はあるものの、あくまで外形的には豊富な資金力と実績があるため、審査時点でこの点が妥当と評価されたことに異論はない。
(結果的には定められた情報公開をしておらず、問題はあったわけだが)
Ⅱ 事業計画の目標は妥当か
計画の目標は8室のアパートへDV被害者等を入居させ、生活支援を行うことであるが、この目標は2つの理由で妥当ではない。
1つは先述の通り、本件助成事業を使って建物を所有すること自体が、DV被害者等の居住支援に不可欠な秘匿性を欠く点である。
もう1つは1団体あたり30室の確保を目指す事業への公募に対して、8室はあまりにも少なく、資金効率があまりにも悪い点である。
(一覧表を後掲するが、Colaboの確保した居室の1室あたりのコストは他3団体のそれと比べて概ね2倍である)なお、この点は財団自身が重視するポイントとしてFAQに掲載しており、少なくとも14室以下では採択は難しいと回答している。
このFAQが『足きりライン』として機能したのか、Colabo以外の採択団体はいずれも15室~16室を確保している。
Colaboだけが例外扱いされた理由は不明瞭で、説明が必要であろう。
評価できる部分がほぼなく、当該基準を満たすとは考え難い。
Ⅲ その目標を達成する手段は妥当か。
Colaboは目標達成に土地購入・新築という手段を用いている。
土地購入・建築価格が異常であり、予算に問題がありそうなことは『Colaboのアパート建築に係る助成金に関する疑義及びそれに伴う提言』で述べたので省略する。
目標を達成する方法として、中古物件の借り上げや購入等の安価で済む方法を採らず、単なるアパートを新築する理由はまったくない。
現地調査の結果がどう評価されたのかは定かではないが、調べた限りでは若年女性が居住するにあたって好適な立地でもない。
(入居者保護の観点から、あまり詳しくは述べない)そもそも公募にいたった背景から読み取れる助成事業の目的は、施設取得のイニシャルコストを助成することで将来の施設運営コストの捻出を容易にして、生活困窮者向けに持続的な支援付き住宅の供給することである。
(財団の事業計画書の『背景』より)Colaboの掲げる『生活支援』の詳細は不明だが、建築したのは単なるアパートである。他の採択団体の取り組みのように、例えば施設内に設ける食堂や作業場等の設備、それに付随する人件費等が発生するわけでもないため、運営コストの捻出というテーマにもそぐわない。
評価できる部分がほぼなく、当該基準を満たすとは考え難い。
以上より、Colaboの事業計画は外形的に「財務内容が良好で、ある程度は公益事業の実績がある」という部分以外に、見るべき点がないように思う。
従って、仮にColaboの建築したアパートが秘匿性に欠けるという重大事象を財団が見過ごしていた(考えにくいと思うが)としても、Colaboが採択された理由は見当たらず、審査には何らかの不公正な力が働いたことが疑われる。
② 審査根拠資料と審査基準の確認
Ⅰ 助成事業のテーマ
当該助成金のテーマは『コロナ禍において住まいを失った人に対し、「住まい」と「自立支援」をセットで提供するビジネスモデルを確立すること』である。(公募要領①より)
当該助成金の目標は上述の通りで、概ね1団体につき30室程度の居室確保が求められている。
Ⅱ 審査基準となる資料の紹介
基本方針 (内閣府が休眠預金活用事業の方針を示したもの)
公募要領② (休眠預金活用事業全般に関わる内容)
公募要領① (当該事業に特化された内容)
財団が上部団体の一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)に出した事業計画書 (事業内容を記載しているもの)
以上、4つである。(重要度が高いと思われる順に並べた)
民間公益活動促進のための休眠預金等活用
(基本方針の掲載先)
https://www5.cao.go.jp/kyumin_yokin/index.html
コロナ禍の住宅困窮者支援事業≪休眠預金活用事業≫
(公募要領①と②の掲載先) https://www.public.or.jp/project/f1010
休眠預金活用事業情報サイト(財団の事業計画書の掲載先と事業計画)https://www.janpia.or.jp/josei/johokokai/corona/2020/anytime/
https://www.janpia.or.jp/josei/johokokai/corona/2020/anytime/download/C20_12/C20_12_jigyo.pdf
Ⅲ 審査基準
資料には概ね11の審査基準が掲載されていることがわかった。
(各資料でほぼ同一の審査基準は1つと数えて重複計上はしていない)その11の審査基準を、
・助成対象団体として妥当か。
・事業計画の目標は妥当か。
・その目標を達成する手段は妥当か。以上3つの大項目に分け、次項以降でColabo以外に本件助成事業に採択された他3団体の審査の適正性を評価していく。
(なお、他3団体はその頭文字をとってP社、S社、K社と呼称する)その目的は、他3団体の審査も評価することで、上記の絶対的な評価とは別に、相対的にもColaboの審査の評価を行うことである。
他3団体についてはColaboほど情報を収集していないため、その評価は参考程度のものである点はご承知いただきたい。
簡単に比較表を作ったので、一応掲載しておく。
③ 他3団体の審査内容の検証1 『助成対象団体として妥当か』
3団体とも、概ね既存事業の延長線にある事業のようである。
それぞれ事業実績もあるため、当該基準は概ね満たしていると思われる。
3団体はNPO法人や社会福祉法人であり、法で様々な情報開示が義務付けられており、それを概ね履行している。
情報公開の程度を見て『定められた規程類を速やかに整備できる』と判断するのは自然で、当該基準を満たしているとの判断されたことに異論はない。
ただし付け加えると、2022年3月(事業完了報告書が作成された時期)と2022年12月現在で、
P社:規程類は整備したが、未公開(webに疎いためとの記載あり)
→ 現在は公開されている。
S社:規程類は整備したが、未公開
→ 現在も公開されていない。
K社:規程類は整備したが、一部未公開
→ 現在も公開されていない。
(※私が見落としている可能性もある。)Colaboも含めた4団体中3団体が情報を公開していない様子で、そもそも助成事業全体の運用において、財団がガバナンス・コンプライアンス面を軽視しているような印象も受ける。
④ 他3団体の 審査内容の検証2『事業計画の目標は妥当か』
要はターゲットと目標を明確にした上で、地域や多様な関係者との連携が盛り込まれた計画になっているかが問われている。
K社のみ目標値の記載が曖昧でよくわからない。
総じて既に取り組んでいる事業のほぼ延長線上の取り組みである。
当然ながら地域との協働やターゲットについてもある程度明確であり、当該基準は満たしてると考える。(これに関してはColaboも)
居室の確保状況は以下の通りで、概ねColaboの倍である15~16室を確保している。
P社:賃貸住宅9室の内情はよくわからないが、無料宿泊所6室には職員が常駐するようである。確保居室は15室。
S社:食堂や就労体験のための作業場があるようで、職員の常駐があるようである。確保居室は16室。
K社:支援住宅として16室が予定されており、無料定額宿泊所としても運用していく予定であるそうなので、職員の常駐が想定されているようである。確保居室は16室。
(実際は計画が変更されて学生寮になり、管理人が常駐することになったようである)
⑤ 審査内容の検証3『その目標を達成する手段は妥当か』
3団体とも中古物件の購入・改装であり、価格か適正かどうかは別にして、一定程度資金効率に配慮した投資を行っているようである。
目標の達成方法としても、それほど違和感のない物件の運用方法が提示されており、当該基準は満たしていると考える。
K社のみが採択後、地元の反対で用途変更を余儀なくされており、計画が大きく変わっている。適正な再審査が行われたのであれば良いとは思うが違和感はある。
参考:上記以外の審査項目
これらも審査項目ではあるが、いわゆる『お題目』的なことを述べる項目であろうから、あまり重視しなかった。
以上より、Colaboの審査と違って他3団体の審査は概ね違和感なく行われており、相対的にもColaboが当該助成金に採択されるべき理由はなさそうに見える。
まとめ
Colaboの審査はやはり異常で、採択に足る理由が見当たらない。
あくまでも公表されている資料からの判断ではあるが、指摘した問題点は事業計画の本質的なところにあるので、何らかの事情があったところで、採択が適当との結論は出ないように思う。
よって、不正があったとまでは断じないものの、Colaboが優先採択される何らかの不公正な対応があったと推定するのが自然である。
ただ一つ評価できる点はColaboの資金力である。財団に公正な審査を曲げる意図はなく、単に人員・時間的な制約により問題点が見過ごされ、「いざとなれば交付金を返還させれば良い」とだけ考えて採択にいたったのだとすれば、上述の通り問題は山積みなので、返還命令を検討すべきである。
秘匿性に欠ける施設が現在進行形でDV被害者等を受け入れていることは危機管理の観点からも問題であり、ここに公的な資金が注入されている状態で何らかの事件が起こった場合、財団のみならず休眠預金活用事業全体の是非が問われかねない。返還命令と共に広く注意を喚起することも重要であろうと思う。
幸い(?)Colaboは情報公開義務を果たしておらず、選定の取消・助成金返還の要件は満たしているはずなので、早急な検討を願いたい。
また、そもそも9月~翌3月までというタイトなスケジュールの助成事業について、土地購入・新築という相当な期間を要する上に不測の事態が起きやすい手段を認めるべきではない等、事業設計にも問題があるので、その点は改めるべきではないだろうか。
加えると、生活困窮者に対して、例えば空き家バンク等と提携して居住支援を行っているNPOも存在しており、Colaboもそういった団体に長期的な居住支援を預けてきた経緯がある。(NPOの活動報告書等で確認)
単なるアパート建設を是とするのであれば、このようなNPOが物件を借り上げる家賃の一部を助成するような方策が現実的には役立つのではないだろうか。
財団には今後の支援のあり方を是非考えてほしい。
以上
履歴
12月12日 本稿公開
12月13日 誤字脱字や言い回し等を多少修正、はじめにの②に追記。
12月14日 利益相反に関する文面を冒頭に少し追加。
12月18日 利益相反に関する文面とリンク先を修正
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